第八話④
プルルルル……
プルルルル……
(ど、どうしたら、良いんだ……)
私は、あれから同じ現象を繰り返している。今が4回目だ。
① 看護師から電話が来る
② 506号室に行く
③ 腕を引っ張られて5階から落ちる
④ ①に戻る
2回目は、1回目のことが夢だと思っていたため、警戒心もなく5階から落とされた。
3回目は、窓に近づかないようにしたが、引きずり落とされた。
(そ、そうか……! 先に緑原さん達を探せば良いんだ……)
私は、看護師からの電話に出て、5階に向かった。当てがあった訳ではなかったが、506号室から一番離れた位置にある非常階段から探し始めることにした。
5階の非常階段へ行くと、そこには緑原さん、緑原さんの誓約霊の麗亜さん、名探偵、真黒紅白さんの誓約霊の社長がいた。
「大木さん、どうなさったんですか? 」
緑原さんが私に尋ねた。
私は506号室で体験したことを緑原さんに伝えた。
「それも、恐らく心霊現象でしょう。しかも、その辺にいる霊とは違う…… 強い力を持つ霊が引き起こしている…… もう一度、506号室に向かいましょう」
緑原さんがそう言い、私達は506号室へ向かうことにした。すると……
コツ…… コツ…… コツ……
深夜の病院に足音が響く。廊下の奥から、こちらに向かってくる人影が見えた。
コツ…… コツ…… コツ……
その人影が更に近づいてきたとき……
(こんな時間に、なぜ、ここにいるんだ……?)
その人影は戸田愛菜さんだった。
「嗅ぎ回っているネズミがいると思って来てみたら…… やっぱり、あなただったのね、親戚のお嬢さん……」
戸田さんが、緑原さんに向かって言った。
「橙子…… こいつ……」
麗亜さんがそう言うと、戸田さんが言った。
「ウフフ…… 私はコードネーム『ナイト』……。神の名のもとに、邪魔者を排除させていただくわ……。部長にも残念ながら、不慮の死を遂げてもらいましょう……。おいで……『貞子さん』」
戸田さんの横に、禍々しいオーラを放った女性の霊が、煙のように現れた。白いワンピースのような服を身に纏い、長い髪がその顔を覆いつくしていた。
(え、どういうこと……? 戸田さんは敵キャラなの? あと、私、死ぬの? 意味も分からず死ぬの?)
私は、目の前の出来事に理解が追いつかず、混乱していた。
「あなたが『ナイト』だったのね……」
緑原さんがそう言うと、社長と麗亜さんが臨戦態勢に入った。
戸田さんが1本のメスを取り出し、「貞子さん」の右腕を切りつけた。
(え……? 仲間じゃないの?)
「いたっ」
緑原さんが声を上げた。すると、彼女の右腕から血が噴き出した。
(え? え? なんで……?)
「ウフフ…… 貞子さんは、自分の痛みや苦しみを、標的にした人間に追体験させることができるの……。しかも、貞子さんは霊体だから、傷つくことは一切ない……。じわじわと血液を失って苦しみなさい!!」
戸田さんが、再びメスで貞子さんの左腕、右太腿、腹部を切り裂いた。すると、緑原さんの左腕、右太腿、腹部から血が大量に噴き出した。
(ヤバイ…… このままでは、緑原さんが出血多量で死んでしまう……)
しかし、私はあることに気づいた……。緑原さんの出血が思ったよりも少ない。衣服には、血液の染みが広がっているが、両腕の傷はもう消えている。
(傷が癒されている……)
「ゆ、許せない……。誓約霊は私にとって大切な仲間……。そんな仲間を傷つけるなんて…… 私はあなたを許さない……」
緑原さんが言った。
「ウフフ…… 『許さない』から、どうだというの? 誓約霊は私の武器! 私にとっては道具でしかないの!! 」
戸田さんが言った。
その時、私の頭の中にテレパシーが聞こえてきた。
『あなたは優しい人ね……。あなたのような人の誓約霊になりたかった……』
(あれ? あれあれ? これって、『貞子さん』からのテレパシーじゃない? 送る相手を間違っている? 教えてあげなきゃ、強く念じれば良いのか……?)
『私、大木宗次郎と申します。失礼ですが、テレパシーを送る相手を間違っていないでしょうか?』
私がそう強く念じると、貞子さんがはにかみながら、こっちを見た。
『ご、ごめんなさい。送る相手を間違えちゃった……。貞子ったら、おっちょこちょい……テヘペロ』
(か、かわいいかもしれない……)
「やっぱり、『貞子さん』は……望んでない……」
緑原さんが呟いた。
(よ、良かった…… ちゃんとテレパシーが届いたようだ……)
私がそんなことを考えていると、
「『標的にした人間』ってことは、誓約霊にはその攻撃が出来ないってことだろ……」
麗亜さんがそう言いながら、「貞子さん」に攻撃を仕掛けた。しかし、貞子さんのカウンターを受け、廊下の端まで吹き飛ばされた。
「ウフフフフ…… 甘いわね。貞子さんは空手8段の腕前。肉弾戦にも強いのよ」
戸田さんがそう言うと、社長が貞子さんに近づいた。
「手合せ願おう」
社長がそう言って構えると、2人のパンチやキックの応酬が始まった。初めは押していた社長だったが、徐々に貞子さんに押され始めた。そのときには、貞子さんが2メートルを越える大きさになっていた。
「こ、これぞ、『神の恩恵』…… 素晴らしい!!」
戸田さんが言った。
私が緑原さんの方を見ると、彼女はフラフラしていた。
(ま、まさか…… 傷は治っているが、血液は失われたままなのか……?)
フラフラしていた緑原さんがついに倒れた……。社長も貞子さんの蹴りを受け、膝をついた……。
(そ、宗次郎……、大ピンチ!!)
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