03 クラスの委員長
「相原さんはいらっしゃいますか?」
花菜がいなくなり少し時間が経ったころ、入れ違いになるように一人の女生徒が友人達と和樹が座っていた席……正確には花菜の席に声をかけてきた。
「委員長、相原さんに何か用?」
「はい、少し提出書類でお伝えしたいことがありまして」
委員長と呼ばれた少女、黒髪を長く腰の辺りにまで流した美麗の生徒が丁寧な所作で受け答えした。
2年B 組のクラス委員を務めており、クラスメイトからは委員長と呼ばれていた。
きちっと着こなした制服と仕草が相まって、見るからに優等生な印象を人に与える。
美しい顔だけでなく身長もあってスラッとした体型をしており、何かのモデルをしていると言われても信じる者もいるかもしれない。
「相原さんなら、次の授業の準備があるからって家庭科室に行ったよ」
「あら、そうなのですか」
「うん、調理部だからって顧問の沢田先生に頼まれたんだって」
「そういうことでしたか」
花菜の友人達がことのあらましを説明する。
委員長は暫く思案顔だったが、ふっと顔をあげた。
「でしたら、私もお話ついでに先に家庭科室に行っていますね」
名案を思い付いたとばかりに微笑んでいた。
「えっ、でもまだ少し早いよ」
昼休みは、まだ半ばを過ぎた辺りである。
授業の準備を整え、向かうにしても早い時間であった。
「フフッ、この程度誤差ですよ。相原さんのこと、教えていただいてありがとうございました」
それでは、と言うと委員長は事前に準備してあったのか用意を整えて颯爽と教室をあとにした。
「委員長も大変そうだねー」
「そうだねー」
そうこぼす花菜の友人達。
担任は人使いは荒い方ではないが、それでも学級をまとめる役割は大変そうに感じられていた。
「委員長一人だったけど、あんまり人といるところは見ないかも」
話は委員長と呼ばれた生徒の交友関係に移っていく。
「委員長学食らしいけど、一緒にお昼食べたって子の話は聞くよ」
人当たりはいいのだが、親しい人がいるという話は一切聞かない。
「この前告白されたけど断ったって噂本当なのかな?」
「委員長美人だし、付き合ってる人いてもおかしくないよね」
美人なこともあってか、こういった噂にはこと欠かないようだった。
「あれでいて成績優秀なんだから凄いよね……」
「天は二物を与えなさったか……」
このようなことが言われるのも当然で、この学校はテストの成績上位者は大々的ではないが学級の掲示板程度に貼り出される。
委員長はその中で、学年で十位以内は常連であった。
かしましい会話の横にいる和樹は、珍しく二人に口を挟まなかった。
日頃は花菜がおらずとも平気で会話に割って入るのだが、このときばかりは委員長の消えていった扉の方へと目をやっていた。




