第十話⑭
第十話は、視点が切り替わりながら話が展開します。
今回はブルーです。
(くっ…… 何とか敵を倒したが、紅白が気を失ってしまった……)
俺は紅白の元に駆け寄り、様子を観察した。呼吸はしているが出血量が多い。そのため、このまま放っておけば、死んでしまうだろう。
「どうしたら良いジョ?」
俺は、同じ誓約霊のひいじいに尋ねた。
しかし、ひいじいは何も答えず、胡座をかいたまま紅白のことをじっと眺めていた。
(ひいじいは、どうしたんだ……。霊力を使い果たしたわけでもないだろうに……)
そう考えたとき、俺は自分の右の後ろ足が消え始めていることに気付いた。
(ま、まずい…… 紅白の命が尽きようとしている…… しかし、どうすれば……)
その時、俺はある臭いに気付いた。
(こ、この臭いは…… しかし、あいつは…… いや、迷っている暇はない。ここは、あいつに賭けてみよう)
俺は、急いで2階に続く階段に向かった。2階に着くと大きな扉があった。霊体である俺は、扉をすり抜けて中に入った。
中に入ると、正面の壇上には玉座のようなものがあり、「あいつ」はそこに座っていた。
「じいさん……」
俺は「あいつ」、紅白の誓約霊だった「社長」に声を掛けた。
「おお、ブルー…… お前もついに、ワシの握手会に来たのか……」
社長は、頭に段ボールの王冠をのせ、赤い毛布のマントを身に着けながら、そう言った。
「あ、握手会……ジョ?」
「ああ、そうじゃ…… ここに来てからのワシは、大人気だった。『ゴッド』と呼ばれ、毎日ちやほやされた……。『ゴッド、ゴッド、ゴッドワッショイ!』と会う人、会う人がワシを讃えてくれた。握手会も、大盛況だったんじゃ……。途中までは……」
社長の声は次第に小さくなっていった。
「しかし、なぜかは分からないが、握手会は途中で打ち切りになった……。それ以来、誰もワシに寄り付かなくなった……。誰もワシを褒め称えない…… 誰もワシを必要としなくなった。ワシは、また独りになってしまったんじゃ……」
「じいさん…… また俺たちのところへ戻って来て欲しい……ジョ。じいさんの力が俺たちには必要なんだジョ!!」
俺がそう言うと、社長は一瞬嬉しそうな表情をしたが、また悲し気な顔に戻り、
「しかし、『紅白っち』が何と言うか…… 1度、裏切ったワシを……」
「その紅白が大変なんだジョ! だから、じいさんの力が、『神』の力が必要なんだジョ!!」
「か、『神』……」
社長はそう言うと、満面の笑みを浮かべた。
「分かった……行こう。 この『神』が必ずお前たちを救おう」
社長は、段ボールの王冠とマントを脱ぎ捨て、俺と一緒に1階に向かった。
1階に着くと、倒れた紅白とその横で胡座をかいているひいじいだけがいた。
ひいじいは、俺たちに気付くと立ち上がり、社長と対峙した。お互いに身構える……。
(え、戦うの……? 真のNo.1じいさんを決める戦い?)
社長が右手を水平に横に伸ばす……
ひいじいも左手を水平に横に伸ばす……
ひいじいが左足を上げ右足1本で立つ……
社長が右足を上げ左足1本で立つ……
そして、2人とも「気をつけ」の姿勢になった……
「「最初はグー! じゃんけん、ポン!!」」
2人ともグーを出した。
「「あいこでしょ!!」」
2人とも、またグーを出した……。
「「あいこでしょ!!」」
2人とも、またまたグーを出した……。
それから10回じゃんけんをしたが、2人ともグーを出し続けた……。
(これは、もしや我慢比べ…… 先に『パー』を出せば、じゃんけんには勝てるが、我慢比べには負ける……)
2人のじゃんけんは50回以上続いた……。
(紅白…… 死んじゃう……)
「はぁはぁ……、お主……やるな」
ひいじいが言った。
「はぁはぁ……、そっちこそ……」
社長が言った。
「お主、名前は?」
「さ、佐藤神太郎…… お前さんは?」
「は、白城……寿限無寿限無、五劫のすり切れ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助と呼んでくれ」
(え、偽名……?)
「ほう……あの有名な……寿限無寿限無、五劫のすり切れ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助さんじゃったか……」
(いや、だから……偽名だって!)
「よろしく、『神ちゃん』」
「こっちこそ、よろしく『長助』」
2人は固く握手をした。
すると、2人が眩いばかりに輝き出した……。
「「じじいとじじいのレボリューション!!」」
2人がそう言うと、2人の身体が1つになり、1体の霊に融合した……。そして、その光が紅白を照らすと、全身の傷が癒え出血も止まっていた。
「ゲフッ……ゲフッ」
紅白が咳き込んだ。
(!! い、意識が戻った……)
「ぶ、ブルー…… なんだ……こいつは?」
紅白は意識を取り戻し、俺に尋ねてきた。
社長とひいじいの融合体……「ニューじじい」はくるくる回っていた。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。





