第二話③
(何で……、何でみんな、私の車に乗っているの? こういうときって、事務所の車とかで移動するんじゃないの……? 新車なのに……)
助手席には青木さんが、後部座席には真黒さんと社長が乗っている……。
「うわ~、車に乗るのなんて久しぶりですね、テンション上がっちゃいますぅ」
青木さんが言った。
「そうだな…、前に乗ったのはパトカーだっけ? 乗り心地が悪いんだよなぁ~」
真黒さんが言った。
「え、パトカー?」
私が尋ねると、青木さんが答えた。
「あ、捜査協力ですよ~、逮捕されたとかじゃないですよw」
「おい、てめえ、じじい! 俺の煎餅を全部食うんじゃねぇ!」
真黒さんがそう言って社長を殴ろうとした。しかし、すり抜けた……。
(え、どういうこと?)
「あの~、社長さんって……、何なんですか?」
私は青木さんに尋ねた。
「あぁ、社長は真黒さんの誓約霊なんです。誓約霊というのは、『シャーマ○キ○グ』でいうところの『阿○陀丸』のようなものです。霊感が弱いと見えないので、永後さんは霊感が強いのだと思います」
(霊体なの!? でも、何で煎餅を食べられるの……?)
社長はボリボリと煎餅を食べていた。たくさんのカスをこぼしながら……
(新車なのに……)
「社長が何かを食べるのは、霊力を補給するためだそうです」
青木さんが言った。
(そういうものなの? 新車なのに……)
私は煎餅を食べ散らかす社長をミラー越しに睨んだ……
社長は、ミラー越しに私と目があい、頬を赤らめた………
「あ~、社長! 私にも煎餅くださいよ~」
青木さんがそう言って、社長から煎餅を3枚取り上げた。
(あなたもなの!? あなたも食べ散らかすの……?)
そんなこんなで中学校に着いた。
「もう、日が沈むな……、午後4時44分も過ぎちまったし…… 今日はとりあえず屋上を見て、AかBに話を聞きたいんだが……」
真黒さんが言った。
「そうですね……、琵偉くんは話を聞ける状態ではないので、栄くんの家に行ってみましょう」
私は学校に入る許可をとってから、栄くんの家に連絡を入れた。
屋上に着くと、真黒さんが調査を始めた。
「ん~、何も感じないな。じじい、何か感じるか?」
「ん~、…… ……… ……… …何も感じない……」
社長はしょんぼりしていた。
10分くらい屋上を調べた後、私達は栄くんの家に向かった。
家に着くと、栄くんのお母さんが歓迎してくれた。
「先生、ありがとうございます、わざわざ来てくださって」
私達は部屋へ案内された。
部屋に入ると、栄くんは布団にくるまりながら震えていた。
「……先生! みんなは、琵偉は? 海は? 」
「大丈夫、先生が必ず何とかするから…… だから、知っていることがあれば、教えて欲しいの」
栄くんは、しばらく黙った後、ぽつりぽつりと話し始めた。
「僕たち、あの噂が本当かどうか、調べていたんです。」
(やっぱり、『赤い服の少女』の噂を試したのね……)
「でも、僕や琵偉がやったときは何も起きなくて…… 海だけが、海だけが………いなくなっちゃったんです……」
栄くんは泣きながら、そう答えた。
「海が屋上に向かったとき、僕と琵偉は教室で待っていました。20分くらい教室で待っていると、階段を駆けおりる音がしたので、てっきり海が戻ってきたと思ったんです。でも、誰もいませんでした……」
栄くんの目には涙が溢れていた。
「その後、僕と琵偉を呼ぶ海の声が聞こえてきた気がしました…… でも、どこを探しても海は見つからず……」
「……屋上には探しに行ったの?」
私は尋ねた。
「はい、屋上にも行ったんですが、どこにも見当たらなかったんです。だから、1人で帰ったのだろうと思い、僕たちも帰ろうとしたんです…… すると、僕のスマホに海からメッセージが届いたんです……」
「メッセージ?」
私が尋ねると、栄くんはスマホの画面を見せてくれた。
『お前ら、どこ!にいィるんだ? 早く@出て▽■₩$き彌譁?ュ怜喧縺』
(何これ、文字化け?)
「見せてみろ」
真黒さんが私からスマホを取り上げ、そのメッセージを食い入るように見た。
「なるほどな……」
「え? 真黒さん、何か分かったんですか?」
私が尋ねた。
「ああ」
真黒さんは、そう言うと自分のスマホで何かを調べ始めた。
「4日後の午後4時40分に、あの屋上へ出る扉の前に集合だ」
真黒さんはそう言って、部屋を出て行った。
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