第一話①
最初に、よくある怖い話があるので、苦手な方は次の第一話②からご覧ください。
ヒタ、ヒタ、ヒタ……
(まただ……、今夜もあの足音が聞こえる……)
ヒタ、ヒタ、ヒタ……
僕のアパートの部屋の前で、足音が止んだ……
コン、コン、コン
ドアをノックする音が聞こえる……
僕は震えながら布団を被り、「それ」が去っていくのをひたすら耐えていた。
「いないの……、いないの……」
女性の弱々しい声が聞こえる……
(う、う……、何なんだ、毎晩毎晩)
「いない……、本当に、いないの……」
ドン、ドン、ドン、ドン
ドアを叩く音が強くなった……
いつもなら、しばらくして去っていく足音が聞こえるのだが、今日は違っていた。
ドン、ドン、ドン、ドン………
ドアを激しく叩く音が続き、ドアノブをガチャガチャ回す音が聞こえた。
僕は恐怖に耐えられなくなり、布団から飛び出した。
その瞬間……
音が止んだ……
(なんだ、行ったのか……)
僕は恐る恐るドアに近づき、ドアスコープを覗いた……。
(真っ暗だ……)
いつもなら街灯の明かりで夜でも外の様子を窺える……、しかし、このときは何も見えなかった。真っ暗というより、真っ黒……。
(え、まさか……これって……瞳孔?)
僕がそう気づいた瞬間、ドアスコープの向こうの側の暗闇が動いた……。
僕の心臓が恐怖で高鳴る。
ドン、ドン、ドン、ドン
再び激しくドアを叩く音が始まった。
僕はドアに体を密着させていたため、激しい衝撃も伝わってきた。
ドアスコープからは、目を離せずにいる……。
長い髪を振り乱しながら、鬼の形相でドアを叩く、血だらけの女性が見えた……。
僕の恐怖はピークを迎えた。
「なんだ……いるじゃない……」
男か女か、この世のものとは思えない、その低い声を聞いた瞬間、僕は気絶していた。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。