第四話④
「ワシに任せんしゃい」
老人の霊がそう言った。
「大丈夫ですか、社長?」
青木さんが尋ねる。
「大丈夫だぁ~… ワシ、必殺技を思いついちゃったから……」
老人の霊は、そう言うと全身に力を入れ始めた。
「はぁぁぁぁぁあ」
その間にも、警備員の霊は近づいてくる…
「はぁぁぁぁぁあ」
老人の霊の全身の筋肉が肥大化した。
元の「ヒョロヒョロのおじいさん」ではなく、「ムキムキ、マッチョのおじいさん」、そう「ムキマッチョG」に……。
老人の霊が構えて更に力を込めた。
「食らえ! ワシの必殺技、『スーパーエレクトリック・ファイナル・アルティメット・ギャラクシー…………』」
(……長い、必殺技の名前が長過ぎる)
青木さんはスマホをいじりだした…。
緑原さんは、英単語帳で勉強をしはじめた……。
ギャルの霊は立ちながら眠っている…。
(えぇ~、緊張感ない………)
「……キングアンドクイーン・スターライト・エクスプロージョン…」
と言った瞬間、警備員の霊が老人の霊のもとに辿りついた。そして、笑顔で老人の霊にタッチした……
(……辿りついた! 必殺技の名前が長過ぎて、匍匐前進でも、辿りついた!)
老人の霊は、必殺技の構えを止め、警備員の霊にニッコリと笑いかけた。笑いかけたと思ったら、警備員の霊を抱えて元の位置、非常階段への扉の前まで運んだ。
(えぇ~!? なかったことにした、今までの流れをなかったことにした……)
老人の霊は、自分が立っていた元の位置まで急いで戻り、再度構えた。警備員の霊は、何事もなかったように、再び匍匐前進で近づいてくる。
(なんか……かわいそう……。今までの努力をゼロにされちゃって……)
「食らえ! ワシの会社はワシが守る!」
老人はそう言うと、巨大な霊気の塊を放った。あの有名な「かめ○め波」のように……
(え、『ワシの会社』…? しかも、さっきの反省を生かし、今度は必殺技をすぐ撃った……)
私は、少年時代に見た、あのアニメの「フラ○パン山」の炎を消す場面を思い出していた。
(確か、あの話では山が吹き飛んだよな…)
メキ…、メキ…
メキメキ…メキメキ…
メキメキメキメキメキメキ…
巨大な霊気弾は、廊下の壁に皹を入れながら突き進んだ。そして……
ボッガーン!
爆音を轟かせ、警備員の霊を吹き飛ばし消滅させた……。
4階の壁も吹き飛び消滅した…
何の障害物もなく、外の景色が見える…
(か、壁が… なくなった……)
私は、驚きとショックのあまり、放心状態だった……
「おお~!」
青木さん、緑原さん、ギャルの霊から、驚きの声が上がった。
パチパチ、パチパチ…… 3人は拍手をして、
「社長、すごい! わっしょい、わっしょい、社長ばんざーい!!」
と言った……
1週間後
私は、今回の報酬の支払いのために、真黒探偵事務所を訪れていた。
正直なところ、私は損害賠償を請求しようと思っていた。警備員の件が解決したとは言え、その代償が「本社ビル4階の崩壊」という大きいものだったからだ。
しかし、あの後、事態は急展開した。
壁が吹き飛んだことにより、元々、非常口があった場所の横に隠し倉庫が見つかった。そして、その中からは、人の骨と10億円以上の現金が見つかった。
警察の調べによると、人の骨は7年前に行方不明になった男性のものらしい。当時、彼はこのビルで警備員として働いていたが、失踪した。しかし、置き手紙が残されていたため、家出として処理され詳しい調査がされなかったようだ。骨からは刃物で出来たような傷が見つかったため、警察は殺人事件として捜査を進めている。
また、10億円以上の現金は、糸田さんが横領していたものだった。しかも、うちの会社からだけではなく、以前の勤務先からも横領していた…。糸田さんが勤めていた会社は、このビルに入っていた。その頃から横領していたお金をあの倉庫に隠していた。自分だけが出入りできるように細工をして…。うちに転職してからも、勝手に作った合鍵で非常階段から忍び込んでいたらしい…。5年前に以前の勤め先が倒産したため、ビルが取り壊されるのを恐れた彼女が、わが社の移転計画を進めた。
つまり、4階の崩壊がなければ、この2つの事件は発覚しなかった。その上、あの爆発は「給湯室のガス漏れによる爆発」として処理されたため、修復の費用は保険が適用されることになった。
「報酬の50万円、確かにいただきました。こちら領収書です」
青木さんがそう言いながら、私に領収書を手渡した。
「それでは、何か困ったことがあったら、いつでもいらっしゃってください」
それから、更に1週間後
糸田さんは、横領の容疑だけではなく、殺人の容疑でも逮捕された。
そして、新尾さんは、会社を辞めた。
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