08 響の変わっていく日常
衣替えが進み、白のワイシャツやクリーム色のベストやカーディガンが目立つようになった学内。
響の足取りはいつもより軽かった。
花菜と付き合いだし毎日素の自分を出して話すことで、今までのストレスが嘘のように解消されていた。
会話は他愛ない雑談が主だった。
好きな食べ物は何か? 今日学校であったことや、あの先生の授業は脱線してテスト期間までに進行が遅れがちになるなど。
本当に同級生と交わすような軽い感じのものであった。
だが響にとっては素の自分でそういった話ができるのは久しぶりの感覚で、解放感に満ち足りている。
花菜も最初こそ覚束なかったが、基本聞き上手であった。
響としても、花菜の話すことに耳を傾けるのも心地よかった。
実際何も着飾らない自分を誰かに見せるのは、響の中では稀であった。
高校に上がってからは、公私共にまったくと言っていいほど機会がなかったのだ。
学校での芳川響は優等生であり、ほとんど隙は見せない。
人付き合いは行っているが、友人と連れ立ってなにかをするようなことは皆無であった。
部活動も行っていない。
部にまで優等生として疲れに行くのは、まっぴらであったからだ。
それでも孤立していないのは成績の優秀さと人当たりのよさ、勉強に関して人に乞われた際は教えるなどで人望があったからだろう。
その結果がクラス委員長となってしまったのは、本当に誤算であったのだが。
「相原さん、おはようございます」
「あ、おはよう……芳川さん」
教室に向かう道すがら朝に登校してくる花菜に会うことができた。
歩行速度が響の方が速いのかもしれない。
学校で接点を持たないようにしてはいるが、自然な挨拶程度であれば別であろう。
今日はいい一日になるかもしれないと響は感じていた。
教室に着くと、花菜はこちらをチラチラと見ながら自分の席へと向かって行った。
不自然にならないようにと感じたが、実は花菜は前からあんな感じだったのかもしれない。
自分は鈍感だったのだろうかと考える。
響が花菜を意識し始めたからなのか、妙に視線が合うことが多いように思っていた。
(なんだか、嬉しい気がする……)
花菜からのものは、何はともあれ好意だ。
悪い気はしないのかもしれないと感じている。
響は恋愛に関しては、よく分かっていなかった。
高校に入ってから、初めて何度か告白されたことはあるがすべて断っている。
仮初の自分を好きになった者など、失望させるだけだろうと考えていた。
(恋って、なんなんだろうな……)
そんなことをぼんやりと考えながら、自分の席に着きながら一限の準備を開始する。
(まぁ、そんなことより花菜とのお出掛けが本当に楽しみ)
響が上機嫌な要因はもう一つあった。花菜を休日の外出に誘ったところ、OKを貰ったのだ。




