鼓動
私事ながら、毎度新たなシリーズを書いては失踪していますが、今回は高校卒業までに何としても完成させたいと思います。三日に一回くらいで更新できるよう努力します。
努力はします、努力は。
「我が国は、生命と力の神にしてこの世の創造神、ススヴに祝福を受け繁栄を享受している」
兵長お決まりの枕が始まった、とウィリアムは思った。もちろんウィリアム自身もススヴ教信者として、この教えを忘れたことは片時もない。しかし毎日のように聞かされては気も滅入るというものだ。
「おい」
ウィリアムは洗練された隊列からできるだけはみ出ないよう、そして兵長にバレないよう敬虔な信者のアレクサンダーに話しかけた。
「なんだ、大人しく話を聞け」
「いいじゃん、どうせいつも同じことしか言わないだから。次はお馴染みの決め台詞だぜ」
聞いてろよ、という顔を隣の同僚に向ける。
「国王の導きは神の導き。よって国王直々に指揮を執りそれに従う我々は神の軍だ」
全てを見通したような表情を浮かべ、わざと上げた口角見せつける。
「ほらな」
「兵長、朝礼中恐れながら申し上げます」アレクサンダーは無視して芯の通った声を出した。
「なんだアレクサンダー上等兵、発言を許可する」
俺が同じようにしたら怒鳴りつけるくせに、とウィリアムは心の中で悪態をついた。
「はい、隣のウィリアム一等兵が腹痛を起こしています。彼は兵長のお言葉を遮らんと必死に耐えていましたが、既に限界を迎えている様子です」
ウィリアムは当惑し、アレクサンダーを睨みつける。
「おい、アレックス」
「彼が厠へ行くことをお許しください」
「そうなのか、ウィリアム一等兵」
ウィリアムはアレクサンダーに抗議したい気持ちと、兵長に口答えすると面倒なことになるという気持ちに板挟みになり、何も言えなかった。
「どうやら言葉も発せないほど切羽詰まっているようだな」
兵長の言葉に、何でもないはずの胃がむかむかしてきた。
「いいだろう、許可する。その代わり隊列の中や厠への道中で粗相を犯さないように」
俺たちは掃除してやんねーからな、と遠くから聞こえてきた。それに呼応するように、周りの兵が一斉に笑い出した。
「静かに! 朝礼の続きだ」
兵長の号令を皮切りに、精鋭軍人が成す列はこれまた一斉に音一つない空間を作り出した。
人をかき分けて歩くウィリアムは、無意識に拳に力が入っていることに気づき、道中で二、三度唾を吐いた。
ウィリアムは便座に跨りながら両親の写真が入った懐中時計を見て、朝礼が終わるまで出ないでおこう、と思った。
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