24 変装
「あれ、卵が少し足りないかも」
夕食時になったので、今日も二人で夕食の準備となる。
冷蔵庫を覗いてみると、記憶していたより卵の量が少なくなっていた。
芳川宅の冷蔵庫事情は、すっかり花菜が管理するところとなっている。
「ああ、私がちょっと使っちゃったかも」
なるほど、響もきちんと料理をしているようだった。
そこは感心ポイントなのだが、肝心な夕食の問題があった。
「じゃあ、メニュー変える?」
「いいよぉ。直ぐそこだから、私が買い出しに行ってくるよ」
響のリクエストで本日は洋食メニューであった。
遠くない場所にスーパーがあるので、買いに行く程度の時間問題無いだろうと考えた。
「う~ん、それじゃ一緒に行こう」
「えっ?」
響の提案に思わず声が漏れる。
「いやいや、響ちゃん目立つよ? それに、学校も近いし誰かに見られちゃうかもだよ」
いくら休みで部活動も無い期間とはいえ、この辺りに住んでいる生徒もいるだろう。
それに、響は自分の容姿が整っていることをいまいち理解していない気がする。
服に対する頓着は無さそうだが、なにを着ても似合うし目立つのだ。
「変装するから、大丈夫大丈夫」
「変装?」
「花菜はここでちょっと待ってて」
「えっ……う、うん」
そう言うと、響はキッチンスペースから部屋に戻った。
クローゼットを開ける音と、微かに衣擦れの音が聞こえてくる。
響が着替えているのは分かった。
「お待たせ」
暫くすると扉が開き、そこには外出用にパンツスタイルに着替えた響がいた。
「わぁ」
花菜が感嘆の声をあげる。
響が長い髪をベレッタを使ってアップにしてまとめ、更にはキャップを被って印象を変えていた。
更には丸形のサングラスをかけて、目元まで隠している。
花菜でも一見しただけでは、響と直ぐには気付けないかもしれない。
「どう?」
「似合ってるし、確かにこれなら響ちゃんって分からないかもぉ」
「そうでしょぉ」
響は自信ありげな様子で得意満面であった。
「というか、響ちゃん……変装慣れしてない?」
「まぁ、うん。一人暮らしなのもあるし、学校のみんなとプライベートでバッタリって嫌だったから……」
どうやら実績があるようだった。
優等生でいるのは学校だけで十分らしい。
それに変装を気付かれても、逃れる程度の話術は響なら持ち合わせているのだろう。
マジマジと見詰めるが、これなら響の魅力を世間から少なからず隠せているからよいのかもしれない。
図らずとも、男避けになっているのではないだろうかと花菜は考える。
「これはこれで、いいと思います」
「そう?」
なんだか芸能人がお忍びで来たみたいな体で、花菜のツボにグッと来ていた。
「じゃあ、お墨付きもいただいたことだし……。行こうか!」
「う、うん!」
花菜と響は連れだって、部屋を後にする。




