13 花菜のおしかり
「響ちゃん!」
「うん……」
「これは、ダメです!」
デートから数日経ったある日、花菜は約束通り響の部屋を訪れていた。
響の借りている部屋は狭いなりにキッチンルームが独立しているタイプなので、メインの部屋と仕切られている。
その玄関を開けたキッチンルームにあるシステムキッチンを前にして、花菜は響に対してダメ出しを行っているのだ。
「響ちゃん……」
「う、うん……」
「日頃、どういう食生活をされてらっしゃるの……?」
ほとんど使われた形跡がない台所、失礼だと思われたが断りを入れてゴミ箱の中も確認させてもらっていた。
そして、食材らしいものがまったく見受けられない冷蔵庫。
事前に買い出しに行くとき、調味料も殆どないと言われたときに訝しんだのだが予想より酷かった。
かろうじて炊飯器は使われている形跡が確認できた。
「その……固形的な栄養食や……10秒でチャージできるものや……あとプロテインは飲んだりとか……。あと、実家から仕送りでおかずが届くから……偶にそれでご飯食べて……。あっ! たまに外食したり、コンビニで何か買ったりはしてるよ? それに、学食ではちゃんと食べてるよ!」
必死に取り繕おうとする響だったが、花菜を前にすべてが逆効果になっていく。
「全部が全部ダメとは言わないけど、ダメ! あのね、響ちゃん……。食育って言葉があるように、栄養バランスが取れた食事というのは生涯に渡ってとても大切なことなの……」
「えっ、あっ……はい……」
急に相原先生の講義が始まってしまい、響も困惑してしまう。
この時ばかりは、小柄な花菜が響には大きく映る。
調理部なこともあってか、花菜はこういったことに対して人一倍気にする性質ではある。
それが好きな人のことなのだとしたら、猶更だった。
「だから、今からこんな食生活じゃダメです!」
「はいっ!」
思わずといった感じで響の背筋が伸びる。
「調理実習のときとかだと、手が動いてたと思うから……めんどくさがってるんだね……?」
「はい、簡単なものなら作れるかもしれません……」
明らかにやったことがない者の発言であった。
響は優等生なので、家庭科の調理に関わらず実習ではそれなりに手は動いている。
基本的に器用なのかもしれない。
「ダメだよー。簡単なレシピとか教えてあげるから、作るように習慣づけようよぉ……。私も手伝うから! 今日は約束した通り、私が作ってあげるから。ね?」
「わ、分かました……」
花菜の迫力と自分を心から思いやる気持ちが分かる言葉の前に、響は白旗をあげる。
食材や調味料を片している間花菜は、響に懇々と食に関する大切さを語って聞かせる。
しゅんと縮こまった響は、それを粛々と受け止めるほかなかった。




