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第九話③

誓約霊(プレッジ・スピリット)?」

俺がレオに尋ねた。俺たちは、公園内のベンチで話をしていた。


「ああ、『ジョ○の奇妙な冒険』でいうところの『ス○ンド』みたいなものだ」

レオが答えた。


「『式神』みたいなものか?」


「そういうものだな。うちの倉に古文書みたいな本があって、そこに載ってたんだ。『誓約霊には、誓約した人間の力を何倍にも増大させられる力がある。そして、誓約霊自体も強大な力を得ることが出来る』って」


「レオの誓約霊って?」


「ああ、こいつさ」

レオがそう言うと、小さなライオンのような動物が、煙のように現れた。


「これって……ライオン……?」


「いやいや、違う違う。うちの神社の狛犬(こまいぬ)様だよ……。守護霊や守り神とも誓約できるし、その辺の浮遊霊や地縛霊とも誓約できるんだ」


「何体でも誓約できるのか?」


「ああ、可能らしい……。(ただ)し、フィーリングが合わないとマイナスの効果を生むんだ」


「フィーリング?」


「同じような感性だったり、同じような境遇だったり…… そういうものが力を増大させるためには必要なんだ」


「なるほどな……」


 俺は、「誓約」を「恋愛」や「結婚」みたいなものだと思った。フィーリングが合えば幸せな家庭を築けるし、合わなければお互いに傷つけあい、別れてしまう……。


「それにしても、さっきの『口裂け女』が行方不明事件の犯人じゃないのか……?」

俺が冗談半分でそう言うと、レオが言った。

「そうだったら、事件解決だから良いんだけどな…… でも、違うだろうな……」


 俺たちは公園を後にし、現場周辺の聞き込みを行うことにした。しかし、今日も有益な情報を得ることが出来なかった。

 仕方がないので、俺たちは公園に戻り公開されている情報などを(もと)に考察した。すると、行方不明になった人たちには、共通点があることに気がついた。


①行方不明になったのは、小学生から高校生までで、成人している者は1人もいない。

②行方不明者たちの住んでいた4軒の家は、半径3kmの円で囲むことが出来る。

③行方不明になったのは、すべて帰宅途中である。


「なるほど……、半径3kmの円っていうのは、警察も掴んでいるだろうな」

レオが地図を見ながら、そう言った。


「だろうな…… 今夜、父さんに『鎌をかけて』みようか?」

俺がそう言うと、レオが答えた。

「ああ、宜しく頼む。今日は、暗くなってきたから、明日この円の中心付近を探ってみようぜ」

 



その夜


今日は、久しぶりに家族4人での夕食だった。

「父さん、例の行方不明事件の捜査は順調なの?」


「ああ、まあな」

父さんが素っ気なく答えた。


「行方不明になった人たちの家って、半径3km の円の中に入るんでしょ? その円の中に容疑者がいるんじゃない?」

俺は父さんに突っ込んだ質問を投げ掛けた。


父さんは、鼻の穴を大きく広げながら言った。

紅白(こうはく)…… お前、また探偵ごっこをやっているのか? 学生の本分は勉強だ。そんなことをやってないで、勉強しろ」


 守秘義務があるため、警察官は捜査情報を漏らせない。しかし、父さんは嘘や隠し事があると鼻の穴を大きくする癖がある。だから、警察は、半径3kmの円内で、行方不明者の居場所の特定や容疑者の絞り込みをしていると考えて間違いない。


「はいはい、分かってますよ」

俺がそう答えると、母さんが言った。


奈津紀(なつき)、どうしたの? 食欲がないの?」


 奈津紀は、夕食にまったく手をつけていなかった。いつもだったら家族のみんなが引くぐらいご飯をお代わりするのだが、今夜は1口も食べていなかった……。


「わ、私…… こ、怖いの……」

奈津紀は、そう言うと泣き出してしまった。


「ど、どうした…… 父さんが怖いのか?」

俺が冗談交じりに言うと、「空気を読め」という圧がかかった母の視線を感じた。


「私…… 今日の学校の帰りに、誰かに後をつけられていた気がするの……」

奈津紀は(うつむ)き震えながら言った。


「足音が聞こえるから、勇気を出して振り返ったの……。でも、誰もいない……。足音だけが、ずっとついてきて……。 行方不明事件の犯人がついてきたんじゃないかって……、私も行方不明になってしまうんじゃないかって……不安なの」

奈津紀は大粒の涙をこぼしていた。


 しかし、この時の俺は楽観的に考えていた。なぜなら、俺の家は円の中に入っていなかったからだ。

「奈津紀、大丈夫だって……。さっき言った円の中に、この家は入っていないんだから。 犯人はこの近くにいないよ」


 俺は奈津紀を安心させるために、そう言った。普段の父さんだったら、「思い込みは判断を鈍らせる」とか言っていただろう。しかし、奈津紀に元気になって欲しいと思い、このときばかりは、父さんも口に出さなかった。


「本当に?」

奈津紀が尋ねた。


「ああ、本当だよ。お兄ちゃんを信じなさい!」


「本当に、嘘じゃない?」


「ああ、本当の本当さ」


「本当の本当の本当に、嘘じゃない? 嘘だったらハリセンボン飲む?」


「ああ、本当さ……、嘘だったらハリセンボン飲むよ」


「本当の本当の本当の本当に、嘘じゃない? 嘘だったら、『ナパーム焼夷弾(しょういだん)』をお兄ちゃんに使って良い?」


(え、しつこくない……? あと、『ナパーム焼夷弾』の実験台にするの……、身内を? 俺を?)


そのあと、1時間くらい同じようなやり取りが続いた……。


(な、長い……)



翌日


 今日は土曜日なので、学校が休みだった。奈津紀も外出しないようだったので、俺はレオと円の中心付近にある廃校に向かった……。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

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