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意識がゆっくりと回復する。
□■
A.D.2012.12.21
俺は誰だろうか・・・。そして、ここはどこだろうか・・・。
よくある記憶喪失のようだ。だが、そこで手には携帯が握られていた。
09030××-××××-××××に電話しろ。
とだけ画面に表示されていた。
俺は咄嗟に番号をダイヤルに入力した。
発信画面には「記憶」とだけ書かれている。
ピーという謎のビープ音。
脳内に無数の数式が浮かび・・・
□■
・・・。思い出した。
俺の任務は今後に関わる大きな分岐が成されるこの年にやってくること・・・?
おかしいぞ?
何故だ!?任務のことが何も分からない・・・。
それより以前に俺はやはり誰なんだ!?
俺は再び記憶へと電話をかけていた。ビープ音の後で一つ理解したのは俺の名前はウォード・ウォーカーという人物。それだけだった。
次に俺は携帯をメニューに切り替えた。殺風景なメニューの真ん中には「過去」「未来」「取り扱い説明」の3つのアプリケーション。
これが何を指しているのかまず、最初に覗いたのは取説。
・本携帯は普通の携帯ではなくDORN製のWCIA専用のタイムマシンである。
・しかしながら実験段階のため、使用後は記憶に障害が起きる。
・電話帳の「記憶」とは人間の記憶を動かすためのビープ音が録音されている。
・過去へ飛びたい時はアプリケーション「過去」からダイヤルで日付設定。
・未来へ飛びたい時はアプリケーション「未来」からダイヤルで日付設定。
・場所の指定もダイヤルから座標を打ち込む。
以上の項目が存在した。
どうやら俺はどっちかは分からないが過去か未来からか時間を旅してきたようだ。
最も、何もかも忘れている以上、今からの行動は全て自分の独断なわけだが・・・。
さて、俺が突っ立っているのはどこかの部屋の一室。窓を覗き込むとそこには見慣れない風景があった。
どれもこれも日本語で表示されている。
タイムマシンでは行きたい場所も座標から指定できるところから俺はやはり何らかの目的でここへきたに違いない。だが、他の時間へ飛ぶ気がない。
部屋はそこまでいいものとは言えないが薄型テレビやらベッドも一応は充実している。
日本語は概ね分かる。テレビを見ても何も分からないということはないだろうから俺は直ぐにテレビをつけた。
「日本のニュースか・・・。日本も最近は物騒みたいだな・・・」
そこでまず最初に目に入ったのは一つの大きな事件だった。
「速報です。総理官邸にて総理大臣が死去。テロの可能性が・・・?日本はアメリカに通達。アメリカは犯人に心当たりがあると発言した模様。」
テロ・・・だと?
ピリリリリ。その時点で俺がもう一つ所持していた普通の携帯。
だが、時間変動をしてきた上に俺のいた時間の電波など無いはずなのだが・・・。
それがどうやら誰かから着信しているようだ。
情報は入る筈。取り敢えず、番号だけ表示されたその着信に出てみた。
「ウォーカーね?大丈夫?」
「大丈夫ではない。俺は誰で、ここはどこだ?」
「・・・貴方。ちゃんと「記憶」には連絡したの?」
「あぁ。したさ。だが、記憶は戻ってこなかった。俺の任務は何だ?」
「日本総理大臣の防衛。失敗の場合貴方が犯人よ」
「・・・どういう意味だ?だって、総理は今殺された。大体あんたは誰で。俺はどこから来たんだ?」
俺の脳内では既に混乱が支配していた。
だが、相手方の女は至って冷静に話を続けようとする。
―失敗すれば俺が犯人。
「!?」
そこで女にも焦りが生じる。
「いい?よく聞いて。貴方はウォード・ウォーカー。元DORN研究員で現在はWCIAの工作員。貴方は未来である事件の首謀者として法定に出される。そして、貴方が無罪という証明を出来るのはその時代に生きる日本総理大臣だけ。」
「ちょ。ちょっと待て。事件とは何だ?DORN?WCIA?」
「・・・何もかも忘れているのね・・・。事件というのは36バグ(thirty six)問題。DORNとはwwwやHTMLを開発したり、LHCを使って大きな研究を行なった素粒子研究機関。WCIAとはその時代で言うCIAのこと。情報関連はアメリカ率先して世界を引っ張っていることから世界中央情報局として名を変えたの。」
混乱が激しく渦巻く。
36バグ問題というのは2000年問題に次ぐもので回避方法が模索されたにも関わらずコンピューター制御システムが全てを誤作動を起こしたようだ。
36バグにより発電、送電機能の停止や誤作動とそれに伴う停電。
医療関連機器の機能停止。
水道水の供給停止。
鉄道、航空管制など交通機能の停止。
ミサイルなどの誤発射。
銀行、株式市場など金融関連の機能停止。
通信機能の停止。
結果的に各国は知らず知らずに隣国に攻撃し、世界の治安は直ぐに悪くなっていった。
そして、この36バグは人為的なものであるとし、犯人はウォード・ウォーカーというWCIAの工作員が起こしたということになっているようだ。
そして、無実を証明出来るのは36バグが起こると予想された2012年の日本の総理大臣だけだった。
そこで総理防衛のために発動された計画 通称B36バグズ計画。
己の無実を証明するために未来から来たと協力者のマリー・キットソンは話す。
普通ならもう諦めるが俺には出来る。
そう。手元には一応タイムマシン。これが事件にしろ、事故にしろ36バグを止めるには俺しかいない。
記憶もそのうち戻るだろう。
それだけを考えて俺は再び過去へ飛んでいく。
□■
A.D.2036.3.23
「局長」
「何だ?」
「旧マンハッタン地域にてB36バグズメンバーのウィード・ウォーカーが現れました。」
「上の判断はいい。あいつは逃亡中と言っても過言ではない。取り敢えず捕獲しろ。」
「そうだ。奴は36バグの真犯人だ。さっさと捕まえろ。」
旧マンハッタン地域。
「俺は誰だ?」
頭の中が空っぽのようだ。手元の携帯に目をやる。
「電話帳の「記憶」に連絡しろ!」という待受を見て、取り敢えず「記憶」に電話をする。
□■
先刻の記憶は帰ってくるが・・・やはりそれ以前のことは・・・。
ここがグレゴリオ暦2036年・・・。誰かが起こした36バグが起こった年。
「あいつだ!」
俺はその声に反応した。胸に見えるのはWCIAのエンブレム。
よく分からないが追っ手のようだな。
そこで気がつく。俺は決して丸腰ではないということに・・・。
さっきも気になったが足にテープで何かがまいてあるが感覚でわかる。
間違いなくG17のハンドガンであることに。
取り敢えず走る。それだけだった。
追っ手も徐々にスピードをつけて俺に迫る。周りはまだ何ら以上に気がつかない。
「撃ってもいいぞ!」
「捕獲ではないのか!?」
無線の会話は俺の方まで聞こえた。せめて聞こえないぐらいで話せよとも思ったがそんなことを一々突っ込んでいる暇もない。
俺は未だ経済都市としての面影も残す近未来な旧マンハッタン地域の駅へ駆け込んだ。
駅と言えども36バグの影響で完全に閉鎖されているという感覚だった。
その時点では俺は足から一丁の拳銃を取り出す。
―やはり、このG17がしっくり来る。
恐らく連中も閉鎖された駅ならば、攻撃を加えてくるだろう。
□■
「あいつ。ここへ駆け込んだよな?」
「あぁ。ここなら発砲してもいいだろう。」
「おい!B36バグズ計画のウィード・ウォーカー!我々はWCIAの使者だ!一度本部へ帰還してくれないか」
・・・。静寂たる空間。響くのはWCIAの工作員の声だけだった。
「ど、どこだ!」
「銃を下ろせ・・・」
二つ、三つの声が途切れなく響くウォーカーとエージェントの声。
二人は至って冷静に近い状態だった。だが、先にその冷静さを消されたのはエージェントだった。
ドサ!
そこへ転げ落ちたのは気絶した仲間の姿。
ズダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!
乾いた轟音。薬莢の落ちる音に立ち込める火薬のニオイ。
基本的にオープンな閉鎖された駅を見てギョッとする一般人たち。
そして、あとから来るのはハズレを示す金属音。
バキッ!
響かずとも鈍い音が聞こえる。
「が、がはっ!」
エージェントは跪く態勢で苦しむ。後ろで気配を感じながら。
チラリと目をやると、そこには案の如ウィード・ウォーカーが一丁のハンドガンを構えながら下方に目をやっている。
「こっちだ!」
ウォーカーもエージェントも入口に目をやる。その時点で焦ったのはウォーカーだった。
□■
―警官か!
俺の脳内では二つの考えがせめぎ合っていた。
下で苦しむエージェントを上に逝かすか、このまま逃げるか・・・。
だが、一々こいつを殺しているほど暇はなさそうだ。どう見ても俺が追われ役なのだから・・・。
俺は駅の上に天窓があることに気がつく。
階段を上りながら俺は携帯にイヤホンジャックを取り付ける。
「おい!マリー・キットソン!」
「何をしているの!?」
「悪いが俺は俺の記憶も取り返したい。」
「貴方の経歴はもうないわ!」
「何!?」
「それがB36バグズ計画遂行時の約束の一つだもの」
マリーの話からすれば、B36バグズとはかなり重要らしく、公式とは言えども知っているのはWCIAの上層部だけ。そのため、囚われたりしても経歴を洗われずに済むのだ。
「では、何故俺は奴らに追われる。」
「分からないわ!」
「クソ。」
「焦らないでその時間軸はまだ36バグが始まっていないの。」
駅が止まっているとの旨の話を話すと、どうも対策の一環らしく電車は既に2034年には全世界で廃止になったらしい。
そして、36バグの一番の懸念材料とは・・・ミサイル関連らしい。
開発をしなければいいが既存している核ミサイルなどは未だ保管された状態のようだ。
そうこうしているうちに俺は天窓に一番近い階についた。
「フッ!」
ガッシとむき出しの鉄筋にしがみつく。
パン パン パン。
ガッシャーン!
銃声と窓の割る音が僅か1秒で鳴り響く。
フッっと一度息を吐きながら俺は今や枠しかない天窓のその枠にしがみつく。
「上から逃げる気だ!」
「追え!追え!」
どうやらWCIAの事情の説明も終わり、警察とエージェントの双方が俺を追うために階段を走っている。
「ちっ」
舌打ちをしながら俺はゆっくりと力を込めながら上り詰める。
―さて、どうするか。あの追っ手を振り払うことは出来るが、このY時間軸に経歴がないのらば、2011年にでも飛べばわかるのか?
ピリリ。飛ぶか飛ばないかの心の境界線上に不可解な物質が混じる。
電話だ。相手はお得意様の如くマリー・キットソン。
「どういうことだ?」
「ごめんなさい。上官のサム・センチネルがあなたを殺そうとしているの・・・」
「何故?36バグの問題の真犯人であるのらば、俺を殺す意味はないだろう?」
「わからないわ。」
「で、俺に何のようだ?WCIAにおわれているんだ。」
俺はどこかいらだちを見せてしまう。
「どこ?」
「旧マンハッタン地域の駅だ。屋上の天窓を突き破って天井の上をいった状態だ。」
「じゃぁ。その付近にあるA-エントランスビルの前に来て。DORNの開発した新しいタイムマシンがあるの」
「・・・・・・。分かった。後でな」
pi。会話を終了を示す音を合図に俺は今は使われないリニアモーターカーのレールが目に入る。
―近い!
そう思った時には俺は既に飛んでいた。後ろから聞こえる追っ手を振り払うかのように。
風や重力を感じつつ、俺はそのまま、少し下にあるレールへ飛び込む。
「ぐっ!」横に転がりながら、俺は思わず、衝撃への声を漏らしてしまう。
次々に飛ぼうとする追っ手。
「ぐあぁぁぁあ!」などと叫びながら下へ落ちていくものもいた。
だが、やはりWCIAのエージェント。警察官とは違い、きちんとレールに降り立つ。
しかし、俺がそれを確認したのは既にA-エントランスビルの姿を捉えた頃だった。
A-エントランスビルとは2034年に完成したアメリカの象徴的ビル。アメリカの玄関とまで比喩される。
AはAmericaのA。そのエントランス。文字通りのビルだ。
俺はそのまま、定期的に設置されていたはしごを伝い、下へ降りる。
しかし、マリー・キットソンも一応はWCIAの様子。俺は警戒の眼差しを辺りにやる。
そのまま、静かに近寄る。
「ウォーカー!」
「!?」
俺の体は瞬足の如く、反応する。
「反応しすぎよ・・・。はい。これ」
「あんたが・・・マリー・キットソン?」
俺は新しいタイムマシンを受け取りつつ、問う。
「えぇ。あ、そのタイムマシンは「記憶」に電話しなくてもいいわ。後、イヤホンジャックを差し込めば、音声でタイムスリップできるから。じゃぁ!」
「おい!俺の経歴は!?」
「ないわよ」
とだけ言い残し、彼女は一人姿を消していった。
□■
旧ワシントン地域 現バーニーズ地域 WCIA本部。
A.D.2036.1.25
マリー・キットソンとウィード・ウォーカーの二人が簡易的な接触をする数ヶ月前。
B36バグズ最終ブリーフィングが行われていた。実際のところ36バグ問題がいつ起こるか・・・その明確な日までは結局分からなかった。そのため、早い目のうちにこのようなブリーフィングを行ったのだ。
しかし、そこはあるお偉方の一室。
テレビもつけっぱなしだった。科学系のニュース番組と銘打ったもの。
トピックス一覧には「新型タイムマシン投入」やら「完全クローン成功」などといったものが陳列している。
そこにある姿は全部で9名だった。その中にはマリー・キットソンも含め、ウィード・ウォーカーの姿まで。ブリーフィングは丁寧に進められていった。
「あいつらは?」
「あぁ。B36バグズとかなんとか・・・」
「センチネルさん!」
「何だ?」
「ステルスキラー計画のレポートです!」
「了解だ。」
□■
「A.D.2012.12.20 日本の東京だ」
その瞬間、電撃が身を纏う。意識が一瞬途切れ、次目覚めた時には2012年の日本にやってきていた。
2月4日の俺がここへ一体何をしに来たか・・・。
日本国総理大臣を守護する。なんとしてでもだ。
恐らく過去が変われば自ずと未来もそのように変わる。ならば、守ればいいのだ。
殺されるのは明日。確か総理官邸で殺されてたな・・・。
□■
WCIA本部。
「ウォーカーの反応は?」
「時空移転の確認。2012年12月20日にやってきてます」
「・・・総理を守る気か・・・」
□■
「さて・・・まずやることはっと」
俺としては最早誘拐するしかない。総理が俺の何を知っているかは知らない・・・。
だが、その中に俺の経歴がされば・・・それで十分だ。
それに後々起こる36バグの真犯人もつかめるはず。これはやるしかないな・・・。
総理官邸の位置は既に把握している。
□■
A.D.2012.12.21
とある一家のお昼時。昼食の定番、インスタントラーメンを啜りながらテレビを見つめる主婦。
「臨時ニュースです。只今総理大臣の行方が分からないそうです。」
その後、テレビが伝えた内容はこうだった。
総理失踪前、総理の乗車する車の前後にSP車。その二台が突如エンジントラブル。緊急停車。
直後、総理乗車車のタイヤが突如パンク。
そのあと、総理の行方が途絶えた。
以上の点から犯罪性の高いものとされる。
そして、アメリカ中央情報局が何故か出動された。
□■
A.D.2012.12.20
まず邪魔なのは総理のSP共。
狙うのは総理が車に乗っている間。前後に車が配備されるのは当たり前だ。
エンジンをいじるか。ナンバーはマリーから聞いたことだしな。
DORNの研究員だったというのはでかいな。
俺は過去を振り返りながら早々と車のエンジンを弄っておいた。本来なら総理自体が乗る車両もやっておきたかったんだが、予想外に時間がかかってしまった。
やはり日本車というのは技術が高いのだと実感させられた。
□■
「ウォーカー。よく聞いて。WCIAの連中もそっちの時間軸に侵入したみたいなの。」
「ちっ!」
「多分厳しい戦闘になるわよ?センチネルもあなたを殺そうとしているし・・・」
「問題ない」
俺はそのまま作戦を決行した。総理誘拐は成功。用意した車で逃走中だった。
しかし、早くも後ろには黒塗りの車。つまり、WCIAの連中がわざわざ車でやってきたのだろう。
「あんたに!今のうちに聞きたいことがある!」
「!?なんだね!?」
「俺を知っているか!?」
「・・・・・・あぁ。知っている。だが、君の知りたいことを知るには私が言うところへ連れて行って欲しい。」
「!?どこだ!?」
「総理官邸だ。何事もなかったことにして欲しい。時間圧縮される前に!」
時間圧縮の意味はわからなかったが、俺はいそいで総理官邸へ向かうことへした。
向かう場所が分からないのか・・・エージェントの連中は車をぶつけてくる。
ズガガガガガガガガガ!!!!!!
轟く銃声。勝るような音の車たち。
防弾型なのか車に大きなダメージはない。俺はすかさず揺れる視界を絞った。
狙いをタイヤに定めて・・・。
パン!
乾いた音が一発。
キュルルルル。呼応したのはエージェントの車だった。
大きく回転し、徐々にバランスを崩す。そして、大きく反り返り横転。
急ブレーキを踏む車やそのまま大きく衝突する車。
だが、そんなことは早い時間の流れの如く、ずっと後ろにある。
もう一台のエージェントが車体を離し始める。
ズガン!
大きな衝撃音。
「くっ!」
「うぉ!?」
慣れない衝撃に声を上げる総理。だが、一々かまってはいられなかった。
なぜなら第2波はすぐそこまで来ていた。
キュウウゥ!
俺はブレーキをしっかり踏み込む。無論車体は止まる。
さっと横に出た一般車に激突するエージェントの車。一般車はそのまま、無残に横転した。
エージェントの車も片輪は浮き上がったが、執念か・・・。直ぐに体勢を取り戻した。
再び、激突に向け車体を離す。しかし、そうはさせない。俺は咄嗟の判断で減速し、後ろにつける。
大きくスピードを出し、車体を斜めに発進する。が、標的の俺がいないことに焦ったのか。
乱れる。そこに後ろからの一撃。
ガードレールを破り、僅か5秒程度の浮遊。
エージェントにとっては1分ぐらいに感じたかもしれない。
ドッボーン!!!
大きな水しぶきと共に車体は沈んでいく。
それでも俺はなんとか官邸へと着けた。
着く頃には車の原型などほとんどとどめていなかった。そのまま、俺は総理官邸の中へと向かった。
周りの日本人は俺をSPと思っているようだ。ニュース報道もあり、官邸の人々は歓喜に満ちていた。
総理の部屋
「まず、聞きたいのは先ほどいった時間圧縮とは?」
「簡単に言えば、タイムスリップをする際、飛ぶ人間が発する電波みたいのがある。それを人為的にその時間軸が受信しないように出来る。」
「解除されない限り順を追って日迎えてもその日だけなかったこととなる。一度その時間軸へ行っていれば誰でも操作出来る」
つまり、もしかしたらWCIAが俺を来れないようにすることも可能・・・?
危なかった。失敗していれば確実に俺が犯人路線だった。
「俺は真犯人ではないんだろう?」
「・・・まぁそうなるかもな」
「・・・」
「だが、一つ忠告がある」
「なんですか?」
「絶対に見落とすな。何もかも」
「それだけだ。」
36バグの問題は決して解消されない。
過去が変わったことはWCIAは勿論知っていた。だからこそ・・・。
THE Walker:Protocol
予告。
「我々WCIAには一つの規定がある」
罪人(容疑者含む)は時間軸変動を禁止する。
「つまり、我々には大きな問題36バグ問題の真犯人としてウィード・ウォーカーを容疑者とした。この事実に揺ぎはない」
「ウィード・ウォーカーを何としてでも殺害しろ。隠蔽は俺がする!」