第十話⑯
第十話は、視点が切り替わりながら話が展開します。
今回は、青木あかりの誓約霊マリアです。
私の名前はマリア・カーニー
戦地で生まれ、戦地で育ってきた。私の日常は争いごとばかり…… 私の両親は「家族以外の人間は全て敵だと思え」と私に教えてきた。
私は成人するとすぐに軍に入隊した。戦場での私は無敵だった。戦闘に出れば、敵兵を数多く倒し、いつも無傷で帰ってきた。いつしか皆が私を「戦場の聖女」と呼ぶようになった。「戦場の聖女」…… とても言いづらいので、みんな噛んでいた……。
私にとって、敵の兵士は人間ではなく、ただの「敵」……。だから、何の躊躇いもなく攻撃することができた。私は、平和な世界を築くため戦い続けた。
ある日…… 私は大好物の「カニしゃぶ」を食べた。生のカニを甲羅のまま、殻のままむしゃぶり尽くす「カニしゃぶ」…… しかし、鮮度が落ちていたのだろう……。私は食中毒になり、そのままこの世を去った……。
私は、悔いが残ったまま死んだ。「なぜ、もっと色々なカニをしゃぶらなかったのだろう……」 いやいや、違う違う…… 「平和な世界、誰もが幸せに生きれる世界」を築けないまま、死んでしまったことを……。
戦地での功績が讃えられ、私には立派なお墓が建てられた。時折、家族や戦友が訪れてくれていたが、誰もカニを持ってきてくれなかった。幽霊になっても……食べることか出来なくても…… せめて、カニが見たかった。
そんなある時、私のお墓にカニを持った1人の男が現れた。私はカニに大興奮した。そいつは「キング」と名乗った。しかし、カニに夢中の私にとって、キングにも、キングの話にも興味が湧かなかった。ある言葉を聞くまでは……。
キングは、私に「誰もが幸せに生きれる世界を創るために、協力して欲しい」と言った……。最も無念に感じていたことを、死んでからでも実現できると知り、私は彼に協力することにした。
目的を達成するためには、私に適合する生きた人間が必要だった。その人間と誓約すれば、私の力を増大させることができる。しかし、中々、その人間は見つからなかった。
キングから、適合者は日本人の可能性が高いと聞いていたので、私は日本語を勉強しながらその日を待った。
長い年月が過ぎ、私が諦めかけていた頃……、再びキングが私の前に現れた。「青木あかり」という女性を連れて……。私は、彼女と誓約し自由の身になった。そして、「クイーン」として、「白き光」に加わった。
それから、暫くして、私は「儀式の塔」で敵と対峙した。私達、「白き光」の活動を邪魔する存在……。国会議事堂前では油断したが、今回は容赦なく彼女の額を撃ち抜いた……。しかし……、私は戦地では感じたことがない感情になった。彼女は、「あかり」と親しい間柄だったようだ……。マインドコントロールされているはずの「あかり」の中に、迷いが生じていた。そして……、私の心の中にも……。
(あのような非力な少女が、本当に私達が倒すべき敵だったのだろうか……? あかりにとって、あの子は大切な存在だったのではないのだろうか……? )
私の中に、そんな疑問が浮かんでいた……。
その時、あかりがポツリポツリと話し出した……。
「と…… 橙子……さん…… は、わた……しの友達…… 大切な存在……」
(!!)
私は、ひどく後悔した……。マインドコントロールされているとはいえ、あかりは私の大切なパートナーだった。そのパートナーの大切な人を殺してしまった……。しかし、その気持ちをどうすれば良いか、今後どうするべきか私には分からなかった……。だから、私はあかりにこう言った。
「あかり…… キングの元へ参りましょう……。私達がしたことが、正しかったのかどうか、彼に尋ねましょう……」
あかりは静かに頷いた。
それから、私達は儀式の塔の5階へ向かった。
4階に着き、5階への階段を昇ろうとすると、4階で急に爆発が起きた。私達は、キングの身に何かあったのだと思い5階へ急いだ。
5階に着き扉を開けると、そこではキングとナイトが対峙していた。
(まさか、ナイトが裏切った……)
私は、そう考えるとナイトに向けて、攻撃をしようとした。しかし、急に空間が歪み始め、私達はその空間に飲み込まれた。
気が付くと、私はあかりの友人の橙子と戦闘をしていた……。
(じ、時間が……戻った……?)
私がそんなことを考えていると、橙子の誓約霊が私を羽交い締めにした。
(くっ…… さっきと同じ…… 確か……彼女はこの後自爆した……)
私はそう考えると、誓約霊の彼女に向かって思わず叫んでいた。
「止めなさい! 1度死んだ身とはいえ、自分自身を大切にしなさい!!」
私の叫びを聞くと彼女の力が緩み、私は解放された。
橙子も、誓約霊の少女も、そして、あかりも…… 私の叫びを聞き驚いていた……。
時間が戻ったことで、私は決心していた……。
私にとって、大切な人を悲しませたくない……
だから、橙子や誓約霊の少女を攻撃しない……
彼女たちは、私が今まで戦ってきた者たちとは違う……
大切なパートナーの大切な仲間たちだから……
「さあ、あかり…… 5階へ参りましょう……」
私がそう言うと、いつもの虚ろな目とは違う…… 光の灯った目で、あかりが頷いた。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。





