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第五話⑥

 昨日と同じように、俺は夜中に目が覚めた。


(まただ…か、体が動かない…金縛りだ)


 俺は体の上に、人が1人乗っているような重さを感じた。叫び声を上げ、外で待機している真黒(まぐろ)さんを呼ぼうとした。しかし、金縛りのためか、重さのためか、息苦しく全く声が出せなかった…… 体を動かそうにも指一本動かない…


(ヤバい…、息が全く吸えない……)


ガチャ


 その時、部屋のドアが開き、真黒さんと社長が現れた。社長が手に持っている鏡のようなもので、俺が寝ている上の辺りを照らした。すると、俺の上に乗っている霊の姿が徐々に現れた……。


(女性だ… 女性の幽霊だ… しかし、一体誰なんだ?)


 その霊の下半身から上半身へ、鏡が発する光が照らしていった。そして、ついに顔を照らしたとき、俺は驚愕した…


(え、な、何で…? )


そこには、よく知っている顔があった。


(と、当麻さん……)


そう、俺の上に乗っていたのは、マネージャーの当麻莉緒(とうまりお)さんの霊体だった…


(なんで…? 当麻さんは生きているのに…)


俺がそう考えていると、真黒さんが言った。


「生き霊だよ、当麻莉緒の生き霊だ」


(い、生き霊…… でも、何で…? 当麻さんに恨まれたりすることはないはず…)


「生き霊っていうのは恨みや憎しみがなくても飛んでしまうものなんだ。特定の人物に対して強い執着心があると、本人が意図しなくても飛んでしまう… 生き霊を飛ばしている本人も気づかないことが多い…」


 真黒さんはそう言った後、何か呪文のようなものを唱え、俺の体の上に「護符」を置いた。


「とりあえずは、これで(しばら)くは大丈夫だ…」


すると、当麻さんの生き霊が消え、俺の金縛りも解けた…


「こ、これで、安心なんですか?」

俺は真黒さんに尋ねた。


(やっと(しゃべ)れた… 色んな意味で…)


「いや、その護符は一時しのぎでしかない。根本的な解決にはなっていないんだ…」

真黒さんが答えた。


「では、どうすれば…?」

俺が尋ねると、真黒さんは暫く間を空けて言った。


「…生き霊を飛ばす人間と関わらないようにすることだ」


「え!? 当麻さんと関わらないって…… それって、俺がcombine(コンバイン)を辞めるってことですか?」


「ああ……、もしくは、当麻莉緒にマネージャーを辞めてもらうかだ…」


(な、なんてことだ… いずれにせよ… 今まで通りにはいかなくなる。今まで通りのcombine(コンバイン)では、いられなくなる… メンバー4人、そして当麻さんがいてこそのcombine(コンバイン)だ。 これが真黒さんが言った『辛い結末』なのか……)


「選択権は、被害を受けてきたお前にある… 明日の10時に探偵事務所に来るように、当麻マネージャーには伝えておいた… 今夜、しっかり考えて結論を出せ…」

そう言うと、真黒さんと社長は帰って行った。



翌日


 俺は、真黒探偵事務所に来ていた。出来れば少人数の方が良いとのことで、俺と当麻さん、真黒さんの3人だけで話し合いが始まった。生き霊の話や昨日の出来事を真黒さんが説明した。


「そ、そんな… 私が原因だったなんて… レノンを苦しめていただなんて…」

当麻さんが、やっとの思いで声に出した。


「ああ、それは間違いない。それに、生き霊に憑かれるとその人間は災難に巻き込まれやすくなる。ストーカー被害も暴漢に襲われたことも、生き霊が原因だろう」

真黒さんがそう言った。


 当麻さんは、ショックの余り顔を伏せ、涙を流しているようだった。


「それでレノン… どうすることにしたんだ?」

真黒さんが、俺に尋ねてきた。


 昨夜、俺は一睡もできなかった。当麻さんと出会ってから、今までのことを思い出していたからだ。トールも当麻さんも形は違えど、俺を守りたいから…、「combine(コンバイン)」を守りたいから… その思いがあったから今回の件が起きたのだと思う。その思いは、ハリスもリンゴも同じはず…


だから…、俺の答えは決まっていた。





2か月後


「それじゃあ、最後に今日のために作った新曲です。」


 俺たちは、東アジアツアーの最終日を迎えていた。今日の東京公演が千秋楽になる。この日のために、俺たちは新曲を準備していた。


「聴いてください。『Restart (リスタート)』」





 俺は… あの時、どちらも選ばなかった どちらを選んでも、誰かが欠ければcombine(コンバイン)では無くなるから…


今回の出来事を通して再認識できた。

仲間の大切さ、信じ合う心、それぞれの思い…


災難が起きようが、生き霊に苦しめられようが、誰かを失うことに比べれば…辛くはない…


今度は…俺がcombine(コンバイン)を守っていく…


 俺が自分の決意を話したとき、真黒さんが言った。

『お前の気持ちはよく分かった… 時間はかかるが他の解決法を教える。それは…』


それは、当麻さんの気持ちを他の人に向けることだった。


 その後、当麻さんはマッチングアプリで恋人を探し始め、今では30歳の公務員の方とお付き合いしているらしい。


 そして、俺は生き霊に苦しめられることもなくなった。





リンゴがドラムを叩き始めた。

それに合わせて、ハリスがギターを、トールがベースを鳴らし始めた。


Restart (リスタート)」のイントロが始まった…


そう、俺たちの再出発(リスタート)のイントロが……




第五話

一條玲音(いちじょうれのん)

セリフの文字数 81文字

※「?」や「…」などを除く


(え、今回の俺、頑張ったじゃん。前回まで26文字だったからねww)

読んでいただけて、本当にありがとうございます。

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