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家庭的男子かっこわらい

作者: 月晴

 空腹の時にスーパーに行くのは宜しくない。買わなくても良いものまで買ってしまう。ましてやそれを自覚しているのであればなおさらだ。

 若い店員が籠から籠へと商品を移すのをぼんやりと眺めながら俺はため息をついた。


 いざ自炊を、と意気込んで冷蔵庫を漁ってみればどうしても足りない材料があった。

 財布も危ないし外に食べに出るわけにもいかず、腹の中で存在を声高に訴える腹の虫のためにもこうしてスーパーにやってきたというのに。

 その腹の虫に踊らされ気がつけば使う予定のなかった買い物かごを手に取ることになり、更には有料のレジ袋さえも買わざるを得なくなってしまった。

 普段友人に家庭的な男子を冗談混じりに吹聴しておいてこの様だ。

 若い店員は研修中の札こそつけていなかったがあまり長く勤めてはいないのだろう、アイスの箱を認めてもドライアイス用の袋の要不要は聞かれなかった。余裕のある人間にしか細やかな気配りは期待出来ないものだ。

「969円になります」

 買い物かごの底が見えないほどの量でも1000円を超えないのはスーパーの良いところだ。コンビニだとこうはいかない。

 手早く千円札といくつかの小銭を出して少ない釣銭を貰い、移動して袋に詰める。相変わらず腹の虫は健在で、買ったばかりのおにぎりを見て騒ぎたてた。家に帰れば炊きたての飯が待っているというのに。思い出す度に内心で自分にがっかりする。

 俺は家に帰ったらそのおにぎりを腹に詰め込んだ後、予定通りに夕飯を作るだろう。解凍してしまった肉は使わねばなるまい。

 買った物全てを袋に詰め終わると、そこには割り箸が一膳残されていた。店員が気を利かせてくれたのだろうか。そこにあるのはおにぎりだというのに。

 今度こそ自分への落胆を表情に出してしまった俺は、アイスが溶けてしまわぬうちにと帰路に就くことにした。

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