第五話④
(ま、まさか…4000文字もある中で、俺のセリフが30字にも満たないとは… いや、記号を含めれば30文字以上だ! 流石に、このままはいかないでしょ… え、だって、大人気バンドのボーカルだよ? 東アジアツアーするんだよ?)
打ち合わせが終わり、俺たちは東アジアツアーに向けた練習を行った。台湾や韓国では、その国の言語に翻訳して、俺たちの代表曲「消毒液」を歌うため、俺は歌詞を覚えるのに苦労していた…。
約5時間の練習が終わった。
青木さんと社長も、調査が終わったようだった。
俺と青木さん、社長がスタジオを出て、当麻さんの車に向かっているとき、後ろから呼ぶ声がした。
「おい」
トールだった…。
「当麻さんの姪というのは嘘だろう…? そして、じじい… お前は何者だ!?」
(え、トール、見えてたの…?)
「ワシか… ワシは…社長じゃ」
社長が頬を赤らめながら言った。
「むぅ、訳の分からんことを… しかし、人ならざるその姿… 決して良い影響を与えるものではない。レノンのみならず、当麻さんまでも誑かすとは… 許さん」
トールはそう言うと、スマホのようなものを操作した。すると、遠くから砂煙を上げながら、何かが近づいてきた。
ドドドドド……
ドドドドド……
トールの前に4つの影が並んだ…
それは、4体の「市松人形」だった…。
1番右には俺に送られてきた市松人形、その隣にはライブ映像に映り込んでいた市松人形がいた。
「一松!」
トールがそう叫ぶと、1番右の市松人形が「ガシャン、ガシャン」音を立てながら、変形を始めた。そして、兜のような形になり、トールの頭部にくっついた。
「二松!」
右から2番目の市松人形は、鎧のような形状になり、トールの胴体を覆った。
「三松!」
左から2番目の市松人形は、1組の篭手のような形状になり、トールの両腕にくっついた。
「四松!」
1番左の市松人形が1足の靴のような形状になり、トールがそれを履いた。
「参上、松レンジャー!! combineは、俺が守る!」
シャキーン
トールがそう言うと、
「か、カッコいい~」
社長は、憧れの眼差しでそう言った。
「じじい、お前は俺が倒す」
トールがそう叫んだ。
(え、え? 何、何? どういうこと? あの市松人形って、メカだったの? あと、トールと社長が戦うことになっているんだけど…)
「ちょ、」
俺が、トールに「誤解だ」と伝えようとしたとき
「ほっ、ほぉ~ お主のような若造にワシが倒せるかな?」
(乗ったぁ 社長も乗っちゃったぁ…)
お互いに構えたとき、俺はあることに気づいた。
(あれ? でも、これって…)
社長は、トールの脛に何度もキックした。
「いた…痛い、いたい、ちょ、やめて、やめて」
トールが痛がるも、社長は続けた。
「ひ、卑怯者め!」
トールが叫んだ。
そう、太腿から脛にかけてが無防備だったのだ…
「く、やはり五松が完成していない状況では、窮地に陥るか…」
(ご、五松… それが太腿から脛を担当するはずだったのか…)
「しか~し、窮地に陥ってからこそが、ヒーローの本領発揮…」
トールは、ヒーローオタクだった…。
「いくぞ、じじい」
トールはそう言うと、靴に変形した四松のダイヤルを回した。すると、両足の踵部分からロケットの噴射炎のようなものが出てきた。
「スーパーロケットキィ~ックゥゥゥ…」
トールがそう言った瞬間、とんでもないスピードで吹っ飛んでいった…
遠くで爆発音が聞こえた…
「フッフッフッ、必ず正義は勝つ」 キラーン
社長がポーズを決めながら、そう言った。
「…はい、あの人形を送ったのは、俺です。すみませんでした…」
その後、ボロボロになったトールを捕まえて、俺たちは尋問を始めた。
「何で、そんなことをしたの?」
当麻さんが尋ねた。
「combineを… レノンを守りたかったんです…」
俺は、ストーカー被害にあったり、暴漢に襲われたりすることが度々あった。そのため、トールが心配して「一松」を送ってきたのだった。「一松」はロボットのため、俺の護衛的役割を果たすことが出来る。だから、万が一何かあっても、誰かがそばにいなくても、俺を助けられると思ったらしい。
「でも… それならそうと言ってくれれば…」
当麻さんが言った。
「敵を騙すには、まず味方からと言うじゃありませんか…ハハン」
トールは、なぜか得意気な様子で言った。
「とりあえず、これで解決ですね」
青木さんがそう言うと、俺と当麻さんは頷いた。
その夜、俺は久しぶりに安心してベッドに入ったのだが、ふと気づいた…。
(え、今回もこれで終わり? 前回よりもセリフが少ないんだけど…!? え、マジですか? トールの方がしゃべってたんだけど……。いや、前回しか出てないハリスやリンゴの方がしゃべってるし……。全然、目立ってないじゃん。え、第五話も終わりなの……? )
そんなことを考えていたら、俺はいつの間にか眠っていた。
第五話は、まだまだ続きます。
がんばレノン!!
読んでいただけて、本当にありがとうございます。





