表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不思議道具作成者  作者: スター
第0章 下準備
8/14

第六話 旅立ち

 セーサが森から出ようとする話です。ちなみ戦闘描写があります。戦闘描写は慣れていませんが、頑張って書きました。

あれから一週間経った。

 

 この一週間、俺はこれからどうするかを考えていた。シルバは己の将来を模索しろと言った。だけど俺はシルバと会ってから、この異世界で具体的にどうするべきなのかをよく考えていなかった。


 いや……違う。無意識の内に現実逃避をしていたのだろう。シルバと話をしたりして無意識に現実から目を逸らしていた気がする。あの時、シルバが俺を励ます言葉を言ってくれていたのは俺の現実逃避に気づいていたからかもしれないな。


 ……このままここにいてはダメな気がするな……。


 ──この森を出よう──


 俺はそう決意した──





 「さて、これで準備ができたな」


 俺は森を出る準備を完了し終わっていた。水も大量に保存したし、食料も一週間は持つ量を無限収納袋に入れたしな。それと野宿のための道具も作った。

 

 「結界の杭」頑丈な木の枝があったのでそれを材料にした。この杭は四本セットで使う物で、四角形の頂点の位置に埋め込むことでその四角の範囲内に害となる存在を入れないように出来るという物だ。これがあれば森の中でも野宿が出来る。旅には必須だろう。


 「それと行く前にこれだな」


 俺は懐から「導きの結晶」を取り出した。そもそも俺はコンパスを持っていない上にこの森の地図も持っていない。なので、この道具に頼ることにした。どこへ向かえば良いのかを思っていれば、最善の方向を選んでくれる。こういう時こそ役に立つなとしみじみ思った。


「それじゃあ行くか……シルバ、俺……頑張って生きていくぜ!」


 そして、俺は出発した。





 「導きの結晶」……いやペンデュラムの指し示す方向に従って歩いて、早三日、木の上に上って確認したところ、遠くの方に人工的に整備されたと思しき道が見えた。もう少しで森から出られそうだ。そう思っていた時だった。


 グルル……!


 「ん?あれは熊か?」


 木から降りたら離れた所から熊が現れた。ただ、狩り等で捕まえていた兎やイノシシのように、俺の元いた世界の熊とは姿が違っていた。まず全身の体毛が緑色なのと、爪と牙が異常に長いことといった違いがあった。色が緑なのは保護色のつもりなのだろうか?でも明らかに強そうだし、隠れる必要はない気がするんだけどなあー。


 グルァッ!


 そう考えている間にも襲い掛かってきた。俺は石のバット、〈メイス・バット〉を構えた。

 この世界に来た当初なら俺はすくみ上って、そのまま喰い殺されていただろうが、今は違う。この能力を使い、作った武器を手に獣を仕留めていたから経験は積んでいる。それにシルバのあの迫力ある姿と比べればこの程度、恐くは無い!


 「そりゃあ!」

 「グルッ!?」


 俺は緑熊の突撃をバットの身体能力強化でかわすと共に、攻撃が外れて体制が崩れている緑熊目掛けてバットを振り下ろした。


 「グルァァ!」


 どうやら今の一撃がかなり効いたようだ。殴られた左肩の辺りが若干歪んでいるし、血も滲んでいる。これで左肩は使えないな、というか潰れるかと思ったのに少し歪む程度かよ。頑丈だな。


 「ガンガンいくぜー!」

 「グル!?」


 俺は苦しそうにしている緑熊に接近し、薙ぎ払おうと振り回してくる腕による攻撃を避けながら叩きまくる。最初は耐えていたようだが、次第にダメージに耐えられなくなったのか血が噴き出したりもした。よし、これなら……!


 「グルオオ……!」

 「!、何か来る!?」


 突然、緑熊が大きく息を吸い込み始めた時、バットの危険察知が俺に危険を知らせて来た。俺は急いで緑熊から離れ、その正面に立たないようにした。次の瞬間。


 ドゴオオン!


 緑熊の口から空気の塊が発射され、緑熊の正面にあった木々がなぎ倒された。


 「おいおい。冗談じゃねえぞ!あんな攻撃有りかよ!」


 まさに間一髪だった。あれをまともに食らっていたらあっというまに死んでいただろう。


 「あのブレスをどうにかしないとな、いっそ逃げるか?でも下手に背中を向けるとそこで終わりの気もするしな……」


 緑熊を警戒しつつ、考えを巡らす俺だがふと、さきほど薙ぎ倒された木々のデカい破片に目が行った。

……あれを使えばあるいは。


 グルァァ!


 そう思っている内にまた襲い掛かってきた。ええい、一か八かだ……!

 俺は熊から出来るだけ離れ、先ほどの木片を拾い、ある機能を付与した。


 そして俺は近づいてきた熊の口目掛けて思いっきり木片を投げた。


 「グブブッ!?」


  熊は口に当たった木片に驚いたが、それ以上に当たった木片が離れない(、、、、)ことに戸惑っていた。


俺は熊が戸惑っている隙に背中に回って殴りまくった。

熊はそれらに耐えられなくなり、ブレスで口についた木片ごと俺を吹き飛ばそうとする。


――俺の想定通りに。


俺は出来る限り熊から距離をおき、身を伏せる。

その俺目掛け、熊がブレスを放とうとした時、俺は目と耳を塞いだ。


そして――


ドゴオォォン!!


熊の口に付いていた木片が大爆発を起こした。



これが俺が木片に付与した機能だ。まず、何かにぶつかるとその対象にくっつくという機能と、くっついた後に木片が壊れるくらいのダメージを受けると爆発を起こすという機能の二つだ。

正直、作成の段階を飛ばせるのは知っていたが、俺が形成していないモノには機能付与は出来ないと思っていた。しかし、実際には出来た。

どうやら俺の能力は思った以上に自由度が高いようだ。これならその辺の石ころを手榴弾のようにすることも可能かもしれん。

まあ、それよりも今は熊だ。


俺が見ると熊は仰向けに倒れ、口の辺りが悲惨な事になっていた。あれではもう物を食べることは無理だろう。頭部にダメージを負ったため、苦しそうに呻いている。


俺は熊の元へ行き、そして――

「悪いな、俺も生きたいんだ。だから……お前の命、もらうぞ」

そう言って、俺はバットを降りおろし、トドメを指した――





俺は倒した緑熊の解体を行った。と言っても能力の使い方を応用してみた所、スムーズにいった。

それは亡骸から直接、何かを作ってみることだ。こうすれば早く、的確に分解が出来る。

……精神的なキツさは同じだったが……


もっと早く気付けたら良かったな。いや、こうして可能性を探求することは大切な事だろうし、これからも色々と試してみるか。


それはそうと、今回は緑熊から良いモノが出来た。


〈新緑のローブ〉緑熊の毛皮から出来た服だ。俺が今着ている服は元の世界の物だ。この世界では違和感があるだろうから、上からこのローブを着てしまえば問題は無いだろう。

……色については仕方ないとしよう。

ちなみに、決して汚れず。着ている人が快適に思える着心地になるといった機能をつけた。

それと爪などは後で使おうと保存することにした。それに肉も結構な量が手に入ったので良かった。


 こうして、新たな装備と食料を手に、俺は先程見えた街道に向かって歩き始めた。


  ――さあ、異世界の文明への接触の第一歩だ――






 次回から新章です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ