39 止まらない撮影会
「あーっ花菜! かわいいよ!」
「うっ……ううっ……」
「いいよ……いいよ花菜! 少し恥じらった顔もかわいいよ!」
響は早速といった感じで、スマホのカメラを花菜に向けて様々な角度から何枚も写真を撮ってくる。
花菜も響が喜ぶならと、少し照れくさいながらもされるがままになっていた。
「響ちゃん……ちょっと撮る枚数多くない……?」
カシャカシャ。
明らかに何枚も撮られている音が室内に聞こえていた。
「今まで撮ってこなかったんだから、これぐらいでバランスが取れてるんだよ」
花菜の抗議も、今の響の前では暖簾に腕押し状態であった。
「色んなポーズとってみようよ」
「ええっ……。そういうのはちょっと……」
花菜はモデルではないのだから、どういったポーズをとっていいものか分からない。
「ほらっ、ピースピース」
「ええっ、ピッ……ピース……」
響にそう言われて、簡単なポーズなこともあってか花菜はぎこちなくピースサインを返す。
それに伴って、シャッター音が響いた。
「いいっ……! じゃあ、花菜。次は胸を強調するポーズか……。そうだな、スカートをたくし上げてみようか」
「しないよ⁉」
響のふざけたリクエストに、花菜は身を守るような姿勢をとってしまう。
「しまった……焦りすぎた……。私ならもっと自然にできたはずだ……。そうだ……せめて、腕や手の動きを少しずつ自然な形で誘導しさえしていれば……」
響は思わずといった感じで後悔が口から溢れていた。
その瞳は真剣であり、先程の言葉が嘘偽りのないものであったことを物語っているようであった。
「冗談じゃなかったの⁉」
「アハハ、そんな……冗談だよ」
花菜は、そう言った響の瞳が若干笑っていないように感じてしまう。
「そっ、そうだ! お料理……お料理の準備しないと」
花菜はこの攻勢を躱すべく、キッチンへと逃亡を図った。
「エプロン姿も良いよね!」
だがもちろん二人で料理することになるので、そこにはスマホを構えたエプロン姿の響もいる。
「響ちゃん、お料理に集中するの」
「ちょっとぐらいはいいじゃん」
などと言われ、結局料理をしている最中の花菜の写真を何枚も撮られることになる。
「花菜のご飯も撮っておこう」
「そんな、物珍しいものじゃないよぉ……」
できあがったら、まるで外食のように花菜と響の合作(八割花菜)の料理が写真に収められる。
「食べてる花菜もかわいい」
「んんっ……。おっ、お行儀が悪いよ、響ちゃん……」
仕舞には、食べている姿まで響に写真に撮られてしまう。
一体その日は何枚写真を撮られたのか、花菜は数えることはできないでいた。
撮った響本人すら分からないだろう。
いつもより緊張して疲れてしまった花菜だったが、そうそう何度も起こらないだろう状況であろう。
好きな人が満足してくれるのならと、気恥ずかしながらも嬉しさのような感情もあった。
その疲労は、夜に約束通り送られてきた響の自撮り画像によって吹き飛ぶことになるのだが。




