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第九話④

 俺たちが廃校に着くと、既に数台のパトカーと救急車が止まっていた。そこには、父さんもいた。


「しまった~、一足遅かったかぁ」

レオが言った。


 すると、父さんが俺に話しかけてきた。

「おう、事件は解決したぞ。被疑者を確保した。行方不明だった4人も全員無事だ。今回は、『高校生探偵』の出番はなかったな。家に帰って勉強しろ」


(ま、マジか~ 警察も優秀だったんだな……)


「なんか、肩透かしをくらった気分だな……」

俺がレオに向かって言った。


「仕方がない、今回は警察の顔を立ててあげよう」

レオはそう言ったが、その失望感は隠せていなかった。俺たちはしょんぼりしながら帰路に就いた。




「じゃあな」


「おう、また学校でな。来週、英単語テストがあるから、勉強しておけよ」

レオがそう言うと、俺は忘れていた英単語テストのことを思い出した。


(や、ヤバイ…… 家に帰って勉強しなければ…… 父さんの言ったように、帰って勉強することになるとは……トホホ……)




ガチャ


「ただいま~」


(あれ? 返事がない……)


 母さんは用事があるため外出している……。しかし、奈津紀(なつき)は昨日のこともあり、1人で留守番をしているはずだった。


(寝てるのかな……?)


 奈津紀の部屋を覗くも誰もいない。トイレや風呂場を探しても、奈津紀の姿は見当たらなかった……。


(ハハ~ン、どっかに隠れて、俺を驚かそうとしているんだな。フッフッフッ、俺をなめるなよ。高校生探偵の実力を見せてやるぜ!)


 それから、俺は家中を探した。


「奈津紀~」

 クローゼットの中も……


「なっちゃ~ん」

 ベッドの下も……


「奈津紀様~」

 ゴミ箱の中も……


「ボンバーなつき~」

 トイレの便器の中も……


 家の中のあらゆる場所を探したが、奈津紀の姿は見つからなかった……。


「奈津紀! もう降参だ! お兄ちゃんの負けだよ、だから出てきてくれ!」


 俺は大声で叫んだが、その声が(むな)しく響くだけだった……。


俺はこの時になって、ことの重大さに気付いた。


(これだけ探してもいない…… 奈津紀は警戒心が強い。誰かが来ても家に入れる訳がない…… だから、家にいれば安全なはずだった。じゃあ、どうしていないんだ……? これから、どうしたら良いんだ……? 父さんは取り調べ中だろう……。母さんも電話には出れない……)


 俺は、父さんと母さんにメールを送ってから、レオに電話をかけた。レオに奈津紀が行方不明なことを伝えると、すぐに俺の家に来てくれた。しかし、いつも冷静なレオが……この時ばかりは取り乱していた。


「どういうことだ!? 家にいれば安全だったんじゃないのかよ、紅白(こうはく)! 事件は……、事件は解決したんじゃないのかよ!?」


 正直なところ、俺は、これからどうすれば良いのか…… レオのアドバイスを、レオの推理を期待していた……。


「すまない……」

レオにそう伝えると、俺は家を飛び出していた。


奈津紀を探す当てがあった訳ではない…… 

レオの気持ちを考えると、あそこに居たくない気持ちがあった…… 

俺自身、何をすれば良いか分からなかった。しかし、何か行動していなければ不安に押し潰されそうだった……


奈津紀との思い出が走馬灯のように蘇る……


『お兄ちゃんが刑事になるなら、私は爆発物処理班に入るね』

俺も、奈津紀も、警察官を目指していた……。


 俺が当てもなく走り続けていると、あの「筋肉じじい」の地縛霊の家の前に来ていた。相変わらず、「フロント ダブルバイセップス」のポージングをとっていた。

 

俺は、そのじじいに尋ねた。

「小学生の女の子を見なかったか?」


 そのじじいは何も答えなかった。何も答えずに「サイドチェスト」のポージングをした。

 

 俺は誰でも良いから話を聞いて欲しかった。


「俺は、ずっと中途半端だった……。何事にも熱中したこともなく、努力をしたこともなかった。ただ、その日を楽しく生きれれば、それで良かった……。中途半端に生きてきたんだ……。だから、大切なもの……大切な人すら守れない……。なんなんだ! 一体、俺は、何をやってきたんだ……!? 何が、高校生探偵だ! 聞いて呆れる……」


「筋肉じじい」の霊は、「フロント ラットスプレッド」のポージングをしながら、しゅんとしていた。


「ありがとな、じいさん……話を聞いてくれて。あんたも、大切なものを守っているんだろ? この家を…… そのポージングで……」


 そのとき、俺のスマホが鳴った。父さんからだった。

「紅白…… 一旦、家に帰ってこい」


 俺は、素直に父さんの指示に従い、帰ることにした。レオに会わせる顔はなかったが、落ちついて冷静に考える必要があったからだ。

 俺が自宅に帰ると、父さんと母さんが出迎えてくれた。しかし、レオの姿は見当たらなかった。父さんと母さんが帰ってきた時には、既に家には誰もいなかったらしい……。


 俺たちは話し合いをした。その結果、父さんと俺が心当たりを探すことになった。母さんは、奈津紀がいつ帰って来ても良いように、家で待機することになった。夜になっても、奈津紀が戻って来ないため、父さんは警察に捜索願いを出した。俺たちは、夜通し奈津紀を探した。しかし、奈津紀は見つからなかった……。




3日後


あの廃校で……

奈津紀の遺体が見つかった……

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

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