第十話⑳
第十話は、視点が切り替わりながら話が展開します。
今回も緑原橙子です。
あれから1か月が過ぎた。
「そ、そうなんですね……。毎晩の心霊現象に悩まされていると……。た、大変お辛い思いをされましたね」
私は、探偵事務所で受付をしていた。
「伶王さん、この件をお願いできますか?」
私は、伶王さんに尋ねた。
キングだった伶王さんは、今、探偵事務所に居候している。「世界を創り変えること」は諦めていないらしい……。しかし、日々の生活費に困っているため、探偵事務所で働いている。ここ以外でも、アルバイトを掛け持ちしているらしい。
「え~、俺? あかりちゃんがやればいいじゃん?」
伶王さんがやる気が無さそうに言った。
「青木さんは、資格試験の間近で今は勉強が大変なんです!」
私は、そう言った。
「え~、でもな~」
伶王さんがそう言うと、彼の誓約霊の奈津紀さんが言った。
「レオくん! お世話になっているんだから、快く引き受けなきゃだめでしょ!!」
「は、はい! 奈津紀ちゃんのためなら…… ぜ、是非やらせていただきます!」
伶王さんはそう言うと、奈津紀さん、依頼主と共に事務所を出て行った。
(あれは……完全に尻に敷かれてるな……)
私は事務所の窓を開けた。
秋の日差しが心地よく降りそそぎ、涼しい風が室内に吹き込んだ。
「あ、combineじゃん」
お客さんが帰った後に、テレビを点けて見ていた麗亜さんが言った。
「combineの所属事務所は、来年、ワールドツアーを開催することを発表しました。それでは、combineのリーダー、『トール』さんのコメントです……」
アナウンサーの女性が原稿を読み上げ、徹さんの記者会見での映像が映し出されていた。
「え~、私、二松川徹率いる『combine』は、この度、念願だったワールドツアーを開催する……」
「え~、ハリスじゃないの~」
「レノンを出せ!!」
「リンゴ様は、どこ~」
「お前、誰だよ~」
会見場にファンもいるのだろうか……。徹さんに向けて、ヤジが飛んでいた。徹さんは、泣いていた……。
(あらら……)
「へぇ~、ワールドツアーかぁ~。ヒーローオタクなのにね。流石だな、あいつ……」
麗亜さんの言葉に私は微笑んだ。
「そう言えば、真黒さんは、いつ帰って来るの?」
麗亜さんが、私に尋ねた。
真黒さんは、あの時、完全に息を引き取っていた。しかし、みんなの力を合わせることで蘇っていた。
あの後、すぐに駆けつけた、青木さん、徹さん、そして伶王さんが、全ての霊力を私に預けてくれた。彼らの霊力のお陰で、私と麗亜さんの治癒能力は大幅に上がり、その結果、私たちは真黒さんを蘇生させることに成功したのだ。
「う~ん、警察の捜査に協力しているからね……。明日には、帰って来るんじゃないかな……」
私がそう答えると、麗亜さんがニヤニヤしながら言った。
「あの時の返事、まだもらってないんでしょ?」
「あ、あの時って……」
私は耳が真っ赤になっているのを感じた。
「へっへっへ~、『真黒紅白を愛している』って、言ってたじゃん?」
私は麗亜さんのその言葉を聞いて、急激に顔が真っ赤になっているのを感じた。まるで、ヤカンが沸騰するかのように……。
その時、階段を駆け上がる足音が聞こえた。
ガチャ
事務所の扉が開くと、そこには青木さんがいた。
「たっだいま~ ん、あれ……橙子さん、顔が赤いですよ。どうしたんですか?」
「な、な、な、なんでもないんです……」
私がそう言うと、麗亜さんはまだニヤニヤしていた。
「あ、ズルいですよ~! 2人で内緒話ですか~?」
青木さんがそう言った。
「い、いえ……そ、そ、そんなことでは……」
私がそう言った。
「あかり…… あなたは、そんな場合ではない……。今日は、資格試験に向けて、過去問を完璧にするのよ!!」
青木さんの誓約霊のマリアが言った。
(なんか、教育ママみたい……)
「え~ん、マリアったら毎日こんな感じなんですよ~。2人とも、助けてくださいよ~」
青木さんが泣きべそをかきながら、そう言った。
「ハハハ……」
麗亜さんが笑う。
「ウフフ……」
私も笑顔になる。
私たちは、また日常に戻った。
真黒さんがいる……
青木さんがいる……
麗亜さんがいる……
みんながいる……
そんな大切な日常に……
完
本当に最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よろしければ、評価をお願いいたします。
読んでいただけた皆さん、本当にありがとうございました。皆さんのお陰で、無事、最後まで書き切ることができました。





