せぶんす・あふたー外伝1
久しぶりの投稿になります。
レダントコロニー。
その上層にある一軒家の玄関先では、赤いメイド服を着た金髪ツインテールのモニカが竹箒で掃き掃除をしていた。
通る人たちに笑顔で挨拶をするモニカは、玄関から飛び出てきた少年に振り返った。
オレンジの短い髪は燃えているような癖があった。
急いで着替えをしたのか、身だしなみが中途半端だ。
レオ・ウォルト――ライエルの正統な後継者である彼に、モニカは竹箒を置いて近付き身だしなみを整えるのだった。
「モニカさん、時間がないから!」
「まだ時間には余裕があるでしょうに」
そう言って服装や髪型を整えるモニカに、レオは説明する。
「今日から三人で朝練をするんだよ! 遅刻したら恰好が悪いじゃないか!」
そんな事を言うレオに、モニカはメイド服と白いエプロンの隙間から弁当箱を取り出すのだった。
「もうお昼のお弁当は受け取ったよ?」
テーブルの上に置いてあった弁当箱は、既にレオの鞄の中に入っていた。
「育ち盛りですからね。三人で食べてください」
レオは頷いて受けとり、そのまま走り出す。
「行ってきます!」
レダントコロニーに来てから、レオは随分と明るくなった。そう思いながら手を振るモニカだったが、一言呟く。
「宝玉を忘れるとは……まだまだですよ、レオ様」
家の中に入ると、ブツブツと声が聞こえてくる。軽くホラーである。
『……レオの奴、最後まで俺の声を聞かずに置いて行きやがった。肌身離さずに持つように言ったのに』
脱衣所で服の間からモニカは宝玉を取り出すと、丁寧に拭いてからそのまま台所にあるテーブルの上に置いた。
大事そうに小さな座布団の上に置く。
「お声をかければ良かったのでは?」
『かけたけど、急いでいたのか聞こえなかったみたいだ。あいつ、朝練くらいで張り切りやがって……』
ウルハルトたちとの朝練が嬉しいのか、昨日から少し浮ついていたと宝玉の中にいるライエルは語り出していた。
『まぁ、いい。やろうと思えば声も届く。宝玉の呪われた部分を存分に思い知らせてやろうじゃないか』
モニカが思い出した仕草で手を叩く。
「そう言えば、離れていても声は届き、離れている分だけ多くの魔力を消費するのでしたね。流石はチキン野郎!」
『よせやい。しかしアレだな。呪われる側から、呪う側になるとは俺も思ってなかったよ』
かつてはライエルも七人という歴代当主の記憶が蘇った宝玉に、何度も呪われているのではないか? という目に遭わされてきた。
それを今度は自分がする側に回るとは思っていなかったようだ。
モニカが言う。
「では、レオ様には手加減を?」
宝玉から少し意地の悪い声がする。
『馬鹿野郎……俺だけ痛い目を見た、なんて許せるか。レオにも痛い目に遭って貰おうじゃないか。二度と宝玉を手放さないように、な』
かつて自分がした苦労を、レオにも味合わせると宣言したライエルにモニカは拍手を送るのだ。
「流石はチキン野郎! その心の狭さ、嫌いじゃありません。生前もそうやってエアハルトやフィデルに仕返しをしましたね。まるで昨日の事のように思い出せますよ」
『ははは、褒めるなよ』
ロルフィスの王女を押しつけ、怒ったエアハルトがライエルに仕返しをした。だが、ライエルも許される限りの仕返しをしている。
エアハルトに新たな勲章を与え、女性と出会う機会を作って更に嫁を増やした。
フィデル相手には、借金取りと称して圧力をかけてきたのでヴェラの子供に「お爺ちゃん嫌い」と言わせて心を折ってやった。
モニカはそれらを思い出し――。
(まぁ、三人ともソレを楽しんでいたような気もしますけどね)
宝玉から離れたことで、通常よりも魔力を消費させられクタクタになったレオが家に帰って来たのは暗くなってからだった。
風呂に入り、食事を済ませ、課題に取り組みながら涙目でライエルに抗議するのだ。
「酷いですよ、ご先祖様」
『酷くない。人間、痛い目を見ないと本当の意味で理解しないんだよ』
お茶を煎れたモニカは、ソレをレオに差し出しながら口を開く。
「チキン野郎も数々の痛い目を見てきましたからね。特に嫁関係では……くっ!」
涙を拭う仕草をするモニカに視線を向けたレオは、気になっていた事を聞くのだった。
「あの、そんなにご先祖様のお嫁さんたちは酷かったんですか?」
この質問に、ライエルは意外な答えを口にした。
『いや、酷くはないよ。ただ、数が揃うとバランスを取るのが難しいだけ』
「え? でも、口ぶりからすると酷かったとしか……」
レオが困惑していると、ライエルが懐かしそうに語るのだ。
『もっと数が少ない、極端な話をすると誰か一人だったら……いや、シャノンとかクラーラは駄目だな。皇妃としての仕事が出来ない。まぁ、二十五人もいなかったら上手くいっていたと思うよ。多くても三人とか?』
レオは、ライエルが今まで愚痴をこぼした嫁たちの名前を呟く。
「あの、皇妃のノウェムさんとか?」
その名前を聞いて、モニカが目を細めた。
「あの女狐は最低です。チキン野郎の胃痛の原因は、四割近くがあの女狐の責任ですよ」
ライエルはモニカに文句を言う。
『おい、止めろ。お前がそうやって煽るから、ノウェムが怒るんだよ。でもなぁ……ノウェムもミランダがいなかったら、もっと普通だっただろうし、ミランダはルドミラと相性が悪かったし……かといって、ミランダがいなかったら困った事になった事も多いだろうし……難しいよね』
レオは素朴な疑問を口にするのだった。
「なんでそんなに女性がいたんですか? 断れば良いのに」
『……断れなかったからに決まっているだろうが! お前ね、当時は側室、妾、なんて普通だったんだよ。俺の地位なら百人いてもおかしくないの! 俺の子供たちにはそんな苦労を背負わせたくないから、もっと少ない数にするようにルールを決めたんだよ』
モニカは、レオのためにお菓子を用意していた。
「おかげでチキン野郎が女好き、という風潮になりましたけどね。時代が進むごとに、「二十五人しかいない」から「二十五人もいた」に認識が変わっていきました」
レオからすれば、そもそも女性が二人もいれば不誠実という認識だった。
「一人の女性を大事にするとか――」
『そんなの出来たら最初からやってんだよ! 俺だってそっちの方が良かったわ! だけど考えてみろよ。今まで一緒に旅をして、セレス討伐に参加してくれた仲間であり恋人でもある連中だぞ。切り捨てたら外道だろうが』
レオは即答する。
「普通はそうなる前になんとかすると……」
『馬鹿野郎! 世の中、思う通りにいかないんだよ! シャノンやクラーラなんか、俺が生活の面倒を見なかったらどうなっていたと思う! ……いや、なんとかなるな。シャノンは追い詰めると光る存在だった気がするし、クラーラは図書関係で普通に食べていけるわ』
モニカも笑顔になる。
「シャノンさんの駄目さは、私たちにとって理想そのものでしたね。なのに、どうしてあんな事に……」
後半、悲しそうな顔をしたのでレオが深読みをしてしまった。きっと悲しいことがあったのだと思って言葉を詰まらせる。
「え、えっと……」
しかし、モニカは――。
「チキン野郎と駄目なシャノンさんのヒヨコ様たちが、揃いも揃って優秀とか信じられません! 駄目のハイブリッドを期待していた私たちの気持ちを踏みにじって……酷い、酷すぎますよ!」
ライエルは淡々と言うのだ。
『アレかな? 親が駄目だから子供がしっかりしたパターン? ともかく、だ。別に個人として見ればそんなに酷くないよ。ノウェムなんか、旅に出るときは嫁入り道具を売り払って俺のために資金を用意してくれたからね』
レオは思った。
(そんな人がいるのに、複数の恋人を抱えたご先祖様って……一番酷いんじゃないかな?)
ライエル( ゜∀゜)o彡°「セブンス三巻は8月31日に発売! 買ってね!」
レオ( ゜д゜)「宣伝ですか……俺、関係ないんだよなぁ」
モニカ(・∀・)「三巻はついにあの人が登場します!」
ライエル(・ω・` )「……あいつかぁ」
―――――
……はい、と言うことで『セブンス三巻』が8月31日に発売となります。
17日から予約開始らしいので、気になった方は是非! Web版を読まれた方にも楽しんで頂けるよう、色々と頑張らせて頂きました。
あと、後書き劇場は無理だったよ……ごめんね。




