第一話 佐藤神太郎
私の名前は佐藤神太郎
戦前に生まれ、高度経済成長期を生きてきた。
私の名前には「神」という文字が入っているが、誰も「神」と呼んでくれたことがない……
「佐藤くん」
「さとうっち」
「太郎ちゃん」
色々な呼び名があった。
しかし、「神太郎」とすら誰も呼んでくれなかった。
だから、私は頑張った…、自分の名前にふさわしい人間になるために、汗水垂らして働き、暇さえあれば筋トレをした。
その結果、ムキムキマッチョな課長になった。
家庭を顧みず、仕事にボディビルに明け暮れた。しかし、私は中途半端だった。会社では、課長止まり、ボディビル大会は8位入賞が最高だった…。
私も年老いて、妻には先立たれた。
そして、孤独感に苛まれながら私の命も尽き果てた。
私の中途半端な人生に終止符が打たれた………
かのように思われた。
気がつくと、私は1人の男と誓約していた。
彼は私の名前も素性も聞かず、私を1人の仲間として受け入れてくれた。孤独だった、私を…。
それから、彼と過ごす内に仲間が増えた……。
私は彼女に名前を尋ねられた。
「わしか、わしの名前は…、しゃ、佐藤じゃ……」
噛んでしまったのが恥ずかしかったが、彼女にはちゃんと伝わったようだった。
しかし、それ以来彼女は私を「社長」と呼ぶ。
私の威厳が、そう呼ばせているのだろう……。
未だに、「社長」と呼ばれると恥ずかしくなる。
課長止まりだった私が「社長」だなんて………
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