第十話⑫
第十話は、視点が切り替わりながら話が展開します。
今回も二松川徹です。
俺は、中央奥の階段を上がっていった。すると、階段を上がりきったところで、ビショップに会った。
「えぇ~! 早くない…… ちょっと、ちょっと…… 予定より早すぎなんだけど……」
ビショップは焦りながら、そう言った。
「す、すまん……」
俺は謝った。
「ちょっと待ってて…… 10分…… いや、5分でいいから…… 2階の準備をするから……」
ビショップがそう言うと、俺は了承した。
5分後
俺は2階の扉を開けた。
2階も1階と同じような造りだったが、左右の通路と奥の階段は扉で塞がれていた。壁には火の着いた無数のロウソクが等間隔で並んでおり、神秘的な雰囲気を醸し出していた。俺が入ってきた扉と奥の階段に通じる扉の左右には、それぞれ1本ずつ松明が置かれ、激しく燃え盛っていた。
(こんなに建物内で火を燃やして、スプリンクラーとか作動しないのか……?)
「やあ、トールさん…… 1階を突破するとは、流石だね…… でも、2階はそう簡単にはいかないよ……」
ビショップは、さっきのことはなかったかのように、そう言った。
(ビショップ…… 中々、切り替えの早い少年だ…… あなどれん……)
俺は、敵の能力が分からないため、念のため「亀吉」を呼び出し、球体のオーラの結界を張った。
(『パーフェクト・ディフェンス』であれば、やつの攻撃が何であろうが、防げるだろう……)
「へぇ~ すごいね。全方向からの攻撃を完全防御っていう感じかな…… でも、残念ながら、その能力だと僕には勝てないよ……」
ビショップがそう言い、誓約霊を呼び出した。それは、明らかに科学者という格好をした男だった。
「さあ、松戸才苑さん、その人が今日の実験台だよ……」
ビショップがそう言うと、松戸という誓約霊が邪悪なオーラを放ち始めた。
「啓さん! 先手必勝だ!!」
俺は啓さんを呼び出した。啓さんはベースを取り出し、演奏を始めた。
ヴィ~ン ドゥ~ン ドゥドゥドゥ-ン……
巨大な衝撃波が発生し敵に襲いかかる。
しかし……
パチンッ
衝撃波が途中で消えてしまった……。
(な、なんだ…… やつが何かを放って相殺したようには見えなかった…… しかし、何かをしたのは事実……)
「フフ…… やはり衝撃波だね…… 君の攻撃は通用しないよ……」
ビショップはそう言うとニヤリと笑った。
はぁ…… はぁ……
(な、なんだ……? 急に、息苦しくなった気がする……)
「フフ……気付いたようだね…… 松戸さんは空気を操る能力を持っているのさ。今、君の周りからはほとんどの空気が失われている…… 直接、君を攻撃しているわけじゃないからね。どんなに強力な結界を張ろうが、その周囲にしたことは防ぎようがないのさ」
(くっ…… 啓さんの衝撃波も空気を操作して防いだのか……。あの衝撃波は、啓さんのベースから出る音によって発生している…… 音は空気を伝わるから、俺と奴等の間にある空気を無にしてしまえば衝撃波は消える…… し、しかし、な、なぜだ……? だ、ダメだ…… 頭が上手く回らない……)
俺は酸欠のためか、頭痛や目眩を感じていた。
「さあ、トールさん…… 君が降参して僕たちの仲間になるなら、空気を元に戻してあげるよ…… 」
「くっ…… この最強ヒーロー、二松川徹を舐めるな!!」
俺はそう言うと、メガロボ松の腹部を開け1つのアイテムを取り出した。
「酸素ボンベ~」
俺は様々な場面を想定して、複数のアイテムをメガロボ松の体内に入れておいた。その1つが小型の酸素ボンベだった。これがあれば、3分間は呼吸ができる。新鮮な酸素を取り入れた俺は、脳をフル回転させた。
(俺の周りの空気を無くしても、『パーフェクト・ディフェンス』内の空気は無事だったはず……。奴と対峙したのは10分程度だった。通常であれば、空気が無くなるには早すぎる。しかし、俺は酸欠の症状に陥った。ということは、2階の空気が元々少ない状態になっていたと考えられる……。では、『なぜ、ビショップは平気でいられるのか?』 その答えは、おそらく……)
俺は、メガロボ松にこっそり指示を与えた。本当に倒すべき相手を攻撃するために……。
メガロボ松が入り口の扉を開けると、松戸が圧縮した空気の塊を放ち攻撃してきた。しかし、俺はパーフェクト・ディフェンスでそれを防いだ。メガロボ松は、無事に1階へ向かった。
(奴が攻撃してきたということは、俺の予想が正しいということだろう……)
松戸が更に攻撃を続けてきたが、パーフェクト・ディフェンスで防ぎ続けた。
「亀吉、いくぞ! 『ローリング・アタック』だ!!」
俺はそう言うと、「パーフェクト・ディフェンス」の球体のオーラを、アクアボールの要領で中から転がし始めた。
「1、2、1、2……」
コロコロ…… コロコロ……
(だ、ダメだ…… スピードが全然出ない…… 仕方がない……)
「啓さん! お願いします!!」
俺がそう言うと、啓さんはベースをかき鳴らし衝撃波を発生させた。その衝撃波が「パーフェクト・ディフェンス」の後方にぶつかり、球体のオーラは勢いよく転がり出した。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……
(す、素晴らしいスピードだ。前回よりも勢いが良い。だが……)
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……
(目が回る~)
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……
ドゴーンッ
「ぎぇし!」
ビショップは、変な声を上げながら吹き飛び、壁に激突した。奴の服が破れ、機械の体が見えた。
(やはり、ロボットだったか……)
その時、メガロボ松から連絡が入った。
『ターゲット、ゲキハ! ニンムカンリョウ』
その瞬間、松戸は消え去った。
(松戸と誓約していた人間は、ポーンの中にいた。この『ビショップ』も、そいつに操られていただけ……。これだけの技術を、なぜ正義のために使えないのか……)
俺は悲しい気持ちをこらえながら、3階に向かった。
3階に辿り着き扉を開けると……
そこには、ボロボロに傷つき血だらけになった緑原さんが倒れていた……
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。





