第十話⑧
第十話は、視点が切り替わりながら話が展開します。
今回も、只野人志の視点です。
(トールのお陰で、任務は達成したけど……退くべきか…… 戦うべきか……)
「ナイト、どうしますか?」
僕は、戸田さんに尋ねた。
「勿論…… 憎き探偵を前にして、何もせずに帰れないわ……。戦いましょう」
戸田さんが答えた。
戸田さんは、以前、真黒さんとの戦いに敗れている。その悔しさが強いのだろう。
「分かりました」
僕がそう言ったとき、真黒さんが直径5mくらいの巨大な霊気弾を怪獣に向けて放とうとしていた。
(えぇ~!? ひ、卑怯…… 不意打ちじゃん!?)
「蔵人さん、お願いします」
僕は、誓約霊の「桃根蔵人」さんに魔法の絨毯を描いてもらった。僕と戸田さんは、急いで怪獣から魔法の絨毯に避難した。
僕らが飛び移った瞬間、真黒さんが霊気弾を放った。怪獣は為す術なく、周囲の建物を破壊しながら吹き飛ばされ、消滅した。
魔法の絨毯がユラユラと地上に向かって下りていき、僕と戸田さんはアスファルトの上に降り立った。
「ひ、卑怯よ!!」
戸田さんは、真黒さんに向けて叫んだ。
「フッ、先手必勝というだろう……。それに、お前たちが、安全に飛び移ったのを確認してから撃ったんだぜ。地上に下りて来る間も攻撃しなかったじゃないか……」
真黒さんが言った。
(や、優しい~ 確かに、待ってくれていなきゃ、あの短時間で『絨毯を出して飛び移る』なんて不可能だよ……。下りて来るときも隙だらけになってたし……。でも、そういうのって、わざわざ言わなくて良いんじゃない? 暗黙の了解みたいなものだと思うけど……)
「まあ良いわ…… あなたには、私の手で直接復讐を果たしたかったから…… 『知心ちゃん』」
戸田さんがそういうと、彼女の新たな誓約霊「知心さん」が現れた。
「ルーク、切れ味の良い刀を出してちょうだい」
僕は、蔵人さんにお願いして、刀を描いてもらった。戸田さんが刀を受け取ると、真黒さんと対峙した。
(トールは戦意を喪失している…… 女子高生はサポート役のようだ。僕も戸田さんのサポートに回ろう)
2人がお互いに構え、じっと相手を睨み付ける……
僕たちに緊張感が走る……
先に動いたのは真黒さんだった。サッカーボールくらいの大きさの霊気弾を戸田さんに向けて放った。しかし、戸田さんは、瞬時にそれをかわし、真黒さんに刀で斬りかかった。真黒さんはそれを避けたが、かわした方向に戸田さんの追撃が入った。
ザシュッ
真黒さんの右腕が宙を舞った……
「くっ……」
真黒さんは苦しそうな声をあげた。
「ウフフフフ…… あなたの動きは、私にはお見通しよ……。知心ちゃんは『エンパス』……。あなたの心を完全に読み取ることができるの」
(え? それって、言わない方が良くない? 何で親切に教えてあげるの?)
そうこうしている間に、女子高生が緑色の光を放ち真黒さんの右腕を元通りにした。
真黒さんは再び霊気弾を放った。それをかわして、戸田さんが斬りかかった。また真黒さんの右腕が宙を舞った。そして、女子高生が腕をくっつけた……
真黒さんは三度霊気弾を放った。それをかわして、戸田さんが斬りかかった。今度も真黒さんの右腕が宙を舞った。そして、女子高生が腕をくっつけた……
(え…… 学習しないの? 何で同じことを繰り返すの? 馬鹿なの……?)
戸田さんは、肩で息をしている……。しかし、真黒さん達は、全く疲れを見せず霊力も減っていないようだった。
(ど、どういうことだ……?)
僕がそう思ったとき、おじいさんの霊が彼らの体に触れていることに気づいた。
(ま、まさか…… あのおじいさんが、2人に霊力を与えている? じゃあ、事務所を破壊しても意味がなかった……)
その時、真黒さんが4度目の霊気弾を放った。
「し、しつこい……」
戸田さんがそう言い、霊気弾をかわしてから真黒さんに斬りかかった。真黒さんの右腕が宙を舞い、トールの近くに落ちた。真黒さんの指が偶然にもトールのスマホのような機械に触れた。
「自動運転モードヲ開始シマス」
機械の音声が流れた。
パラパラ……
パラパラ……
たくさんの小石が落ちてきた……
(ま、まさか……)
僕が見上げると、メガロボ松が動き始めていた……。そして、前に一歩踏み出した。
プチッ
戸田さんがメガロボ松に踏み潰された。
(え? マジで…… 今まで、人が殺される描写って、なかったじゃない? ここにきて、急に『内臓が飛び出した』みたいなグロい描写をする? 確かに、『残酷な描写あり』になっていたけど……)
メガロボ松が足を上げると、そこにはペラペラになった戸田さんがいた。
(あぁ、良かった……。やっぱり『ギャグ』だった。安心した)
僕はそんなことを考えていたため、メガロボ松の振り上げた足が向かって来ていることに、気が付かなかった。
バッゴーン
僕は、メガロボ松に蹴り飛ばされ、海を越えていった……。
目が覚めると、僕はジャングルの中にいた……。そして……、メスのゴリラが僕を抱えながら走っていた。
こうして、僕のジャングルでの生活が始まった……。
(え? な、なんで、そんな展開になるの……? 『こうして……』じゃないって! やっぱり、僕の扱いって、ひどくな~い?)
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。





