26 響のお風呂上がり
花菜と響の二人は夕飯を食べ終わり、風呂に入ろうという話になった。
ここは家人からと、花菜が勧めてくるので響から入ることになる。
そして響は風呂を入り終わり、濡れた髪を拭きながらバスルームから部屋へと戻ってきた。
寝巻用の少し大き目のTシャツにショートパンツという、部屋着とあまり代り映えはしないスタイル。
この辺りも、あまり頓着しない感じが出ている。
その姿を花菜がじっと見詰めていた。
なんだろうか、ボーッとした感じに見受けられた。
「お風呂お先。花菜もどうぞ。なにか足りない物があったら、声かけてね。タオルとかは用意してあるから」
「あっ、うん!」
声をかけると、正気に戻ったように答えが返ってきた。
「なぁに? やっぱり私と一緒に入るのがよかった?」
「えっ、いやっ……違うよ⁉ そんなの無理だよ⁉」
花菜は頬を染めながら大きく手を振って否定した。
響は風呂に入る前に、お約束とばかりに花菜に一緒に入らないかと声をかけていた。
もちろんのように断られている。
(まぁ流石にウチのお風呂狭いから二人で入るってなったら、どのみち厳しいもんね)
入ったら入ったで手狭になってしまう。
二人で湯舟に浸かったら、身体を置く場所がないし湯は溢れるしで大変なことになるだろう。
湯を少な目に張れば、入れなくはないだろうが。
そうすると、かなり密着することになる。
「お風呂、私もいただくね!」
花菜は着替えと用具一式を掴むと部屋を出て、バスルームへと向かって行った。
「ごゆっくり」
そう言って花名を見送り部屋に一人、ドライヤーで髪を乾かしていた。
(恋人が自分の家のお風呂使うって、なんか変な気持ちだな……)
仮初の恋人である。
やましい気持ちはないはずなのだが、友人すら自宅に迎えたことがないこともあってか少々浮足立っているのだろうと結論付ける。
花菜の妙に照れたり、慌てた様子が感情に拍車をかけたのかもしれない。
こそばゆいが、悪い感情ではなかった。
(嬉しい……? いや、楽しい……?)
響はそのとき、自分が喜んでいるのかもしれないと気付いた。
花菜を自身のプライベートな空間、時間に招き入れられたことが。
そして、花菜との時間を長く持てているということが。
(少し、でもやっぱりムズムズするかも?)
踏み込まれるということを避けてきた自分のなにかに、触れられているような気がしたのだろうか。
慣れない感情。
だけどそれはなにか、花菜と繋がれたような気がした。




