11 初めてのデートでお買い物
「花菜、これ着てみてよ」
「えっ、また……」
百貨店の中の量販店、二人はアパレルショップへと足を踏み入れていた。
響はフリルの着いたトップスや合わせたスカートなどを積極的に花菜に着せようとしてくる。
これで4着目になる。
それなりにセンスがあるのか、店員にも流行などを聞きながら着せ替え人形にされていた。
「かわいいのを花菜に着せるの……楽しいって気付いちゃった……。私には絶対に似合わないもの」
「響ちゃんも似合うと思うよぉ。ガーリー系というか、フェミニン系が似合いそうだけど……」
美人な響であれば、大人なファッションも着こなしてしまいそうだと感じた。
「花菜が言ったような服も持ってることは持ってるけど……」
「えーっ、なにそれ見たいっ!」
花菜は思わず心の底からの声が零れた。
今の活動的な姿の響も新鮮で非常にいいのだが、いろいろな姿が見られるに越したことはない。
「家族に言われて持っておいた方がいいって言われて持ってるだけで、ほとんど着ないよ……。そんなことより、今は花菜! 私のことはいいからいいから、さぁ着替えて着替えて」
反論は流され、試着室へと連行されてしまう。
日頃なら母に言われても勧められた服の試着など然程しないのだが、今は惚れた弱みなのかされるがままになっていた。
試着室で袖を通して、カーテンを開けると響の前に立つ。
「うん、やっぱりかわいい。かわいいね、花菜」
先程から、響はこの調子で花菜を褒め倒していた。
好きな人に可愛いと褒められるのは、一等嬉しくはあった。
そして、それと同じぐらい恥ずかしかった。
こういう機会でもなければ滅多に買わないので、手頃な値段ではあるしこのまま買ってしまおうかとすら思う。
響が店員なら、非常に優秀だ。
「私ばっかりズルい……。響ちゃんが着てるのも見たい……」
「私? 私は適当なの見繕って、サイズが問題なかったらそのまま買っちゃうだけだから……」
響は服に頓着しないタイプらしい。
だが、それでも見目麗しく見えてしまうのだから綺麗な人はお得だなと花菜は感じる。
「それにしても……」
響から何かしら訝しげな視線を感じる。
「なに?」
「花菜って……結構……あるね?」
響が自分の胸元を手をやりながら言葉を紡いできた。
「…………!!」
突然の言葉に花菜は息を飲むような声をあげ、自分の胸元を隠す。
花菜は日頃目立たないように心掛けてはいるが、胸部に関しては同年代の女子の平均より少し……いやかなり上回っていた。
対して、響はスレンダーな体型である。
「な、なにをとっ……突然⁉」
「いや、前々から思ってはいたんだよ?」
「思ってたのぉ⁉」
衝撃の事実を前に思わず声が上ずる。
「持つ者として苦労はあると言うけど、持たざる者としてやはり思うところはあるというか……」
「どういう感情なの……」
噛み締めるような響の言葉に、花菜は戸惑いが募る。
「女子だって、神秘に興味はあるよ……」
「ええっ……そんなものなの……?」
花菜は自身の立場上、軽々に同意はできない。
だが、それが一般的なことなのかも分からないでいた。
「花菜は持つ者だから、分からないんだよ!」
「響ちゃん、さっきから唐突に主語大きくない?」
響が先程から持たざる者代表のような顔で語りかけてくる。
「それに今の私は恋人なんだから、ワンチャンないかなって思ってはいるよ」
「なにが⁉」
「神秘に触れさせていただけないかなって……」
「ダメだよ⁉」
「ダメかぁ……」
響は心底残念そうな顔で、それでも諦めきれないような視線を花菜の胸部へと向ける。
「大体、大きくてよかったことなんて一つも無いよぉ……」
「大丈夫、私が今興味津々だよ!」
「えーっ……それはっ……えーっ……」
好きな人に興味を持ってもらえるの嬉しいことなのだが、花菜は何かが違うような気がしてしまっていた。
「大体……成長期で背が伸びるのかと期待してたらそのまま止まって、何故かここばっかり大きくなってさ……。直ぐにサイズ変えないといけなくて大変で、何度も買い換えないといけなくて……いたたまれなかった……」
「おぉ……これが持つ者特有の苦労……」
花菜は本気で語っているのだが、何故か響は感銘を受けたかのような顔をしている。
「というか響ちゃん、なんでそんなに嬉しそうなの?」
「拝聴致しました」
「ありがたいお言葉じゃないよ⁉」
響は説法でも聞いたかのように、花菜を拝みだした。
響が嬉しいと花菜も嬉しいはずなのだが、今はなにかが違う気がしてきていた。
「私も学校なんかだと失礼かと思って、極力視線は向けないようにしてたんだけど……。こういう距離感だと、やっぱり気になる……」
「確かに結構視線は分かるけど……」
花菜でも不躾な視線もチラチラとした視線も、それなりに分かるものだ。
だが、今の響ほどガン見されることはない。
「花菜さん、こちらに体型が強調される服が……」
「着ません!」
花菜はこればかりはと否定した。




