第十話⑲
第十話は、視点が切り替わりながら話が展開します。
今回も緑原橙子です。
ナイトが放った無数の青いオーラは、マリアによって大部分が撃ち落とされた。残ったものは、徹さんの「パーフェクト・ディフェンス」によって防がれた。
キングは脇腹を吹き飛ばされ、その後ナイトに蹴り飛ばされた。そのため、青木さんの近くにキングが倒れていた。私は迷ったが傷ついた人を放っておけない思いがあり、キングの元へ行き、彼を治療した。
マリアは何度も無数の青いオーラを放ち続けた。徹さんも誓約霊の啓さんを呼び出し、衝撃波を放ち続けた。
しかし、そのいずれもが、ナイトの「パーフェクト・ディフェンス」によって防がれてしまった。
「ハーハッハー、無駄だよ……。いくら攻撃してもこの結界は破れない……。『トール』だっけ? いや、『ハリス』……、あんたがよく分かっているはずだ……。どんな攻撃も、この結界には通用しないということを!」
ナイトが言った。
(な、なんで、言い直したの!? 最初の名前で合っていたのに……)
私は徹さんをチラッと見た。
徹さんは、やはり涙を流していた……。
「教祖様の力があれば、『テロス』を進め、この世界に終焉を迎えさせることができる。我々の崇高な考えを理解できないような世界は、終わらせるしかない……創り変えるしかないんだよ!! 君たちは、その礎になるのだよ…… 光栄に思うがいい……」
ナイトはそう言うと、再び青いオーラを放ち始めた。
(く…… どうすれば良いの…… このままでは、防戦一方でしかない……)
その時、真黒さんが巨大な霊気弾を放った。
メキメキ……
メキメキメキ……
メキメキメキメキ……
床の大理石を巻き上げながら、真黒さんの霊気弾がナイトを襲った。しかし、ナイトは「パーフェクト・ディフェンス」によってそれを防いだ。しかし、真黒さんは、霊気弾の影に隠れて、ナイトに接近し、「パーフェクト・ディフェンス」に向けて、最大限の力を込め右手でパンチを放った。
「フフ……、無駄だよ……。君の仲間の『パーフェクト・ディフェンス』は、全ての攻撃を防ぐことができる……。そんな攻撃は、何の意味もないんだよ!!」
ナイトが言った。
真黒さんのパンチが「パーフェクト・ディフェンス」にぶつかる。激しい衝撃音が鳴り響いた……。
(やっぱり、徹さんの『パーフェクト・ディフェンス』には、攻撃が通じない……。ど、どうすれば……)
私がそんなことを考えていると、「パーフェクト・ディフェンス」に皹が入った……。
ピキ……
ピキピキ……
ピキピキピキ……
パリーン……
「パーフェクト・ディフェンス」が割れた……。
真黒さんは、すかさず左手でナイトを殴った。
「ヴォー、ピギー!」
ナイトは変な声を上げて吹き飛ばされた。そして、玉座の後ろにあった窓を突き破り、下に落ちて行った。
「だ、駄目! 奴を逃がしては! 奴には時間を戻す能力がある……」
マリアが叫んだ。
「なるほどな……『じい』、行くぜ!」
真黒さんは、何かを決心したようにそう言い、割れた窓から飛び降りた。
「了解、最後まで付き合おう……」
じいはそう言うと、真黒さんと同様に飛び降りた。
(ま、まさか、真黒さんは死ぬつもりでは……)
青木さんと徹さんは割れた窓から下を覗き込んでいた。
「橙子、急ごう……真黒さんの息があれば、私たちで治療できる」
麗亜さんが言った。
私は頷き、1階に急いだ。
私達が3階にいるとき、外で爆発音が聞こえた。
(お、お願い…… 間に合って……)
しかし、私達が1階に着き外に出たときには、真黒さんは地面に横たわっており、「じい」さんの右足は消えかかっていた。
真黒さんの近くには、大きなクレーターが出来上がっており、その中心に黒焦げになったナイトが倒れていた。
「橙子、諦めるな! 真黒さんを絶対に助けるんだ!!」
麗亜さんが言った。
「うん……絶対に助ける、絶対に諦めない!!」
私はそう言って、真黒さんの手を強く握った。
緑色の光が辺り一帯を包みこむ……。
「……と、橙子か?」
真黒さんは、目が見えていないようだった。
「ま、真黒さん……い、意識が……」
私がそう言った。
「橙子…… 俺は自分の生命力を使って、奴の『パーフェクト・ディフェンス』を打ち破った……。そして、最後の力で奴に霊気弾を放った……。だから……俺の生命力は……もう……」
真黒さんが、最後の力を振り絞るように、そう言った。
「ま、真黒さん……、死んじゃ嫌!! わ、私……、あなたのお陰で、勇気を持てた……。自分に自信が持てた……。あなたの探偵事務所で働いた日々は本当に楽しいものだった……。私はあなたと出会って自分を変えることができたの。だから…… だから…… あなたが好きなの…… 私は…… 私は、真黒紅白を愛しているの…… ずっと、ずっと……好きだった……」
私は、自分の気持ちを正直に伝えた。私の目からは涙が溢れていた。
「……ありがとよ、橙子。俺にとっても、お前は大切な……大切な……」
真黒さんがそう言うと、彼の全身の力が抜けた……
「い、嫌ー!!」
私の叫び声が、虚しく響いていた……。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。





