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只野人志の物語③

 僕の名前は只野人志(ただのひとし)


 大学に入ってからできた友人、江月奈糸(えげつないと)に誘われ、僕はファーストフード店でアルバイトを始めていた。


 メニューの多さに最初は苦労したが、1か月もすると慣れてきた。店長もアルバイト仲間の皆も良い人ばかりで、人間関係も良好だった。


 しかし、困っていることがあった。


(やっぱり、ここにもいるなぁ… 『社長』が…)


 サークルの女子が撮った写真を見てから、僕は霊的なものが全て同じように見えていた。あの探偵事務所で会った「社長」と呼ばれる老人に…。


 店内のトイレの中で体育座りをしながら『Yo Yo チェケラッチョ』と叫んでいたり…

 カウンター席に座って外を眺めながら、窓に向かって「ハァ~、ハァ~」と息を吐いていたり…

 調理場を小さな「社長」が全速力で走り回っていたり…


(『社長』の姿だから、嫌な感じはしないんだけど…)


 僕は社長の姿に親しみを覚えていた。




そんなある日

僕は店長に呼ばれた。


「店長、お話って何ですか?」

僕は、バックヤードで事務作業をしていた店長に話しかけた。


「只野さん、入ってそろそろ1か月だよね? 仕事には慣れた?」

店長は、作業の手を止めて僕にそう尋ねた。


「はい、メニューを覚えるのが大変でしたけど、大分慣れてきました」


「そっかぁ、それは良かった… それで、話というのは…」

店長が言いづらそうに話を切り出した。


「只野さんが入ってからなんだけど… 色々と変なことが起きるんだよね…」


「変なこと…?」


「そう、トイレからお経のような声が聞こえたり……」

(お経? 『チェケラッチョ』じゃなくて?)


「何度拭いても窓が曇ったり…、急に鏡や皿が割れたり…」

確かに、僕がレジを打っていると調理場やバックヤードから悲鳴や叫び声が聞こえることがあった。


「気のせいではないんですか…?」


「それが… 只野さんがシフトに入っているときだけ、そういう現象が起こるんだ。只野さんって、そういう体質だったりする?」

店長が尋ねてきたが、僕は嘘をついた。


「いえ、全くそういう経験はありません」


「そっか、変なことを聞いて悪かったね。最近、お客さんも気味悪がっているようで、売り上げも落ちてきちゃってて… SNSでも『心霊ハンバーガーショップ』なんて、取り上げられちゃったもんだからさ」

店長は困っているようだった。


 僕は、嘘をついたことに良心が痛んだが、ここでアルバイトを続けたい思いが強かった。





1か月後


 僕は、そのハンバーガーショップをクビになった…


(え、何で? 僕の楽しい大学生ライフは…?)

読んでいただけて、本当にありがとうございます。

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