第六話③
私達が車でホテルに向かっていると、真黒さんが乗ったオートバイ(六松)に追い抜かれた。
「あれ? 速いですね、さすが六松! 追い抜かれちゃった」
青木さんが言った。
「あの…… 六松って、何なんですか?」
私が尋ねた。
「ああ、六松はロボットです。詳しい機能はわかりませんが、色々と変形できるようです」
(え、ロボット……? 『市松人形』のロボット? なんで、『市松人形』の形にしたん?)
私は、そんな疑問を持ちながら、口に出すことはなかった……。
そんな話をしていると、狭い山道を猛スピードで走る車とすれ違った。
「あ、危ない!? な、何、あの車……?」
母が言った。
(私達と同じように、肝試しにきた人達だろうか……?)
私は2か月前を思い出しながら、そう考えていた。
ホテルに着くと、真黒さん達が外で待っていた。
「ブルーを先に行かせてホテル内を探索しようとしたが、霊が多すぎてそれが難しい」
真黒さんが言った。
ブルーは、優れた探索能力を持っているが、除霊するのには向いていないらしい。
「仕方がない。直接、乗り込むか……。じじいとブルーは俺と一緒に行く。あんた達は車で待っててくれ。何かあれば『六松』が助けてくれる」
真黒さんが、そう言うと青木さんに六松を渡した。
「わ、私も行きます!」
私は、自分にそんな勇気があったことに驚いた。怖い気持ちがあったが、みんなの手掛かりが見つかるかもしれないと思うと、居ても立ってもいられなかった。
母が心配そうな顔で見つめた。
「分かった。ただし、無理はするなよ」
真黒さんがそう言って微笑んだ。
私達は、ガラスが粉々に割れた入り口からホテルの中に入っていった。ホテルに入った瞬間、私は悪寒を感じた……。
「4階かのう……」
社長が言った。
「そのようだな……」
真黒さんが言った。
どうやら、4階に大量の霊がいるようだ。私達は階段を上がり、4階へ向かった。4階に着くと、肝試しの時と同じように焦げ臭さを感じた。しかし、あの時とは比べものにならないほど、重苦しい空気を感じた。
「いるな……大量に……」
真黒さんがそう言って、私とブルーに後ろに隠れるように促した。
私が真黒さんの後ろに隠れながら、前にあるホテルの廊下を見ると…… 私の目にも分かるほど、大量の霊が埋めつくしていた。
ピ、ピ、ピ~
体育の授業で先生が鳴らすような笛の音が聞こえた。社長が吹いていた。
「せいれ~つ」
社長がそう叫ぶと、廊下にいた大量の霊達が行儀よく1列に並んだ……
ピ
社長が笛を吹くと、1番前にいた霊が1歩前に出た。すると、その霊に対して、真黒さんが思い切りビンタした。
「おべふ」
その霊は変な声を上げ、勢いよく独楽のようにクルクル回転してから消滅した。
(こ、これが本気のビンタ…… ヤバい、こんなの喰らったら、『ほげぇ』どころではなかった…… 私も『おべふ』になっていたに違いない……)
「1」
真黒さんがボソッと呟いた。
ピ
社長がまた笛を吹くと、2番目にいた霊が前に出た。そして、また真黒さんが思い切りビンタした。また「おべふ」が聞こえた。
「2」
……
……
……
30回目の「おべふ」が聞こえたとき、初めて子どもの霊が出てきた。
(8歳くらいかな…… かわいそうに、こんな幼いのに亡くなってしまうなんて……。その上、『おべふ』になってしまうなんて……。でも、大丈夫よ。『最年少おべふ』の称号と共に成仏出来るから……)
私がそんなことを考えていると、社長が御幣(お祓いで使う棒に紙がついているもの)を握って子どもの霊に近づいた。
(え、何、何? 『おべふ』じゃないの? しかも、いつの間にか……社長がムキムキになっている……『ムキムキ、マッチョのおじいさん』、そう『ムキマッチョG』に……。)
社長は、御幣で子ども霊の頭をポカポカと叩いた。暫くすると、子どもの霊は笑顔で昇天していった。
「おべふ」
「おべふ」
ポカポカ……
「おべふ」
「おべふ」
ポカポカ……
それが、繰り返された。
どのくらい時間が経っただろう……
70おべふ、8ポカポカを終えたとき、焦げ臭さが強くなった。
「来たな……、火事で亡くなった霊達だ……」
真黒さんが言った。
「この焦げ臭さって、あの霊達に関係しているんですか?」
40年前の火災なのに、建物が焦げ臭いわけがない……。私は気になっていたことを真黒さんに尋ねた。
「ああ、その通りだ。霊臭っていうやつだ」
真黒さんが言った。
その後も、「おべふ」とポカポカが続き
88おべふ、11ポカポカを数えたとき、最後の1体になった。
「おべふ」
無事最後の「おべふ」も終わり、4階の霊は全て成仏させることが出来た……。
「100」
真黒さんが言った。
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