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【完結】夜明けの使者  作者: 社菘
第6章

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32/66



乙織と慧至と別れたあと、特にすることもなかったので枢と陽は帰ることにしたのだが、陽がなぜか枢の後ろについてくるので「……うち、来ますか?」と聞くとこくりと小さく頷く。部屋はいつも綺麗に掃除しているけれど、何か変な物は置いてなかっただろうか――


いつもPlayの時は陽の家に行っていたので、彼が自分の家に来るのは初めてだ。変な匂いがしたらどうしよう、パジャマとか脱ぎっぱなしじゃないよなと内心ドキドキしながらも陽をリビングに通した。


「なんか、星先生の家っぽいですね」

「え?どういうことですか?」

「家具が黒とグレーで統一されてる感じが」

「あぁ、なるほど……あんまり派手な色は落ち着かなくて」

「ふふ、ぽい」

「朝霧先生の家は白と茶色が基調でおしゃれな雰囲気でしたよ」

「えぇ、そうですか?」

「はい。それこそ朝霧先生っぽいなぁって」


陽はグレーのソファに座ってきょろきょろ部屋を見回していて、枢がコーヒーを淹れてくるとそのカップを両手で受け取る。両手で受け取るようなそんな仕草にもきゅんとして、思わず自分が持っていたコーヒーを零してしまうところだった。


「……星先生、砂糖とミルク、たっぷりありますか?」

「へ?」

「実はおれ……コーヒー苦手なんです」

「えぇ!?だっていつも職員室で飲んでますよね?」

「あれは威厳?プライド?というか…みんな飲んでるから言い出せなくて……」

「か、かわ……っ!いや、えっと、朝霧先生が飲めるものを出しますよ!紅茶とかもありますし…!」

「じゃあ紅茶……すみません」

「いえいえ!」


職員室では涼しい顔をしてコーヒーを飲んでいる姿しか見たことがなかったので、まさか陽がコーヒーを苦手だとは思っていなかった。というか、あまりにもギャップが可愛すぎる。


『毎朝コーヒーを飲んで出勤してます。もちろんブラック派です』みたいな顔をしているのに、砂糖とミルクをたっぷり入れないと飲めないなんて、可愛いの暴力すぎるではないか。彼が『甘やかされたいSub』と言っていたように、苦い物は苦手なのだろう。


今度から陽とキスをする前にコーヒーは飲まないようにしないとな……。

そこまで考えて、何を恋人みたいなことを考えてるんだバカ!と、枢はキッチンでぷるぷる頭を振りながら邪念を振り払う。あくまでもコマンドを実行できた『ご褒美』でするものであり、Playの時以外はしない関係なのだから弁えないといけない。


「乙織からもらったやつなので、多分美味しいと思います」

「すみません、ありがとうございます」

「うちにはガムシロップしかなくて……必要なら使って下さい」


先日、乙織が慧至とイギリス旅行をした時に買ってきてくれたお土産だ。確かとても香りがよくて味も美味しかったはず。なんせ枢はどちらかと言えばコーヒー派なので、お土産でもらった紅茶はあまり手をつけていなかったのだ。だから詳しい味まで覚えていなかったけれど、一口飲んだ陽が「美味しい」と言って顔を綻ばせたので、ほっと胸を撫でおろした。


「わがまま言ってすみません、星先生」

「全然、わがままなんて思ってませんよ。苦手なものは苦手だって教えてください」

「ふふ、はい。優しいですね」

「そりゃ、あの…Playの時以外はただの同僚だと言っても、パートナーなので……。嫌なこととか苦手なものはしっかり教えてほしいです。でも好きなこととか嬉しいこととかも教えてもらえたら、今後に生かせるので……」

「分かりました。……今日はお姉さんたちに会わせてくれたの、すごく嬉しかったです」

「あー、いや…うるさくなかったですか?昔からテンション高めなんですよ」

「楽しかったですよ。慧至さんともお話できましたし。連絡先も交換させてもらって」

「……え?いつの間に?慧至さんと?連絡先を交換したんですか?」


帰り際になにか話しているなと思っていたけれど、まさかその時に連絡先を交換していたとか?交換したのが乙織ではなくてよかったと思う反面、どうして他の男と、という感情が湧き上がってきてしまう。だって彼に『他の男』は必要ないはずなのに。




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