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第六話②

 私の名前は、尾上藍(おうえあい)

 21歳の大学3年生だ。


 私は最近起こっている奇妙な現象に怯えていた。仲の良い友人達が、次々と行方不明になってしまっているのだ。


 きっかけは、2か月前に友人達と4人で行った肝試しだった。その日以来、私達の周りでは様々な心霊現象が起きていた。


 1人で家にいると誰もいないはずなのに声が聞こえたり… 食器棚の扉が開き皿が勝手に宙を舞ったり… 真夜中に非通知で電話がかかってきたり… 私達は精神的に参っていった。


 そんな中、1人、また1人と…行方不明になり、残ったのは私だけだった。私も「いつ行方不明になるのか」と不安を感じ、大学にも行けなくなっていた。精神面だけでなく、身体面でも全身に蕁麻疹(じんましん)ができるなど、不調をきたしていた。病院にも行ったが原因不明だった。


 そんな私を見かねて、母がこの真黒(まぐろ)探偵事務所に連れてきた。


「そうですか… それはお辛い思いをされましたね…」

受付の女性、青木あかりさんが言った。


 私は話ができる状態ではなかったため、母が全てを伝えた。


 そのとき、階段を駆け上がる足音が聞こえた。その足音が事務所の入り口の前で止まると、ドアが開いた。


「ただいマンモス~。ウチ、真黒紅白(まぐろこうはく)、チョベリグ~」


 黒い探偵ハットをかぶり、細身の黒いスーツを身に(まと)った、昭和の大人気探偵ドラマのコスプレをしたような男性だった。彼の腕には、1体の「市松人形」が抱えられていた。


「私、『六松(ろくまつ)』。今日からヨロシクね」

真黒さんが口が動きまくっている腹話術で、そう言った。


「わぁ~、『六松』! (つい)に、完成したんですね」


 青木さんがそう言って「六松」を受け取ると、真黒さんが勢いよく私に近づいてきた。そして、私の頬をビンタした。


「ほげぇ」

私は情けない声を上げながら、ソファーごと後ろに倒れた。


(え、なぜ…?)


「あなた! 急に何するの!?」

母が怒鳴ったが、それを無視するかのように真黒さんが言った。


「どうだ? 軽くなっただろう?」


(ほ、本当だ! ここにきた時よりも倦怠感がなくなった。身体が軽くなったように感じる…)


「悪霊に取り憑かれていたんだ。その蕁麻疹も明日には治るだろう… この事務所の中だったから、悪霊の力も弱まっていた。だから、軽いビンタで済んだんだ…」


「か、軽いビンタ…」


(え、今の軽かったの!? 私、『ほげぇ』って、言っちゃったんだけど… 私の最初のセリフ、『ほげぇ』なんだけど…。大学では清楚な感じで通しているのに… 本気だったら、どんだけヤバかったの!? 『どんだけ~!!』)


 それから、落ち着いた私と母は、改めて真黒さんに事情を説明した。


「う~ん、厄介だな」

真黒さんが、そう言ってから更に続けた。


「そういうところは、興味本位で立ち入ってはいけない場所なんだ。霊たちにとってみれば、自分たちの家に勝手に入りこまれたようなものだ」


「はい、分かっています…」

私は答えた。


 肝試しから帰って来て、心霊現象に襲われる度に、私は肝試しに行ったことを後悔していた。そして、戸地哲大(とちてつた)諏佐瀬総士(すさぜそうし)加計菊子(かけきくこ)の3人がいなくなったときも……私は、後悔の念と恐怖に襲われていた…。


「それに…、あのホテルには火事で亡くなった霊だけがいるわけではないようだ…」

真黒さんがそう言うと、私は疑問を口にした。


「どういうことですか?」


「あの場所には多くの霊が集まっているようだ… 恐らく、100以上の霊魂が…」


「ひゃ、100!? な、何でそんなに…?」

私が尋ねると、真黒さんが首をかしげながら答えた。


「わからない… あそこが負の感情が集まりやすい場所なのかもしれない… あるいは……」


「あるいは…?」

私が再び尋ねると、真黒さんが答えた。


「誰かが意図的に集めているか…」


(意図的に…?)


「いずれにせよ、今回は大仕事だ…。 おい、じじい!」

真黒さんが「じじい」と呼ぶと、煙のように老人が現れた。


「ん、何か用かい?」

その老人が呑気に尋ねた。


「あと、ブルー!」

真黒さんがそう言うと、今度はクリームの毛色をしたフレンチ・ブルドッグが現れた。


「ん、仕事かニャ? 今回は、どんな依頼かニャ?」


((しゃべ)った… 犬が喋った…… いやいや、それよりも驚きなのは…)


「何で犬なのに、語尾が『ニャ』なんじゃい!?」

私は思わず叫んでしまった…。


(大学では、清楚系なのに… 『なんじゃい!?』とか言っちゃった。)


「……ん、仕事だっちゃか? どんな依頼だっちゃか?」


(…言い直した。しかも『だっちゃ』…)


「今回は行方不明者の捜索と大規模な除霊だ」

真黒さんがそう言うと、老人が言った。


「ワシの必殺技なら一撃だっちゃ!」


「いや、駄目だ。じじいの必殺技は、ホテルも破壊してしまう。前回はラッキーだったが、今回は俺が逮捕される…」


私は気になっていたことを青木さんに尋ねた。

「あのおじいさんとブルドッグって、何なんですか?」


「あのおじいさん、『社長』って呼ばれているんですけど、社長とブルーは真黒さんの誓約霊(プレッジ・スピリット)なんです。誓約霊っていうのは、『ジョ○の奇妙な冒険』の『ス○ンド』みたいなものです」


(霊体!? だから、お母さんには見えていないようだったのね…)


「よし、早速現場に向かおう」

真黒さんがそう言い、「六松」を抱えながら急いで外に出て行った。


「あ~、待ってくださいよ~」

青木さんがそう言い、戸締まりをしてから、私達と一緒に真黒さんの後を追いかけた。


 外に出ると、真黒さんが改造されたオートバイのようなものに(また)がっていた。


「お~!! かっこいい~!!」

青木さんが叫んだ。


「だろ? 『六松』が変形したんだ」

真黒さんが答えた。


(え、何? 『六松』って、人形じゃないの? 変形できるの? あと、サイズ感がおかしくない? 市松人形のサイズが、どうやったらオートバイのサイズになるの…?)


「じゃあ、先行ってるぜ~」

私の疑問の答えは出ないまま、真黒さんは社長とブルーを乗せて行ってしまった。ノーヘルで…


 私と青木さんは、母が運転する車に乗ってホテルに向かった。


途中で、白バイに捕まっている真黒さんを見かけた……

読んでいただけて、本当にありがとうございます。

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