02 お昼の喧噪に消える
「ごちそうさまでした」
花菜は昼食を早めに食べ終わると、楚々と弁当箱を片付けにかかった。
「あれ、相原さん今日早くない? なにか用事あるの?」
いつもであれば、食中食後談笑をしている時間である。
今日は午後から調理実習があり量が少ないとはいえ、食べるのそれ程早くない花菜にしては急いで食べたようであった。
「今日、沢田先生に実習の準備しておいてって」
「ええっ……あの先生、人使い荒くない?」
「部活の延長線みたいなものだから」
花菜は調理部に所属しており、その顧問が家庭科の沢田教諭であることから今回の仕事のお鉢が回ってきた形となる。
「ええーっ、それでもさーっ」
「沢田先生、ああ見えて悪い先生じゃないんだよ?」
他の生徒より馴染みが深いこともあってか、花菜から沢田教諭に対してフォローが入る。
大雑把で生徒の自主性を重んじる先生ではあるが実際面倒見はよく、生徒のことに関しては親身になってくれる先生ではあった。
だが馴染みがないと、大雑把で自主性を重んじる部分だけが目に付くのかもしれない。
「大丈夫? 手伝おうか?」
友人達が気を使って声をかけてくれる。
「ううん、全然大丈夫だよ。本当に部活で慣れてるから」
花菜は気を使わせまいと、こともなげに言う。
「そうだぞ、俺は一回手伝って割とガチ目に怒られたからな。実際花菜一人のが早かった」
「それは和樹くんが、滅茶苦茶するからだよぉ……」
何故か自信満々の和樹の言葉に、花菜からの非難の声が飛んだ。
「ああ……じゃあ、お任せしようかな……」
「そうだね……」
友人達は、今回はなんとなく察したのか申し出を引いてくれた。
和樹が手伝った際の光景が、まざまざと浮かんだのかもしれない。
花菜からすれば、手伝いを申し出てくれただけでもいい友人であった。
「あはは……それじゃあ、またあとでね」
「うん、また五時間目にー」
「悪いね」
友人と別れの挨拶をする。和樹は何も言わずに手をあげて見送っていた。
「ううん、全然だよー」
そう言うと、花菜はその足で昼の喧噪に包まれた教室を後にした。




