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第十話①

最初に、よくある怖い話があるので、苦手な方は次の第十話②からご覧ください。

 この街には、「光の教団」と呼ばれる宗教団体があった。


 「光の教団」では、信者に対して厳しい教義を課し、外部との接触を禁じていた。教団の教祖様は、自身を神の使いと称し、信者たちに無条件の服従を求めていた。信者たちは、家族や友人との関係を断ち切り、団体の教えに従うことが最も重要だと教えられていた。


 団体の中では、「終末の日」が近づいていると信じられており、信者たちはその日に備えて準備を始めていた。教祖様は、特別な儀式を行うことで救われると主張し、信者たちはその儀式に自ら進んで参加した。




儀式の日

教団内の大ホール


教祖様が(おっしゃ)った。

「我々、『光の教団』は、この世界を救うため、本日から1か月間、『テロスの儀』に入ります。皆さん、準備は良いですか? 」


 みんなが思い思いの声を上げる。それが大きな歓声のようになった。まるで、人気歌手のライブ会場のようだった。僕も、僕の両親もその中におり、これから始まる儀式を待ちわびていた。


 「儀式の塔」に信者全員が移動した。儀式は1人1人別々に行わなければならない。そのため、それぞれに個室が与えられた。

 部屋は6畳くらいの広さで、トイレと水道、1(ひとくみ)の布団があった。天井付近に細長い窓があり、そこから外の光が差し込んでいた。台になるようなものもないため、窓から外の様子を(うかが)うことは出来なかった。


(いよいよ、今日から『テロスの儀』が始まるのか……)


 「テロス」は、ギリシャ語で「完成」という意味らしい。この「テロスの儀」によって、僕たちは不完全な存在から、完全な存在に生まれ変わる。


 館内放送が流れ、改めて儀式の説明された。


 儀式中は、メディアの使用が出来ず部屋から出ることは許されない。儀式が始まると外側から鍵がかけられる。

 朝、昼、晩に1時間ずつ瞑想の時間があり、食事は朝の瞑想の後に1回だけだった。それ以外の時間は自由だが、儀式の塔には何も持ち込めなかったので、暇潰しになるようなものはなかった。

 以前、教祖様が「自分と向き合うことが、『テロスの儀』では最も大切である」と(おっしゃ)っていた。



「それでは、只今より『テロスの儀』を始めます」

館内放送が流れ、儀式が始まった。




儀式が始まって1週間が経った日の夜


 僕が布団に入って眠れずにいると、部屋の扉をノックする音がした。


(誰だ……? こんな時間に……)


僕がそう思って扉に近づくと、女性の小さな声が聞こえた。

「……て ……すけて ……たすけて」


(たすけて!? 誰かが助けを求めている……早く何とか……)


僕はそう思った瞬間、気付いた。

(おかしい…… 儀式中は部屋から出れない。それに…… 何かあった場合には、緊急連絡用の電話を使うはずだ)


すると、扉をノックする音が大きくなった。


ドン、ドン、ドン……


ドアスコープなどがないため、外の様子を窺うことが出来ない。

扉の外からは、けたたましい女性の笑い声が聞こえてきた。


僕か震えながら後ずさりすると、ひんやりした何かに足を掴まれた。下を見ると、真っ白い手が僕の足を掴んでいた……。


「や、やめろ…… やめてくれ!」

僕は大声で叫び、必死で(もが)いた。しかし、僕の足を掴む真っ白い手の力が強く、その拘束から中々逃れることが出来なかった……。


 (しばら)くすると、今度は隣の部屋からうめき声が聞こえてきた。その声が聞こえてくると、僕の足を掴む力が弱まった。そのタイミングで僕は足を引き抜いた。


「はぁ、はぁ…… 何なんだ……一体……」


バン、バン、バン


 天井付近の窓から音が聞こえてきた。僕が恐る恐るそこを見ると、大量の人の顔がこちらを(のぞ)いていた……。


「う、うわあああああ」




(ん……、(まぶ)しい……)


朝日が僕の顔を照らしていた。僕は恐怖のあまり気を失っていたようだった。



 それから、毎晩、僕は様々な心霊現象を体験した。2週間過ぎた頃には、昼間でも多くの幻覚を見るようになっていた。心霊現象のせいで睡眠不足に(おちい)っていたためだろう。


 しかし、3週間を過ぎた頃には、次第に恐怖心が薄れていった。なぜなら、僕はこの状況に耐え抜くことが「テロスの儀」であると考えたからだ。普通なら、すぐに発狂してしまっていただろう。


 そして、1か月が経った。


 部屋の扉が開けられ、僕は「テロスの儀」を終えた。


そう、僕は「完全な存在」に生まれ変わったのだ。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

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