第三話 母の思い
解答編のようなものです。
お分かりの方は、飛ばしていただいても大丈夫です。
私は緑原紗季
娘の橙子を女手ひとつで育ててきた。
私は、今回の事件の始まりを思い出していた……
娘には不憫な思いをさせたくなくて、必要なものを人並みには与えてきた。
娘は本当に素直な子に育った。
私に口答えしたことなど、一切なかった。
そのときまでは…
「橙子、特進科に友達はいないの?」
最近、普通科の子と遊んでいることが多い。来年には大学受験を控えているため、私は心配になっていた。
「うーん… 特進科って何かみんながライバルって言う感じで… だから、益恵さんといると、ピリピリした雰囲気から解放されると言うか……、安心できるの」
「橙子……来年には受験生でしょう? 周りの特進科の生徒は遊ぶ暇もなく、勉強しているって言うじゃない… あなた、それで志望校に合格できると思っているの…?」
「でも、益恵さんは私の大切な友達なの。勉強で疲れたときに益恵さんと会うと、『また頑張ろう』って思えるの!」
「あなたは何も分かっていない! 普通科の子は、それなりの大学に進学するの。あなたとは、置かれている状況が違うのよ! 模試の成績だって最近下がってきているじゃない!」
私は感情的になった。
「とにかく、これからはその子とは会わないでちょうだい! それがあなたの将来のためなんだから…」
「………」
橙子は、何も答えなかった。
数日後
仕事で外回りをしているときに、橙子とあの子が一緒に歩いているのを見かけた……
(なんで…? 橙子があの子と会っているの…? このままではいけない…、橙子が落ちぶれてしまう……)
そう考えたとき、私の中の悪魔が囁いた。
(……そっか、橙子から離れられないなら、あの子から離れるように仕向ければ良いのね…)
その週末
「良い天気ね。こんな日だから、たまには益恵さんと遊びに行って来たら。」
私が橙子に伝えると驚いた顔をした。
「良いの? 」
「ええ、あなたが言っていたように、気晴らしも必要だからね。お互いに写真が趣味だって言ってたじゃない? 今まで撮った写真を見せあったら楽しいんじゃない?」
「お母さん、ありがとう」
橙子は、嬉しそうに出かけて行った。
その夜
橙子が眠っている隙に、私は橙子のスマートホンに細工をした。
チェーンメールを作成し、送信日時を予約した。明日の日曜日にあの子に届くように……。
チェーンメールが送信されると、私の期待通り橙子はあの子から嫌われたようだった。
(橙子にはかわいそうなことをしたが、これも安定した未来のためだ。何としても、邪魔者は排除しなければならない。)
私は、あのとき、そう考えていた。
あとは、この問題を解決してくれる人間を探さなければ………。
それ以来、橙子から笑顔が消えた…
しかし、「橙子の将来のため」と私は自分に言い聞かせ続けた。
それからしばらくして、何とか依頼を引き受けてくれる探偵が見つかった。
その探偵達と過ごす内に、橙子は元気を取り戻していき、明るくなっていった。
そして、勇気を持って自分の現状を変えていった。あんなに臆病で…、私の後に隠れていた橙子が……
急に、変なことを叫ぶ探偵さんだったけど、橙子を人間的に成長させてくれたのは事実……
「アルバイトをしたい」と橙子が言ったとき、……正直なところ迷った。
でも、あの子の人生だから、あの子の選択を応援したい
今は心からそう思う。
人は一人では生きていけない………
誰かと関わることで想像もつかない成長を遂げることがあると気づかされた。
「私も今からでも変われるのかな……」
私はそう呟き、
「黄色と言ったらパイナポゥ、フォ~!」と叫んだ。
「フォ~!」が家中に響いた……
私の「フォ~!」に影響されたのか、近所の犬が何度も吠えているのが聞こえる。
「あら、そろそろ橙子を迎えに行かなくちゃ」
私は車に乗り、真黒探偵事務所に向かった。
「橙子、迎えに来たわよ」
事務所のドアを開けると、鼻メガネを掛けて「どじょうすくい」をする橙子がいた……
私は白目をむきながら、倒れた……
読んでいただけて、本当にありがとうございます。





