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第八話③

 ギャルの霊、麗亜(れあ)さんが1階の除霊をしたが、大木総合病院にはまだまだたくさんの霊がいた。


エレベーターが大量の霊で埋め尽くされ……

多くの霊が非常階段を昇り降りしており……

検査室や診察室から霊が出てきたり……


(え? これって、65件どころじゃないよね……? なんで……こんなに幽霊がいるの?)


「キリがないですね……。根本(こんぽん)を断たないとダメなようです」

緑原橙子(みどりはらとうこ)さんが言った。


「しかし……、根本って……?」

私は緑原さんに尋ねた。


「分かりません。でも……、心霊現象が多く起こっている入院棟を調べれば、何か分かるかもしれません。」

緑原さんの言葉を聞き、私達は足取りを早めた。




入院棟

「緑原さん、こちらです」

私は調査のために緑原さんが宿泊する病室へ案内した。すると、病室の扉の前で声を掛けられた。

「部長?」


 その声の主は、長井基正(ながいもとただ)だった。彼は、優秀な外科医だ。彼が執刀した手術は100%成功するため、「神の右腕」と言われている。


「そちらの方は?」

長井君が尋ねてきた。


「ああ、親戚の子でね……。虫垂炎の疑いがあるから、今日から入院してもらうんだ……」

私は、そう答えた。多数の心霊現象やその調査に来てもらっていることは、余計な心配を掛けたくないため秘密にした。


「も、もしかすると、な、長井先生ですか!? 先日の医学雑誌の記事を見ました。『神の右腕』についても、書いてありましたね!?」

緑原さんが言った。


 その言葉に、社長が反応した。

「神……」

社長はそう言うと、長井さんを上から…… 横から…… そして、下から…… 至近距離で眺めるた。


(あ、あれれ……? 無反応ってことは、長井さんは社長が見えてない……?)


「え? ながい…… もとただ…… ま、まさか……」

緑原さんがボソッと言った。


(ん? なんだろう、緑原さん、どうしたんだ……?)


 私がそんなことを考えていると、また私を呼ぶ声がした。

「部長?」


 その声の主は、外科医の戸田愛菜(とだあいな)だった。彼女も優秀で、執刀した手術は100%成功しており、「神の左腕」と言われている。


 私は彼女を緑原さんに紹介した。


 すると、社長がまた反応した。

「神……」

社長は、戸田さんに対しても、上から…… 横から…… そして、下から…… 至近距離で眺めた。


(う~ん……戸田さんも無反応…… 社長が見えてないのかな……?)


「とだ…… あいな…… ま、まさか……」

緑原さんが、またボソッと言った。

 

 そのとき、また私を呼ぶ声がした。

「部長?」


 その声の主は、外科医の内藤玄朴(ないとうげんぼく)だった。彼も優秀で、執刀した手術は100%成功しており、「ゴッドハンド(げん)」と言われている。


 私は彼も緑原さんに紹介した。


 そして、社長がまたまた反応した。

「ゴッド……」

社長はそう言うと、内藤さんを上から…… 横から…… そして、下から…… 至近距離で眺めた。


(またまた、無反応…… やっぱり見えてないのか~)


「ないとう…… ま、まさか…… 」

緑原さんが、またまたボソッと言った。



「いやいや、多いって! 3人は多いって!! え、誰かがナイトってことでしょ!?  それとも、3人ともナイトの可能性がある……? いや、逆に3人ともナイトじゃない可能性も……」

緑原さんがブツブツ言っていた。




 3人と分かれてから、私達は病室に入った。

一通り、病室内の設備の説明をすると、私は宿直の準備のため、部屋を(あと)にした。


 私は、外科部長という役職ではあるが、外科医の1人である。つまり、プレイングマネージャーだ。そのため、手術をすることもあれば、宿直や日直などの当直をすることもある。今日は宿直の日だった。




午前0時

 私が仮眠をとっていると、夜間巡回に行っている看護師から連絡が入った。

「大木部長、『506号室』の緑原さんが、病室にいらっしゃらないようですが……」


(し、しまった…… 『夜間巡回』のことを頭に入れてなかった…… )


 恐らく、調査のために部屋を抜け出しているのだろう。しかし、患者として入院しているため、看護師の夜間巡回は避けられけない。


(巡回の時間は病室にいてもらうように伝えよう)


「分かりました。今から506号室に向かいます。あなたは、そのまま夜間巡回を続けてください」

私はそう伝えると、緑原さん達を探すため、506号室に向かった。




506号室

 病室の前に辿り着き、私はドアを開けた。室内には、やはり誰もいなかった。開いた窓の隙間から生温ぬるい風が吹き込み、カーテンを揺らしていた。


(あれ、閉め忘れかなぁ? )


私が近づき、窓に手をかけたとき……


バシッ


真っ白い手が私の腕を掴んだ……


(え、何……これ? 幽霊!? 幽霊なの?)


氷のように冷たいその手が、とても強い力で私を窓の外へ引きずり出そうとしている。私は必死に抵抗した……。


(いやいや、病院の敷地内だからといって、さすがにここから落ちたら助からないでしょ……。『神』達でも無理でしょ…… 宗次郎(そうじろう)、大ピンチ!!)


しかし、私の抵抗も(むな)しく、真っ白い手の力に負け、私は506号室の窓から落下してしまった……。


徐々に地面が近づいてくる……。


(呆気ない…… 私の人生、こんな簡単に終わってしまうのか……)


私は、()(すべ)なく地面に衝突した……。全身を衝撃が駆け巡り、私の記憶はそこで途絶えた……。




プルルルル……


プルルルル……


(はっ…… あ、あれ? 生きている…… え、夢だった……?)


プルルルル……


プルルルル……


院内での連絡用のスマホが鳴っている。


私がスマホに出ると、夜間巡回に行っている看護師が言った。

「大木部長、『506号室』の緑原さんが、病室にいらっしゃらないようですが……」


(え、どういうこと? 正夢……?)

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

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