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幕間 歴代当主に聞きました1

一章の幕間になります。


 そこは宝玉内、円卓の間。


 いつも通りに罵声や呆れ声でライエルを困らせている歴代当主たち。


『だからお前は駄目なんだよ!』

『同意だな。どうしてあそこで逃げるんだ?』

『男としてどうかと思うね』

『最低です。零点を超えてマイナスですよ。マイナス!』

『もうさっさと抱けよ。それで終わるんだよ』

『ライエル、もっと女心を理解してだな』

『六代目は鏡を見て発言してください。だがライエル、本当に情けないぞ』


 発端はベイムの宿屋にて、ライエルとノウェムが良い雰囲気になった事だ。


 ただ、ライエルはそれに気がつかず、ノウェムもそんなライエルに呆れつつも笑顔で対応していた。


 問題は、それを見ていた歴代当主たちが、ライエルに駄目出しをするために宝玉の間に連れてきたことだ。


 ライエルは床に正座をさせられており、俯いていた。


「でも、俺としてはそんな雰囲気なんか理解できないというか……」


 四代目が眼鏡を押し上げ、不気味にレンズを光らせると低い声を出す。


『言い訳ですか……駄目過ぎますね』


 女性の扱いに関して五月蝿い四代目は、ライエルのノウェムに対する態度に前から不満を持っていた。


『いいですか、ライエル! あそこまで良い雰囲気になっておいて、何もしないのでは女性に対して失礼です』


 そもそも人付き合いが壊滅的に駄目なライエルは、焦りつつも四代目に抵抗するのだった。


「いや、あの……確かにノウェムの顔も少し赤かったですし、いつもと違う笑顔でしたけど……俺には分からないと言うか、見られている状況で何をすればいいのか」


 ライエルの言いたい事は、歴代当主たちが宝玉内から関している状況下では何も出来ないという言い訳である。


 ただ、これには全員も納得する。


 五代目が小さく頷いた。


『まぁ、それは確かに問題があるな』


 他の歴代当主たちも同じ意見だった。


 二代目も――。


『確かに急に抱き合っているのを見せられても反応に困るな。まぁ、その時だけはこちらからも干渉しないようにすれば――』


 全員がそんな事を言い始める中で、ライエルは少しだけ疑問に思った。


(罵声を浴びせられたけど、基本的にどうしたら良かったんだろう?)


 だからたずねたのだ。


「あの……」


 初代がイライラしながらライエルを見た。


『なんだよ?』


「俺、どうしたいいのか分からなくて。歴代当主の皆さんは女性――『奥さんがいつもと違う笑顔を向けてきたらどうするんですか?』」


 それはライエルが思っていたよりも、歴代当主たちを動揺させた。全員が、自分の妻がいつもと違う笑顔を向けてきたところを想像してしまう。


 ――してしまった。


 直後、円卓の中央に埋め込まれた大きな宝玉が光ったように感じる。


(なんだろう? 何か光ったような。あれ? 周りの様子が……)


 周囲の様子がおかしいと気が付いたライエルは、歴代当主たちを見るのだった。


 初代は明らかに変な汗をかき、頭を抱えていた。


 まるで全員が、目の前に妻の幻でも見ているようだった。


『ち、違うんだ母ちゃん。だからそんな笑顔で近付かないでくれ。頼むから許してくれぇぇぇ!!』

 二代目は首を横に振って逃げ腰だった。いつもは割と寡黙な風を装っているが、今は必死に見えない妻に言葉をかけている。


『待ってくれ。頼む、少しだけ考える時間をくれないか。く、来るなぁぁぁ!!』


 三代目はいつものように笑っているが、冷や汗を流していた。


 両手で相手に待つような仕草をしながら言う。


『分かった、話し合おう。だからその鉄球を振り回すのを止めるんだ。まずは互いに誤解を解こうじゃないか』


(鉄球!? え? 奥さんだよね? なんで鉄球!?)


 ライエルは強気な歴代当主たちが怯えている姿を見ながら、歴代の妻たちがいったい何者なのか考えるのだった。


 四代目など円卓のしたに潜り込み、身を屈めて震えていた。


 先程から同じ言葉しか発していない。


『ゴメンナサイ。ゴメンナサイ。ゴメンナ――』


 五代目だけは冷や汗もかいていない。だが、真顔で――。


『……何が目的だ』


 いつもと違う笑顔を見せる妻、という状況に疑いしか持っていない。笑顔の裏になにかあると考えたのか、それを探ろうと考え込んでいる様子だった。


(……みんなどうしたんだろう。もしかして、本当に幻でも見ているのかな?)


 ここは宝玉内。何が起きても不思議ではない空間だ。


 そう思っていると、ライエルは六代目を探した。


「あれ? 六代目がいない?」


 ――六代目はその場から逃げ出していた。


 七代目の方は青い表情をしており、背筋を伸ばしているがどこかオロオロとしている。


『ゼノア、聞いてくれ。だからまずそんな笑顔で近付かないでくれ。止まれ。止まるんだ! 分かった。アレだな? マイゼルにお前の過去の失敗談を話した件か? え、違う? それは別? よし、まずは互いに話し合うために距離をとろうではないか。や、止めろ! 銃口をこっちに向けるんじゃない!』


(銃口……お婆様、意外と過激だったんだな)


 ゼノアはライエルの祖母に当たる。だが、ライエルには優しい祖母、という印象しかなかった。


 幻覚でも見ているのか、自分の妻たちに苦しめられている歴代当主たち。


 ライエルはソレを見て思うのだ。


「……歴代の奥方っていったいどんな人だったんだろう」


如何だったでしょうか?

思い浮かんだので書いてみました。


ついでに宣伝を――。


セブンス一巻は発売中!


買ってくれると作者が喜びます。


以上、宣伝でした。

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