第十話⑰
第十話は、視点が切り替わりながら話が展開します。
今回は江月奈糸です。
5年前、俺が「光の教団」の本部を訪れると、既に「教祖様」の霊はいなくなっていた。しかし、両親の霊がそこにいたため、俺は2人と誓約した。
その後、俺は「教祖様」の霊の行方を探した。そして、ついに見つけることができた。だが……「教祖様」は既に他の人間と誓約していた。それがキングだった。
俺は「白き光」に入り、「教祖様」と誓約するチャンスを窺っていた。そして、今回の戦闘でそのチャンスが訪れた。しかし、邪魔が入ったので、体制を立て直すために時間を戻した。
俺が戻せるのは、最大で48時間、1日で3回が限界だった。
俺は今朝、既に1度時間を戻していた。牛丼屋で食券を買うときに、誤って「カレーライス」のボタンを押してしまったのだ。俺の胃袋は完全に「牛丼特盛」を求めている……。しかし、店員さんに間違ったことを伝えるのも恥ずかしいし、申し訳ない……。だから、俺は時間を戻した。「牛丼特盛」は最高だった。
儀式の塔で時間を戻した直後
俺は腕時計を確認した。
(戻したのは10分か……)
キングとの戦闘中で咄嗟だったため、時間を戻すのが10分になってしまった。しかし、それで十分だった……。
俺以外の人間は、この10分間の記憶は失われている。誓約霊も同様だが、かなり強大な霊力を持つ場合、例外もある。だが、それはそれで問題がない……。あの場でその条件に当てはまるのは、「教祖様」だけだろう……。俺は、「教祖様」の能力を知ることとともに、「教祖様」に俺が「完全な存在」であることを知らしめる目的があった。
俺は、教祖様がキングではなく今後俺と誓約すると確信していた。なぜなら、教祖様の霊力は強大過ぎるため、完全な存在でなければその力を最大限に発揮することができないからだ。
俺は、儀式の塔の1階に戻っていた。あの探偵との戦闘の直後だった。探偵の霊気弾によって、俺が倒された後だ。
俺は、これからどうやって、キングを攻略するか、やられたフリをしながら考えていた。しかし、どう足掻いてもキングを倒す方法が見つからなかった……。その時、探偵の誓約霊の犬が戻ってきた。「ゴッド」を連れて……。
「ゴッド」と探偵の誓約霊のじいさんが対峙すると、彼らはじゃんけんを始めた……。
(え、大丈夫? 探偵が死んじゃうんじゃない?)
俺は敵のことながら、じいさん達の無関心さに、探偵のことが心配になってしまった。じゃんけんは50回くらい行われただろう……。
そして、じいさん達の会話が聞こえてきた。
「さ、佐藤神太郎…… お前さんは?」
ゴッドが尋ねた。
「は、白城はくじょう……『寿限無寿限無、五劫のすり切れ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助』と呼んでくれ」
(え、あのじいさん…… 有名な『寿限無寿限無、五劫の』……何だっけ? しかし、誰もが知っている名前だ。そんな有名人に、こんなところで会えるとは!! ヤバい……サインが欲しい……)
それから、彼らが握手をすると、眩いばかりに輝き出した……。
「「じじいとじじいのレボリューション!!」」
2人がそう言うと、2人の身体が1つになり、1体の霊に融合した……。そして、今まで感じたことがないほどの強大な霊力を感じた……。
(な、なんだ……この霊力は……!? とてつもなくデカい!!)
俺はその霊力の強大さに驚いたが、同時にある考えが浮かんだ……。
(そ、そうか! この霊力であれば、キングを倒すことは可能だ…… フ、フフ……)
俺は、奴らにキングを倒すことを任せることにした。
(奴らがキングを倒し、その隙に俺が『教祖様』と誓約する…… 自分の力を費やすことなく目的を達成できる……)
俺は笑いが止まらなかった……。しかし、奴らに気付かれないように、声を殺して笑い続けた……。
「フ、フフ……フ、フフ…… フゴッ」
(や、ヤバい……『フゴッ』が大きな音になってしまった……)
「ん…… ブタか?」
探偵が言った。
(や、ヤバい、気付かれる……)
焦った俺は、ブタの鳴きマネをした。
「ブ……ブヒー、ブヒー」
「なんだ……やっぱり、ブタか……」
「紅白、本当のブタは「ブヒー」って、鳴かないんだジョ。『ブヒヒン』みたいな感じなんだジョ。因みに、俺達、フレンチブルドッグも鼻を鳴らすジョ」
誓約霊の犬が言った。
「な、何……!? じゃあ、今のは……」
探偵が言った。
(ヤバい…… 見つかって、また戦闘になったら時間がかかる。ここは上手く誤魔化して、さっさと、奴らに5階に向かってもらわなければ……)
「ブ、ブヒヒン……ブヒヒン……」
「なんだ…… やっぱり、ブタか、……」
「あ、間違ったジョ…… 『ブヒヒン』は馬だったジョ」
(おい、犬! なんてことをしてくれたんだ!!
俺もなんか違うと思ってたんだよ)
「な、何!? じゃあ、さっきのは馬の鳴き声……?」
探偵が言った。
「おそらく、そうだジョ。本当のブタは『ヴォー、ピギー』みたいに鳴くんだジョ」
(え、本当に? 今度は正しい情報? て言うか……、そもそも教団施設にブタがいる? 多分、馬はもっといないけど…… 仕方がない、ブタを貫き通そう)
「ヴォー、ピギー…… ヴォー、ピギー」
「なんだ……、やっぱり、ブタだったな……。そろそろ、先に進もう。ブルー、皆がどこにいるかは、わかっているのか?」
「勿論だジョ。案内するジョ」
そう言うと、奴らは儀式の塔へ向かった。
(フゥー…… やっと、行ったか……。俺も頃合いを見て、儀式の塔へ向かおう……)
しかし、俺には気になっていたことがあった。
(今回の『ブタの鳴き声の件』は必要だったのだろうか……)
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。





