エピローグ
「じゃあ、これは……Domである俺から、Subのあなたに」
「ふふ、ありがとう。すごく綺麗」
「裏にダイヤモンドがついてるっていいですよね」
「確かに。二人だけの秘密、みたいな」
陽の細い指に着けた指輪が太陽の光に反射してきらきらと光っている。一見シンプルなデザインに見えるけれど、その裏側には一つのダイヤモンドが埋め込まれていて、陽が『これがいい』と言って選んだものだ。
枢はそのダイヤモンドを『太陽みたい』だと言ったのだが、陽は『星みたい』だと言った。同じダイヤモンドなのにお互いに求めているものが違うからか、ダイヤモンドを何に見立てるのかも自然と違った。だからこそ、それはちゃんとCollarの役割を果たすだろうし、この指輪以外にはないという話になったのである。
「この指輪は、DomのおれからSubの枢に」
そう言ってもう一つの指輪を枢に着けてくれる陽。ずっと一緒にいるという誓いを立てたので、お互いの左手の薬指にはお揃いの指輪がきらりと煌めいている。指輪を着けた指からじんわりと温かい陽の体温が伝わってくるようで、まるで彼に抱きしめられている感覚がした。これがCollarの効果であり、精神の安定なのだろう。
「週明け、先生たちからも生徒からも質問攻めされそう」
「おれはもう答える準備できてるよ」
「え?」
週明けの学校は混乱を極めるだろうなと苦笑している枢の隣で、いたずらっ子のように笑う陽。枢の鼻先を指でつんつん突いた彼は、とびっきりの笑顔を見せてくれた。
「星枢と結婚しました、って!」
太陽のように明るく笑う陽から贈られたキスは、今までで一番温かかった。
終




