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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

第6回小説家になろうラジオ大賞byごはん

魔術師の絵描きはトレーニングが大事

異世界ファンタジーホラー。

※怖さは優しめですが、苦手な方はご注意ください。






 息を吹きかけ色を塗り。

 花をズラして彩りを添える。


 貴婦人の黒いドレスには、真っ白で大ぶりな百合の花が良く似合う。



「あの子が、わたくしの子どもが見つからなくて。きっと泣いているわ。あの子に何かあったらわたくしっ……──」







「ずっと話しかけてるのに、ママがお話し聞いてくれないの」



 子どもに大丈夫だと声をかけ、再び、色がついた魔術式を構築していく。


 モノトーンに入れた差し色は、燻んだ金の髪。

 そこに、こぼれ落ちそうなエメラルドの瞳を付け足す。


 キャンバスに写し出された絵を夫人に向け、僕は穏やかな口調で語りかけた。



「大丈夫、ちゃんと貴女の側にいらっしゃいますよ」


「あぁ……良かった。本当に良かったわ……ありがとう。ありがとう」



 涙ぐみ、感謝を述べる夫人は、徐々に色をなくす。



「……ママ? ママぁッ!?」



 消えゆく夫人の身体に、子どもの白く細い腕が、──虚しく空中を切る。


 普通の人間には幽霊が視えないように。


 幽霊にも生きた人間が見えない者もいる。




 時に幽霊同士でも相手を認識出来ない時がある。


 特に、片方に幽霊の自覚がないと。中途半端な人間の枠組みになるのかも知れない。


 この、ご婦人に寄り添っていた、少女のように。



「私、もう死んでるの? ……どうしよう」


「大丈夫。君の大好きなママのところに行くだけさ」


「そっか。ママのところに──」



 薄れる声が途切れる。

 天を向き、光の粒子となって少女は迷いなく昇って逝く。



 魔力が多少あって、幽霊が視えるなら。繊細な魔法陣を描くために、日々のトレーニングを欠かさず。芸術的センスがあれば、さらに良い。


 死者を操る、魔術師。僕のようなネクロマンサーに適正があるかもしれない。なんてね。


 荒れた庭に、崩れた屋敷の廃墟を背にして。正常な空気を吸い込み、僕は来た道を歩き戻った。




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― 新着の感想 ―
とても切ないハッピーエンド  イイハナシダナー  ( ;∀;)
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