拒否する俺とぶち切れる不良の弾幕ゲー
やってしまった
不良を殴るという死亡フラグを自分で建設してしまった
不良はありえないほど吹っ飛んで目を回しているし西園さんと元木ももう1人の不良も目が点だ。あと黒川はその状況をニヤニヤと楽しんでいる、殴りたい
「ヒ、ヒラくん今の…」
「ア、アハハ…」
アハハじゃねぇよ俺。今完全に平凡な日常におさらばしただろうが
今のはその…こいつらが言う所の『能力』なのだろう。まさか本当に自分が使えるようになるなんて思っていなかった
というか今はそんなことどうでもいいんだって、問題は殴った俺のその後だよ!
目の前では殴られた不良がもう起き上がっている
「お前…やってくれたじゃねぇか。L1」
終わったー。しかも今俺なんて言われた?L1?最下層じゃねぇか
俺はどこに行っても徹底した最下層なんだな。ある意味才能なんじゃないか?
「お仕置きが必要だよな…なあ!?」
やっべぇ、完全にぶち切れモードだよ。こっちはまだ何の能力かもわからないんだぜ?
そう思ってた矢先、頬を鋭い何かが切り裂いてタラリと見慣れた赤い液体が流れ落ちる
「チッ、外したか…」
やっぱり不良さんが何かしたみたいです。本当にありがとうございました
「俺の『飯綱』の切れ味は学年一だ…ズタボロに切り刻んでやるよぉ!!」
「ヒラくん!!」
「仲間!!」
高速で飛んでくる空気の刃、しかも結構な数が飛んでくる。はいオワター
「ヒラくん、手を出して!!」
さっきみたいにはじきとばせってことですか!?無茶言うな!!
そういいながらも死にたくないからとりあえず拳は突き出してはみる。人間最後は醜くあがくものだ
さっきみたいに弾き飛ばすことができればベストだがそうはいかない。刃は全て拳から軌道をさらせて周りの木や校舎の壁に当たる
まあすんなり能力が発動しただけよかったとしよう
「チッ、なんの能力だよ!!」
まだまだ飛ばしてくる。そして俺は必死にそれをそらし続ける
「…涙目になってる」
「うっせぇええーーーー!!」
涙目ぐらい許せよ
どうやらこの能力は手以外でも発動するようだ。といっても軌道を逸らす程度の力しかないみたいだけどな
「…仲間、能力同士がぶつけかるとレベルが下の能力が負けちゃうよ」
ソレサキニイエ
それじゃあどうあがいても勝てないじゃないかよ!
「けど、物理攻撃だったら…別?」
「そう、それだよトロ!ヒラくん、さっきみたいに殴って!!」
「だが断る!!」
どうやって殴れって言うんだよ!もう避けることでいっぱいおっぱいなんだよ!!
は!つい心の要求が現れてしまったがそこはスルーしておこう
「オラオラオラァ!よけてばかりじゃあたんねぇぞ!!」
弾幕ゲーの如く風の刃を飛ばしてくる。無理ゲーじゃねえか
「ヒラくん、大丈夫だから突っ込んで!!」
「それは死ねってことですか!!?」
「いいから!会長命令!!」
まだ会長じゃないでしょうが!!…なんて言えないよなー。チキンですから
「仲間…」
「なんですか!!」
「身分わきまえろ」
…黒川の言うとおりじゃないか。なんで俺が選り好みしてんだよ、俺はそういうキャラじゃないだろーが
いつでも人の下で奴隷同然の立場だっただろ?そんなヤツが目上の人の指示を拒否する権利なんてないんだ
「…よっしゃ、突っ込むか!!」
走り出す俺。さっそく腕や頬を切り裂かれるがそんなことは気にならない。気にする立場じゃないんだよ俺は
「死ににきたかバーカ!!」
「そうだよクソ野郎!!」
「じゃあ死ねよコラァアアアア!!」
避けようがない数の刃が襲い掛かってくる。ああ、俺終わったな…
そう思った矢先、背中にストンと何かが乗っかってくる
「…特別、力貸す」
俺の体と黒川の体を刃が通り抜ける。便利な能力だな通過っていうのは
「ほら、突っ込め」
おんぶする形で俺の背中に乗っている黒川が命令してくる。女子とこんなに密着するのは初めてだが不思議と緊張も何もしない。クソ川だから
「黒川さん」
「さん付けやめろ…キモイ」
「…クソ川」
「なに、オカマ」
「胸…無いな」
「……うっさい、ステータスだ」
「なるほど…」
驚くほど緊張感の無い会話。それでも一歩ずつ不良に向かっていく
「な、コイツ足めちゃくちゃ早いじゃねぇか!!」
「そりゃパシリで鍛えられてますから」
本日二度目の死亡フラグ…いや、これはもう勝利フラグか?
なんだ、俺って意外とやるんじゃないか?そう思いながら拳を振りかぶる
「…調子乗るな、オカマ」
「だから心読むなってのクソ川」
パッと俺から離れる黒川。そうだな、もう俺1人で大丈夫だ
「ちょお前やめ…!!」
「金輪際、俺に関わるな…!!」
そうだ、この能力は『拒絶』とでも呼ぶか
俺にピッタリな名前だわな。根暗で卑屈だ
「ま、いっか」
不良は再びふっとんだ