表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花の音  作者: 高山之信
うたかたの恋
53/58

53 あなたしかいないってこと?

階下のキッチン。

花菜は慣れた手付きで湯を沸かしながら、冷凍庫から氷を取り出してアイスティーを作る準備を始める。


(分からない……)

響の真意がまったく読めずにいる。

自分があんな返事をしたのに、何事もなかったかのように……いや吉事があったとすら言えるような雰囲気を(まと)った響が家に直接訪問してきたのだ。

花菜の混乱は最高潮に達そうとしている。

もはや、恐怖に近い。


「花菜ちゃん、これ芳川さんがお土産に持ってきてくれたお菓子よ」

「あっ、うん……」

「花菜ちゃん、これ好きでしょ?」

以前花菜が響に好きだと言ったことがあった菓子店のカステラの包みを母がこちらへと持ってくる。


(響ちゃん……覚えててくれたんだ……)

花菜が言ったのは、ほんの軽い日々の雑談程度だったはずである。

それでも響が覚えていてくれたという事実が、こんな状況の中だというのに心に染みた。


「お持たせになっちゃうけど、一緒にいただいちゃいなさい」

「うん、ありがとう」

「お礼なら、芳川さんにね」

「うん、そうだね……」

通常なら楽しみなのだが、今は不安でそれどころではなかった。

母親の手前、そういうものを表に出すことはしないが。


(まずは、どういうつもりでウチに来たのか……尋ねないと……)

響の意図がまったく読めない今、それが先決である。


「あと、花菜ちゃん。これ、芳川さんから」

花菜が決意を新たにしていると、そう言って母親は一輪のピンクのバラを差し出してきた。


「へっ?」

そういえば、会話で花がどうこうと話しているのが聞こえたかもしれないと思い返す。

だが、ピンクのバラとは意表を突かれて花菜は()頓狂(とんきょう)な返事しかできなかった。


「日頃の感謝なんですって。今の子は、なんだかオシャレね」

「そう、かな?」

友達同士で花を送る風習は、花菜はあまり聞かない。

とりあえずバラを送ることはしないだろう。

母親が間違った現代知識を手に入れそうだが、ここはスルーすることにした。


「花菜ちゃん、このお花どうする?」

「と、とりあえず……花瓶に活けておいて……」

「折角のプレゼントだし、お部屋に飾るでしょう?」

「そ、そうだね。あとで取りにくるよぉ……。今は待たせちゃってるから」

「そうね。いい感じの一輪挿しの花瓶あったかしら?」

そう言うと、母親は花瓶を探しに行ってしまった。


花菜は、ピンクのバラから響が(ただ)ならぬ状態で自宅に訪問してきたことを悟る。

用意するグラスを持つ手が震え、カランと氷が鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ