第五話①
最初に、よくある怖い話があるので、苦手な方は次の第五話②からご覧ください。
(何で……、何でなんだ……?)
今朝、捨てたはずの「市松人形」が部屋のテーブルの上に置いてある。
俺は、その人形を再びゴミ袋に入れて、近くのコンビニのゴミ箱に捨てた。
(これで大丈夫だ……)
俺はゴミ袋がゴミ箱にしっかり入っているのを確認してから自宅に戻った。
ガチャ
玄関の鍵を開け、ドアノブをそっと回した。
(まさか……、また戻ってきてないよな…?)
ドアを開けてリビングに入ると、テーブルの上には人形がなかった…
(……よ、良かったぁ~、いやでも…)
家中を探し回ったが、どこにも「市松人形」は見当たらなかった…。
(ふぅ、一安心だ…)
ホッとした俺は、いつものように動画を見ながら夕食をとり、シャワーを浴びてベッドに入った。ベッドに入ると仕事の疲れもあってか、いつの間にか眠ってしまっていた。
「…………シク ………シク」
(ん、なんだ……? 誰かが泣いている……)
「……なんで? ……なんで捨てたの?」
あの「市松人形」だった……。
「私はあなたのことを、こんなに思っているのに……」
そう言いながら、人形は俺に近づいてきた。
俺は体を動かそうとしたが、全く動かない。
(これが金縛りって、やつか……)
人形が俺の上に乗った。人形とは思えない重さ、人一人が乗っているような重さを感じた。叫び声を上げようとしたが、金縛りのためか、重さのためか、息苦しく全く声が出せなかった……
(ヤバい…、息が全く吸えない……)
「ずっと…、ずっと……一緒にいるから……」
俺はその声を聞いた瞬間、気を失った……
チュン……チュン……
カーテンの隙間から朝日が差し込み、小鳥の囀りが聞こえる……
「………はっ」
俺は飛び起きた……。全身に、びっしょりと汗をかいていた。
(ゆ、夢か……)
そう思いながらベッドから起き上がろうとしたとき、視界の隅に…、テーブルの上に…、何かが乗っているのに気がついた。
(ま、まさか……)
俺は勇気を振り絞って、テーブルの上を見た……。心臓の鼓動が速くなる……。
そこにあったのは………
ワインのボトルだった……
(何だよ…… ビビらすなよ…)
昨日の夕食の際に飲んでいた、ワインのボトルを片付け忘れていたのだ。
俺は気を取り直して、シャワーを浴びることにした。
シャワーを浴び終え、部屋に戻ると俺は違和感を感じた…。
(え、室内の物が移動している気がする……)
そして、背後から視線を感じた……。そこには、クローゼットがあり隙間が少し開いていた。
(あの隙間から何かが覗いている気がする……)
クローゼットに近づき扉に手を掛けた。そして、目を閉じながら祈った。
(何もいませんように……、何もいませんように…)
俺は、思い切って扉を開けた……
俺の願いが通じたのか、クローゼットには特に異常がなかった。
(ふぅ……)
安心して後ろを振り返り、ふと視線を下に移した瞬間……、
目があった……。
あの「市松人形」が、ベッドの下から俺を見つめていた……
読んでいただけて、本当にありがとうございます。





