エイリアンの証明
「ねーねー、この頃ホットなうわさ知ってる?」
「何なに、またUFOとかエイリアンとかそういうアレ?」
「えー何その言い方、言っとくけど今度のネタはマジだからね?」
「はいはい、通学途中のヒマな時間にとっておきの話題ってワケね……そんで?」
「実は……俺らに外見そっくりのエイリアンが、銀河系外の星からひそかにやって来て、この星に潜伏してるんだって!」
「あたしらそっくり? 見た目にきときとの『スライムみたいな水色の頭に、黄色くて長い十本足』とか分かりやすい見た目じゃなくて?」
「そうそう、俺らそっくりのエイリアン! 二本ずつの手足、両手の指はすらりと十本、もちろん両足にも同じ数! 目はふたつ、鼻はひとつに口がひとつ……、」
「分かったわかった、要するに本当にあたしらそっくりの見た目なワケね……でもそんじゃあどうするの? そのエイリアンはこの星を乗っ取ろうとしてるワケでしょ?」
「そーそー、今この時もすぐそばを歩いてて、急に襲いかかって来るかもよ?」
「やー、恐いこと言わないでよ! なんか見分ける方法ないのー?」
「血が赤い」
「…………は?」
「だからさ、血が赤いんだって! それはもうこの星の『ユラィバベリー』のフルーツソースのごとく、鮮やかに……」
「わー気持ち悪ー!! 血が赤いってマジエイリアンー!!」
「おお、お前大丈夫か!? なに、そんなコーフンしたの……ヤバいぞ、鼻血出てきたぞ!!」
彼氏があわてて学生服のポケットを探ってティッシュを取り出し、小袋ごとそれをさし出す。彼女はたらりと垂れた血を「ありがと」とつぶやきそれでぬぐう――それは鮮やかな青い血を。
(おいおい、本当に血が青いのかよ……まるで『地球のブルーベリー』の色じゃねえか!)
内心でそうつぶやいて、学生カップルのそばをそ知らぬ顔で歩きつつ、『この星へやってきた侵略者』……赤い血の人間が、隠し持った凶器を今にも振りかざそうとしていた――。
(了)




