40 学生としては緊張のとき
「相原」
「はい」
テスト返却の日。
出席番号の若い花菜は、いの一番に教諭に呼ばれる。
「今回は頑張ったな」
教壇に向かった返却間際、教諭から軽くそんな言葉を掛けられる。
「ありがとうございます」
採点されたテストの答案を受け取った花菜は、自席に戻る。
教諭の声は続いて生徒の声を呼んで、答案の返却を行っていた。
(凄くよかった……)
花菜は改めて自分の点数を確認すると、想像以上の得点で少し信じられないといった心持になっていた。
(こんなにテストの点数がよかったら、お父さんかお母さんから臨時でお小遣いが貰えるかもしれない……)
花菜がそんなことを考えていると、返却が進んでいっているのかクラスメイトの間でヒソヒソと点数や問題に関しての会話が聞こえる。
あくまで授業中なので、控えめなボリュームだった。
(これも響ちゃんのお陰だなぁ……。やっぱり、なにかもっとキチンとお礼しなきゃかも……)
手作りお菓子を差し入れたが、花菜の中ではその程度では不釣り合いに思えた。
チラリと響の方を見やる。
そうすると、バチリと目が合った。
(えっ……)
花菜と視線が合うと、ニコリと笑う響。
(だからダメダメダメダメ、ダメだって……)
目線が合ったのが嬉しかったのか、点数を見て嬉しそうにしている花菜を見ているのが楽しかったのかは分からない。
優等生の芳川響は相原花菜にそんな顔をしない。
「芳川」
「はい」
丁度最後尾付近の響が呼ばれる番のようだった。
テストの点数で少しざわつく教室の中、澄んだ響の声が花菜の耳朶まで届いた。
(バレてない……?)
他のクラスメイトは自分の点数やテストの内容に夢中になっていたのか、響に注目している生徒はいなかったようである。
花菜は胸を撫で下ろす。
(この前気を付けるって言ったのに……)
響は花菜の前であんなに後悔していたように感じたのだが……。
(ただ……でも……)
学校で感じる芳川さんの笑顔は特別感があっていいものかもしれない、と少し花菜は感じていた。
注意するのは……今回は、忘れてしまおう。




