表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花の音  作者: 高山之信
うたかたの恋
52/58

52 部屋に招くのって、ただでさえ緊張するのに

自分の部屋から階段を降りて花菜がリビングに向かうと、まだ母親と響の談笑が続いているのが聞こえる。


「そうなのよ。花菜ちゃんったら、かわいいお洋服なかなか着てくれなくて」

「似合うのに、もったいないですよね」

「芳川さんからも、勧めてあげてね」

「それに関しては、もちろんですよ」


(仲よくなってる……)

好きな人と母親が仲よくしているのは、なんとも言えない感情が湧いてくる。

花菜はそのまま入ろうかと思ったが、躊躇(ためら)われたのでコンコンとノックをする。


「あら、花菜ちゃん?」

母親の声と共に扉を開けて入室する。


「うん、お待たせしちゃってごめん」

扉を開けると、にこやかにしている母親と、そして振り返った響……メイクをしていつもより数段美人度が増しているように見えた……が微笑んでいた。

服装もいつもの快活なものではなく、落ち着いた大人な女性のコーデといった感じの(おもむき)で雰囲気がまるで違う。

以前確かにこういう服装も持っているとは聞いていたが、実際目の当たりにすると花菜にとっては想像以上の破壊力だった。

制服以外でスカートを身に(まと)っている響を見るのは初めてかもしれなかった。


「ぴゃっ……!」

「どうしたの花菜ちゃん?」

思わず声にならない声をあげてしまう花菜に対して、母親が心配そうな声を()らす。


「やっほ、花菜」

「や……やっほ、響ちゃん……」

いつものような調子で挨拶(あいさつ)してくる響に、花菜はオウム返しのように挨拶(あいさつ)を返すことしかできずにいる。

花菜の思考に(しば)しの空白が生まれる。


「花菜ちゃん? どうしたの? お部屋、行くんでしょ?」

「そっ、そうだね! 響ちゃん、私の部屋に行こうか……」

響を自分の部屋へと招くことになる……。

散々響の部屋へ(おもむ)いておいてだが、やはり心のハードルは高い。


「芳川さん、私ったらお茶も出さずにごめんなさいね。あとで部屋に持っていくわね」

「お茶、私が用意しに行くから! お母さんはいいよ!」

「あら、そう?」

「うん!」

なにが起こるか分からない空間に、突然母親が乱入してくるなど避けねばならないと花菜は判断する。


「わっ私の部屋二階だから……。行こう……」

「うん」

今の響が分からないこと、好きな人を案内することなど何重の壁を越えて花菜は自身の部屋へと案内をする。


学校の友人すら招いた記憶が曖昧(あいまい)なほどである花菜は、自分のテリトリーに家族以外がいることに違和感を感じる。


「ここ、私の部屋。狭いけど、ごめんね」

建売住宅の子供用の部屋なので、本当に決して広くはない。

二人が入るだけで、少し手狭に感じてしまう。


「ごめんだけど、響ちゃんはベッドにでも掛けてて」

来客用の椅子などもないため、ベッドへと案内する。


「分かった」

「私、お茶入れてくるから待っててね」

「ありがとう」

響はドキッとするような笑顔で微笑みながら感謝の意をこちらに示してくる。

いつも以上に(ほが)らかで純真な様子に見受けられた。

ここに来た響の意図、心情などがまったく読み取れない。

心の焦燥(しょうそう)ばかりが(つの)っていく。

花菜はそんな響を自分の部屋に一人にさせるのは気がかかりではあったが、お茶を入れに階下へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ