21 膨らんでいく響の心
学校での授業と授業の合間の中休み。
響は次の授業の準備をしながらチラリと花菜の席へと視線を向ける。
すると、友人と談笑している花菜が目に映った。
花菜は引っ込み思案な性格だが、人当たりは非常によいので孤立するようなこともなくクラスで友人関係を築けていた。
対して響は能力的な人望はあるものの、これといって親しい友人などはいない。
クラスメイトとは、努めて仲を深めようとはせずに浅い関係がすべてであった。
まったく社交性がないというわけではないので、話しかけられれば軽い雑談や勉強に関する話などはすることはある。
だが、響としては優等生の状態で話し続けるのも気疲れするためか極力避けたかった。
悪目立ちすることは分かっているので、無難に読書や自習などを行って話しかけづらい環境を作ってやり過ごしていた。
今まではこれでもよかったのだが、花菜という甘露を知ってしまったばかりに響は現状に物足りなさを感じてしまった。
気にならなかったことが、気になり始めている。
響の中で、花菜と一緒に過ごしたいという気持ちは日に日に大きくなっていく。
それは、今や家の中だけでは留まるものではなくなっていた。
「花菜先生! 次の授業のここ、教えてもらえませんかぁ?」
「ええーっ……ここ、テスト範囲だよ? ちゃんとやってこようよぉ……」
「たまたま、たまたまだって! そういう日だったんだって」
「もぅ、しょうがないなぁ……」
和樹が次の授業で当たる番なのだろうか、花菜に教えてもらおうとしている会話が響の席にも聞こえてくる。
(というか、吉田くん距離近くない?)
幼馴染だとは花菜から聞いているが、如何せんあの二人は距離が近い。
花菜を呼び捨てにしているのも、何か癇に障るものがある。
(私の花菜なのに……)
響は心の中で仮初の恋人を勝手に独占しようとし始めていた。
(いや、私の花菜ではないよね?)
そんな考えの中、ふと正気に戻る。
これでは、子供じみた独占欲ではないかと。
そう自分に言い聞かせ、目線を手元の参考書へと落とした。
響は自分は独占欲が強い方なのだと自覚している。
子供のころに、お気に入りの子を遅くまで散々連れ回して怒られたことがあった。
内に入れてしまうと、視野が狭くなるのだろうかと一人ごちる。
(いけないいけない、花菜には花菜の……学校生活があるんだから)
響はそう心に戒めた。




