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第五話②

 俺の名前は一條玲音(いちじょうれのん)


 日本で大人気の4人組ロックバンド「Combine(コンバイン)」のボーカルを務めている。

 

 国内だけに留まらず、東アジアでのライブツアーも計画されており、順調にスター街道を歩んでいる。


 しかし、最近とある怪奇現象に悩まされていた。それは、ファンが送ってきた「市松人形」が、何度捨てても戻ってくる…、というものだった。

 戻ってきて家にいるだけなら、まだしも… 最近はライブ会場にまで現れる…。ライブ中の動画にも映りまくっており、配信が出来なくなっている。


 困った俺は、マネージャーの当麻莉緒(とうまりお)さんと共に、「何でも解決する」という噂の探偵事務所に来ていた。


「え!? 『Combine(コンバイン)』の『レノン』さんですか?」

受付の女性、青木あかりさんが言った。


「はい。ですので、今回の依頼は内密に調査を進めて、解決していただきたいのです」

当麻さんが、そう伝えると、


「もちろんです。大スターということは……報酬の方も……?」

青木さんが尋ねた。


「依頼料として、50万円、成功報酬として150万円。合計200万円お支払いいたします」

当麻さんが答えると、


「に、200万!! 」

青木さんが驚き、うっとりした顔でクネクネし始めた。


(それにしても、後ろにいる老人と犬は何なんだ……)


 俺は青木さんの後ろでジャーキーの取り合いをしている、老人とブルドッグを見た。


老人の蹴りを華麗に舞いながらかわし、カウンターの頭突きをするブルドッグ……


白熱した死闘を繰り広げていた……。


 そのとき、事務所のドアが開いた。黒い探偵ハットをかぶり、細身の黒いスーツを身に(まと)った、昭和の大人気探偵ドラマのコスプレをしたような男が入ってきた。


そして、こう言った。

「海の生き物ダジャレ パート1 …… 『何このマグロ!? 真っ黒! 何このマグロ!? 真っ黒!』 どうも、真黒紅白(まぐろこうはく)です」

……

…………

………………


(な、何…? この空気、何!?)


俺も、当麻さんも、呆気(あっけ)にとられていた…


「200万~」と口ずさみながら、クネクネ踊る女性…

ジャーキーのために死闘を繰り広げる老人と犬…

特に、面白くもないダジャレを言う謎の男…


(か、混沌(カオス)… 混沌過ぎるだろ… 何だ…この空間は…?

……

……

ん、待てよ……

混沌… 混沌… 『混沌の海で泳ぐ魚たち…』 え、良い…良いフレーズ思い浮かんじゃったよ)


俺は目の前の状況に驚きながらも、新曲の歌詞を考えていた……。


(やっぱ、俺って天才じゃんwww)


 真黒という男が何事もなかったかのようにソファーに腰を下ろすと、青木さんが我に返り言った。

「…大変失礼しました。それでは、ご依頼の内容をお伺いします」


 俺は、市松人形を捨てても戻ってきてしまうこと、その人形のせいで金縛りに遭い、恐怖体験をしたことを伝えた。


「なるほど…、それで、今日はその人形をお持ちいただけたんですか?」

青木さんが尋ねた。


「はい。こちらです」

当麻さんがそう言い、桐の箱を応接テーブルの上に乗せた。蓋を開けると、あの「市松人形」が入っていた。


「う~ん、何も霊的なものは感じないなぁ…」

真黒さんが言った。


「で、こちらが先日のライブの映像です」

当麻さんがそう言って、タブレットで俺達のライブの動画を流した。


「あ、ここです」

当麻さんがそう言って、動画を停止した。


いる… 画面の右隅にこの市松人形が……


「ん~、でも、この人形って…」

青木さんが、首をひねりながらそう言い、更に続けた。

「…持ってきてもらったものと違いませんか?」


「「え!?」」

俺と当麻さんは驚きの声を上げた。

今の今まで、同じ市松人形だと思っていたからだ。


「こっちの箱に入っているのは着物の袖口のラインが金色なのに、動画に映っているのは白ですよね?」


(本当だ……、え、人形が着物を着替えた? いやいや、そんな訳ない。市松人形が2体あると考えた方が自然だ…)


「流石だな、あかり。良い観察眼だ。…それに、よく見ると顔つきも違う」

真黒さんがそう言った。


「ということは、市松人形が2体あると?」

当麻さんが尋ねた。


「おそらく……」

真黒さんがそう答えながら、鼻をクンクンさせた。


「とりあえず、色々と気になる点もある…。早く解決するために、2手に分かれて調べたいのだが……」


その後

 青木さんと老人が、俺達と一緒にスタジオに向かうことになった。真黒さんは、ブルドッグと一緒に俺の自宅周辺を調べるらしい。




「あの~、お二人とも、やっぱり見えていらっしゃいます?」

青木さんが、スタジオに向かう車の中で尋ねてきた。


「「え?」」


「こちらのおじいさんのこと……?」


「ええ…、どういう意味ですか?」

当麻さんが尋ねた。


「実は、こちらのおじいさんは霊体なんです。真黒さんと誓約を結んだ誓約霊(プレッジ・スピリット)なんです」


(霊体……? リアルに見えるのに……? え、霊体がジャーキーを食べるの?)


「さっきのブルドッグの『ブルー』も真黒さんの誓約霊です。因みに、このおじいさんは『社長』と呼ばれています」


 俺と当麻さんは驚いていた。でも、なぜ霊体なのに……、車の中で「もずく酢」を食べているのか、理解できなかった。


(酸っぱい、酢の臭いが車の中に充満している… )


 その老人、「社長」は、とても酸っぱい顔をしながら、もずく酢を食べていた……。

レノンが… レノンが… あまりしゃべってない…


読んでいただけて、本当にありがとうございます。

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