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第十話⑥

暫くは、午後6時に投稿します。

第十話は、視点が切り替わりながら話が展開します。

今回も緑原橙子の視点です。

 私の目の前には青い光が猛スピードで迫って来ていた。


(だ、駄目だ…… ()けられない……)

私は眼を閉じて、死を覚悟した……。


しかし……


(あれ……? 何も起こらない……)


 眼を開けると、私の前には(とおる)さんがいた。徹さんが出したであろう球体のオーラの中に、私達2人は入っていた。


(これで、青木さんの攻撃を防いだのかな……?)


「フッフッフッ……、ヒーローは仲間のピンチに(あらわ)る」


(いや…… ピンチになる前に助けてよ……)


「これが『亀吉』の力…… 『パーフェクト・ディフェンス』だ!」



 けれども、青木さんの波状攻撃が続いていたため、徹さんの声は誰にも聞こえていなかった……。


「………… 緑原さん、ちょっと移動しようか。声がみんなに届く場所へ……」

徹さんは、しょんぼりしながらそう言った。


(あ、やっぱり…… 聞いて欲しいんだ…… 決めゼリフみたいだったからね…… でも……)


「い、移動って、どうやって……?」

私は徹さんに尋ねた。


「こうするのさ……」


私たちはアクアボールの要領で、球体のオーラを中から転がしながら前進した。


「1、2、1、2……」


コロコロ…… コロコロ……


私たちが進んでいたところは少し傾斜があったため、平地で転がすよりも進みやすかった。


(あ~、なんか楽しい…… ハムスターになった気分…… )


コロコロ…… コロコロ……


(懐かしいなぁ~ 小学生の頃にテーマパークのプールでやったなぁ)


 私がそんなことを考えていると、徹さんが(つまず)いて激しく転んだ。その衝撃で球体のオーラが勢いよく転がり出した。私たちを中に入れたまま……。雪玉が雪山を転がり落ちるように……。


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……


(ひ、ひぇ~ だ、誰か……と、止めて~)


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……


(キャー 目、目が回る~ )


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……


ドゴーンッ


球体のオーラは青木さんにぶつかった。


「ぐえふっ」

青木さんが変な声を上げながら、吹き飛んでいった。

まるで、ボーリングの玉が最後の1本のピンを弾き飛ばすように……。


私は、眼が回りフラフラしていた……


徹さんもフラフラしていたが、

「み、見たか…… 亀吉の『ローリングアタック』を……」

と言い……


バタンッ


倒れた……。


(ろ、『ローリングアタック』…… 完全に偶然なのに…… なぜ、すぐに技の名前を思いつくの……? え? もしかして、ゴロゴロ転がりながら考えてた……? )


「き、『キング』、ここは一旦、退()きあげるじゃな~い?」


「まあ、待て『ナイト』……。仕方がない…… これだけは使いたくなかったが……『奈津紀(なつき)ちゃん』」

キングがそう言うと、幼い少女の霊が煙のように現れた。


(あ、あれが……真黒(まぐろ)さんの妹の奈津紀さん……)


「フッ、奈津紀ちゃんには爆弾を作る力がある。議事堂を爆破したのも、その爆弾の力だ」


(な、なるほど…… 警備が厳重なはずの国会議事堂に普通の爆弾をセットできるはずがない…… しかし、誓約霊(プレッジ・スピリット)の力なら、それが可能になる……)


「そして、紅白(こうはく)…… その爆弾をお前の体内にもセットさせてもらった……」


「な、何!?」

真黒さんが驚いた声を上げた。


「約2週間前に、お前と再会したときだ……。そのときのお前は、誓約霊を連れていなかった……。だから、気付けるわけがなかったのさ……」


(ん? それって……)


「実の妹の手で殺されるがいい…… さあ、奈津紀ちゃん、起爆スイッチを押してくれ……」


「分かった、レオくん……。お兄ちゃん、幽霊になってまた会おうね…… バイバイ」

奈津紀さんは、そう言うとスイッチを押した……


しかし…… 何も起こらなかった……


「な、なぜだ……」

キングが驚きながら、そう言った。


カチ……カチ……


カチカチ


奈津紀さんは何度も起爆スイッチを押したが、何も起こらなかった。


「あ、あの~」

私はそ~っと手を挙げた。


「言いづらいんですけど…… 多分、私が治療したときに解除しちゃいました……テヘペロ」


私がそう言うと、キングは「目が飛び出るのではないか」と思うほどの驚いた表情をしていた。

奈津紀さんも……(以下同文)


「く、くそっ、覚えてやがれ~」

キングがそう言うと、ナイトは青木さんを抱え、キングと共に消えてしまった。


(『覚えてやがれ~』って言う人、いるんだぁ……)


「ハッハッハ、正義は必ず勝つ!!」

徹さんがポーズを決めながら言った。


「よし、俺たちも警察が来る前にズラかるぞ」

真黒さんが言った。


(え? ず、ズラかるって……)



私達は、六松の車?に乗り込んでいた。

来たときと、同じように猛スピードで飛行を始めた。

(やっぱり、帰りもこれなのねぇ…… いやぁぁぁぁ)


私の体や顔が歪んでいる気がする……。

内臓の位置が変わっている気がする……。

意識が飛びかけていた……。


2分後

私達は真黒探偵事務所に着いていた。


「はぁ……はぁ……」

(や、ヤバイ…… 亡くなったひいおばあちゃんがサンバを踊っていたわ……)



 こうして、私達は「白き光」の「革命」を防ぐことに成功した。


 国会議事堂は休館日だったため、人的被害はなかった。そして、コメディーなので翌日には元通りに修復していた。



 

 その後、私達が事務所で休憩していると、真黒さんの誓約霊(プレッジ・スピリット)のブルーちゃんが戻ってきた。「白き光」のアジトがどこにあるかを探っていたようだ。

 ブルーちゃんは、事務所に入ってくると、徹さんの誓約霊の亀吉に気付いた。


「か、亀だヨン…… 動物系の誓約霊は俺しかいなかったのにヨン…… 俺の…… 俺の個性を奪うなヨン!」


(『ヨン』も十分個性では……? あ、でも、無理やり作っているから、個性ではないのかな……) 


ブルーちゃんは亀吉に噛みつき、

「亀を噛め、亀を噛め……」

と言っていた。


(『ヨン』は、どこ行った……?)


ブルーちゃんは探索能力は超一流だが、戦闘向きではないため、亀吉にはダメージが全く無いようだった。(むし)ろ、亀吉は心地良さそうに見えた。


「それで、ブルー。奴らのアジトは見つかったのか……?」

真黒さんが尋ねた。


「ああ、勿論だ……」

ブルーちゃんがそう答えた。


(だ、だから……『ヨン』は……? え、もう忘れた……?)


「……ヨン」


(思い出した……、『ヨン』を付ける設定を思い出した!!)


 そんなやり取りをしていると……


ズシーン


ズシーン


「キャーッ」


「に、逃げろぉぉぉ」


外から地響きと悲鳴が聞こえてきた。

私が事務所の窓を開け、外を見ると……


そこには……


体長10mを越える1体の怪獣がいた……。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

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