第八話②
「す、す、すみません……。せ、せ、せ、折角、い、い、い、い、いらっしゃっていただいたのに、ま、真黒さんが不在でして……」
受付の女性、緑原橙子さんが言った。
「いえいえ、やはり名探偵はお忙しいでしょう……。ご繁盛されているようで何よりです……」
私は、緑原さんに伝えた。
「いえ、は、繁盛はしてなくて…… 個人的に人探しをしているんです。私達の仲間を……」
緑原さんが悲しげな表情で言った。
「あ、す、すみません、余計な話をしてしまって……。で、では、い、依頼内容をお伺いします」
私の名前は、大木宗次郎
大木総合病院の跡取りであり、現在は外科部長を務めている。
最近、大木総合病院では心霊現象が多発しており、看護師だけでなく、患者さんからもそのような噂話を聞くようになった。
病院の評判を下げたくない私は、どんな依頼でもすぐに解決するという、真黒探偵事務所を訪れた。しかし、当の名探偵は不在のようだった。
私は緑原さんに、心霊現象のリストを渡した。そのリストには、『ナースコールが勝手に鳴る』、『夜中に廊下を白い影が通る』、『真夜中に子どもの笑い声が聞こえる』、『病室で寝ると冷たい手に足を引っ張られる』……など、合計65個の心霊現象が載っている。
「え!? さ、さすがに、多くないですか……」
緑原さんが戸惑ったように言った。
(え、やっぱり、多いの!? 病院って、生死を扱うから、これが普通だと思ってたんだけど…… え、心霊現象とか扱う探偵事務所の人が言うくらいだから、かなりヤバイ……? )
私は動揺していた。
「まあ、そうでしょうね。この地域では、うちにかなう病院はありませんから……」
私はテンパって、訳のわからないことを言ってしまった。
(いやいや……、違う違うの! そんなので、地域No.1になりたくないの!)
「患者さん達も不安がっていて……。なるべく早めに解決して、治療に専念させてあげたいんです。しかし、当の探偵さんがいらっしゃらないようでは……」
私が冷静さを取り戻しそう言うと、緑原さんの後ろにいたギャルが言った。
「おい、橙子…… 社長も暇そうにしているし、私達だけでやろうぜ、その依頼…… 」
私は、藁にもすがる思いだったので、その申し出に喜びが爆発した。
「ほ、本当ですか!?」
「「え?」」
「え?」
緑原さんによると、ギャルは麗亜という名前で、緑原さんの誓約霊だという。また、「社長」と呼ばれる老人は名探偵の真黒紅白さんの誓約霊だそうだ。ある程度の霊力がないと見えないらしいのだが……。
(あれ? 今まで、幽霊を見たことあったっけ……? 全く記憶にない……)
私がそんなことを考えていると、緑原さんが言った。
「では、早速なんですが、私が入院できる病室をとっていただけますか? 実際に、病院に泊まり心霊現象がどの程度起きるのか、調査したいので……」
「わかりました。次期院長の私にお任せください」
私がそう言うと、社長という老人の霊が近づいて来た。
「あんた、院長なん? 院長と社長は、どっちが偉いんじゃ?」
社長が尋ねてきた。
(ま、まずい…… ここで返答を間違ったら、殺されるのでは……?)
社長には、それくらいの殺気が感じられた。
「そ、そうですねぇ…… 『院長』も『社長』も同じくらい偉いと思います。でも、『神』の方が偉いんじゃないんですかねぇ~。うちの病院にも神の右腕を持つ男がいますよ~、八八八……」
私はテンパって、また訳のわからないことを言った。
「橙子っち、ワシも行く。ワシが『新世界の神』になる」
社長が言った。
「しゃ、社長~! ありがとうございます。 あ、でも、パクりはダメです。『新世界の神になる』も危ないですよ」
緑原さんが言った。
そして、私達は病院に向かった。
大木総合病院
(あ、あれ? 何でだろう…… うちの病院って、こんなに幽霊がいたの? )
待合室で多くの患者さんが待っている中、椅子の横の通路や廊下には、たくさんの霊がいた。
「か~め~……」
社長が構えながら、そう言うと
「だ、ダメ~ 社長、ダメですって……」
緑原さんが言った。
「魔貫光……」
社長が額に2本の指を当てながら、そう言うと
「しゃ、社長、それもダメ!」
緑原さんが言った。
「邪王炎殺……」
社長が右腕の包帯をほどきながら、そう言うと
「だから、ダメだって……社長」
緑原さんが社長を叩きながら言った。
「それに、こんな場所で必殺技を撃ったら、たくさんの人を巻き込むでしょ!」
緑原さんがそう言うと、社長はシュンとした……。
「麗亜さん、ここはお願い」
緑原さんがそう言うと、ギャルの霊が緑色の光を放ち始めた。
「りょ~かい」
ギャルの霊がそう言うと、緑色の光をそれぞれの手に集め、その手でたくさんの霊に触れていった。彼女の手が触れる度、幽霊は消滅していった。
「オッケー、これでこのフロアは完了かな」
ギャルの霊がそう言うと、辺りに満ちていた霊気は消え去っていた。
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