小説に入れないけれど
ある冬の寒さが厳しい日の夜、男はあえてエアコンをつけずにこたつにあたりながら趣味である読書をしていた。彼が特に好きなジャンルはSFとホラーで、彼はすでに還暦を過ぎたというのに未だ少年のようにこれらの世界に入ってみたいと希望してやまない。
だが、彼が少年と決定的に違う点もあった。今までの人生の中で現実を学び、世間の厳しさを痛感してきたのだ。希望はすれど、心のどこかでは小説の中に入ることなどできるわけがないと思ってしまっていた。
そのことに気づいた彼は、深い絶望を味わうこととなる。しかしそれで終わる男ではなかった。自分の夢をかけて小説の中に入れる機械を作ることにしたのだ。
当然のごとく上手くはいかない。だが何度も諦めかけてその度に好きなSFやホラーの本を読み返し、気力を充填してきた。今回もそのために一休みがてら本を読んでいる。
しかし今回ばかりはどうも気力がたまらない。男は深くため息をついた。
「はあ……。やはり無理か。せめて一度だけでもと思い今まで作ってきたが……。どうも上手くいく気がしない。」
いまいち本にのめり込めないまま男はこたつ布団をめくる。
そこにはグレムリンがいた。
「なんだ、グレムリンか……。あんまり好きな魔物ではないんだよな。」
布団を元に戻す。
今度はもっと自分の好きなものが出てくることを祈ってまたしばらく本で時間をつぶすことにした。
このこたつは小説や漫画のキャラクターをイメージ通りに構築してくれるのだ。一昨年発売された。
こちらもワンアイディアを広げたものです。「こたつ」から考えました。落ち分かりづらくてすいません。
あなたはもし自分のやりたいことに類似したものを他人がやってしまっても、類似していてもそれは自分のやりたいことと違うものだと見なしてやり続ける人をどう思いますか?